システム開発契約の解除|請負で途中解約されたら費用は請求できる?出来高の請求手順

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

システム開発契約の「解除」とは?

契約の解除とは、結んだ契約を途中でやめて、なかったことにする(またはそこで終わらせる)ことです。 システム開発では、顧客の予算がなくなった、方針が変わった、などの理由でよく起こります。

大事なのは、その契約が「請負」か「準委任」かです。どちらかで、解除のルールも請求できるお金も変わります。

契約の種類何を約束する契約か報酬のもらい方
請負契約システムを完成させて納めること完成・納品(検収)後に一括など
準委任契約(SES)決めた作業をていねいに行うこと月ごとの稼働に応じて

請負契約とは、仕事の完成を約束し、完成した結果に報酬を払う契約のことです。 受託開発や一括請負の案件がこれにあたります。

準委任契約とは、完成ではなく、作業をすること自体を約束する契約のことです。 SESの多くはこちらです。

契約書のタイトルが「業務委託契約」でも、中身で判断されます。見分け方は準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シートにまとめています。

請負で途中解除されたら、費用は請求できる?

請求できます。 請負の顧客は完成前ならいつでも解除できますが、その代わりに受注者の損害を払う必要があります。

民法641条は、次のように定めています。

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。(民法641条)

つまり、顧客は理由がなくても解除できる一方で、タダでは解除できないというルールです。受注したSES企業は、解除そのものを止めることは難しいです。そのため「いくら払ってもらうか」に力を入れます。

請求できる損害の中身

641条の「損害」には、一般に次の2つが含まれると考えられています。

項目中身の例ポイント
すでにかかった費用自社エンジニアの人件費、BPへの外注費、購入したライセンス請求書・稼働報告書で証明する
得られたはずの利益完成していれば残った利益(粗利)見積書の原価と金額から出す
差し引くもの解除で使わずに済んだ費用(残りの工程の外注費など)顧客から必ず指摘される

履行利益とは、契約どおり最後まで進んでいれば得られたはずの利益のことです。 損益相殺とは、解除で得をした分(使わずに済んだ費用)を損害から差し引く考え方のことです。

まとめると、請求の目安は次の式になります。

請求の目安 = 契約金額 − 解除で使わずに済んだ費用

この式の答えは「すでにかかった費用+得られたはずの利益」と同じ金額になります。ただし実際の金額は、契約書の条項や話し合い、裁判所の判断で変わります。

出来高(できた分)の報酬も請求できる?

完成した部分を顧客が使えるなら、請求できます。 2020年4月施行の改正民法で、634条にこのルールがはっきり書かれました。

出来高とは、途中までに仕上がった仕事の量と、それに見合う報酬のことです。

民法634条のポイントは次の3つです。

  1. 請負が完成前に解除されたとき(または顧客の責任でない理由で完成できなくなったとき)に使える

  2. 仕上がった部分が分けられる(可分な)もので、顧客がその部分で利益を受けることが条件

  3. その部分は「完成した」とみなされ、顧客が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できる

たとえば、要件定義書と基本設計書が完成して納品済みなら、顧客はそれを別の会社に渡して開発を続けられます。この場合は「分けられて、顧客が利益を受ける部分」と言いやすいです。

反対に、途中までのプログラムで、顧客が使い道のないものは、634条での請求は難しくなります。その場合でも、641条の損害賠償で費用と利益を求める道が残ります。

請求の根拠使える場面請求できるもの
民法641条顧客の都合で完成前に解除された損害(費用+得られたはずの利益)
民法634条仕上がった部分を顧客が使える顧客が受ける利益の割合の報酬
契約書の中途解約条項条項に決め方が書いてある条項どおりの金額(民法より優先されることが多い)

同じお金を二重には取れません。641条の損害賠償に出来高分を含めて1本で請求するのが、話がこじれにくい方法です。

準委任(SES)の解除とは何が違う?

準委任は、顧客も自社も「いつでも」解除でき、原則は働いた分の報酬だけです。 請負のように「得られたはずの利益」まで当然に請求できるわけではありません。

比べる点請負(システム開発)準委任(SES)
解除できる人注文者(顧客)だけ(641条)顧客・自社の両方(651条)
解除の条件完成する前ならいつでもいつでも
お金のルール顧客は損害を賠償する働いた割合の報酬(648条3項)
損害賠償が必要なとき解除すれば原則必要不利な時期の解除など(651条2項)

準委任で損害賠償が必要になるのは、民法651条2項の場面です。相手に不利な時期に解除したときなどで、やむを得ない理由があれば不要です。

準委任の途中解除の詳しいルールは、SES契約の一方的な解除で損害賠償は?民法651条と請求の目安で解説しています。

「成果完成型」の準委任は請負に近い

準委任でも、成果物に報酬を払う約束(成果完成型)の場合は注意が必要です。民法648条の2で、634条の出来高のルールが準用されます。詳しくは準委任契約の成果完成型とは|履行割合型との違いと検収の注意点を読んでください。

計算例:3か月の開発を2か月目で打ち切られたら

考え方は「契約金額から、使わずに済んだ費用を引く」です。 数字で見るとわかりやすいので、例を使います。

例:自社が一次請けで受けた請負案件

  • 契約金額:600万円(税抜)、期間は2026年10月1日(木)〜12月25日(金)

  • 見積の原価:480万円(自社エンジニア2名+BPエンジニア1名)、利益は120万円

  • 2026年11月13日(金)に、顧客から「予算が止まったので中止」と連絡

  • 11月13日までにかかった費用:350万円(要件定義・基本設計は納品済み)

  • BPとの準委任契約は「2週間前予告」。11月30日(月)までの稼働分が追加で30万円かかる

項目金額説明
すでにかかった費用350万円11月13日までの人件費・外注費
BPの予告期間の費用30万円解除のせいで避けられない費用
得られたはずの利益120万円見積上の粗利
請求の目安500万円600万円 −(使わずに済んだ費用100万円)

使わずに済んだ費用は、原価480万円から、かかった費用380万円(350万円+30万円)を引いた100万円です。600万円−100万円=500万円が、交渉の出発点になります。

実際には、顧客が「利益分は払えない」と言ってくることが多いです。その場合も、費用の380万円は証拠がそろっていれば強く求められる部分です。どこまで譲るかは、会社として先に決めておきます。

途中解除されたときに営業がやる6ステップ

最初の1週間で、契約書・出来高・BPの3つを押さえるのが勝負です。 次の順に進めます。

  1. 解除の連絡を文書でもらう:口頭やチャットだけで終わらせず、日付と理由が入ったメールか書面をもらいます。

  2. 契約書の条項を確認する:基本契約と個別契約で「中途解約」「解除」「損害賠償の上限」「検収」の条項を見ます。

  3. 作業を止め、出来高を記録する:解除日時点の成果物、進み具合(%)、稼働時間を一覧にします。

  4. BP・自社エンジニアに連絡する:BPとの契約の予告期間を確認し、終了日を決めます。空いた人の次の案件探しもここで始めます。

  5. 請求額を計算して提示する:費用+利益−使わずに済んだ費用で計算し、根拠の資料をつけて出します。

  6. 合意書を結ぶ:金額、支払日、成果物の引き渡し、著作権の扱いを1枚にまとめ、双方で記名押印します。

契約書に中途解約の条項がない、またはあいまいなときは、次の契約から直しておきます。条項例はSESの中途解約条項の書き方|準委任の途中解約と報酬の扱いを参考にしてください。

確認チェックリスト(10項目)

  • 契約は請負か準委任か(契約書の中身で判断したか)

  • 中途解約・解除の条項に、金額の決め方が書いてあるか

  • 損害賠償の上限(契約金額まで、など)の条項はあるか

  • 解除の連絡を、日付入りの文書で受け取ったか

  • 納品済み・検収済みの成果物は何か

  • 解除日までの稼働時間と費用を、証拠つきで出せるか

  • BPとの契約の予告期間と、発生する費用はいくらか

  • 購入済みのライセンスや機材など、戻せない費用はあるか

  • 成果物の著作権をどちらに残すか決めたか

  • 取適法(旧・下請法)が関係する取引かどうか確認したか

検収とは、納品物が約束どおりかを顧客が確かめて受け取ることです。 検収済みの部分は、出来高として主張しやすくなります。

請求するときのメール例文

最初のメールは、金額より先に「解除の受け取り」と「精算の進め方」を伝えます。 いきなり金額だけ送ると、感情的な対立になりやすいからです。

例文:解除の連絡を受けた直後(11月16日(月)に送る想定)

件名:〇〇システム開発業務の中途解除に伴う精算のご相談

〇〇株式会社 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
11月13日にご連絡いただいた、〇〇システム開発業務の中止の件、承知いたしました。

作業は11月13日をもって停止しております。
つきましては、契約書第〇条および民法の定めに沿って、精算についてご相談させてください。

11月20日(金)までに、次の資料をお送りします。
・11月13日時点の成果物一覧と進み具合
・これまでにかかった費用の内訳
・中止に伴い発生する費用の内訳

資料をもとに、一度お打ち合わせの時間をいただけますと幸いです。

例文:金額を提示するとき

先日お送りした資料をもとに、精算額を次のとおりご提案いたします。
・納品済みの要件定義書・基本設計書を含む、これまでの作業費用:〇〇万円
・中止に伴い避けられない費用(協力会社の予告期間分):〇〇万円
・本来の完成時に見込んでいた利益分:〇〇万円
合計:〇〇万円(税抜)
内訳の根拠資料を添付いたします。ご確認のほど、よろしくお願いいたします。

BP(協力会社)との契約はどうなる?

上の請負が解除されても、下のBPとの契約は自動では終わりません。 BPとは別の契約を結んでいるからです。

BPとは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。 請負案件でも、実際の作業はBPのエンジニアに準委任で入ってもらうことがよくあります。

BPとの契約が準委任なら、自社から651条で解除できます。ただし、契約書の解約予告(1か月前など)を守る必要があり、その期間の報酬は払うのが一般的です。この費用は、顧客への請求の「避けられない費用」に入れます。

BPへの連絡は、顧客から解除の連絡を受けた当日か翌営業日が目安です。遅れるほど予告期間の費用が増えます。伝え方はSESの契約終了メール例文5つ|理由別の伝え方と送る時期が使えます。

BPへの終了連絡の例文

件名:【ご連絡】〇〇システム開発案件の中止に伴う契約終了について

株式会社〇〇 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
11月13日(金)、エンド様の予算の都合により、〇〇システム開発案件が中止となりました。
貴社〇〇様との個別契約は、契約書第〇条の2週間前予告に沿って、11月30日(月)をもって終了させていただきたく存じます。
11月30日までの稼働分は、契約どおりお支払いいたします。作業の停止と待機のご指示は、別途ご相談させてください。
〇〇様の次の案件は、弊社でも優先してお探しいたします。

予告期間中の作業内容は、BPと話し合って決めます。成果物の整理や引き継ぎ資料づくりに充てると、顧客への出来高の説明にも使えます。

また、自社が顧客より小さい会社の場合、取引の条件によっては取適法(旧・下請法)が関係します。受注側に責任がないのに発注を取り消し、費用を負担しないことは問題になり得ます。対象になるかは取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで確認してください。

途中解除のあと、チョータツで次の案件を早く決める

途中解除のダメージを小さくする一番の方法は、空いたメンバーをすぐ次の案件に入れることです。 請求の交渉は時間がかかりますが、待機の人件費は毎日かかります。

自分でやるなら、次の順に進めます。

  1. 空いたメンバーのスキルシートを、今回の案件の経験を足して更新する

  2. 取引のあるBPに「〇月〇日から参画可能」とメールで知らせる

  3. 届いた案件メールから、条件の合うものを探して提案する

この作業をもっと楽にするなら、チョータツが使えます。チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。

  • 案件・人材の情報を1か所で管理し、社内で共有できる

  • パートナーへのメール配信機能で、空いた人の情報をまとめて届けられる

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる

  • 3,000社以上が利用しており、無料で始められる

また、案件情報を管理しておくと、次に請負や準委任の案件を受けるときに、契約形態や条件を提案前に確認しやすくなります。途中解除に強い条件の案件を選ぶことも、再発防止になります。

よくある質問

Q. システム開発を請負で受けました。顧客は理由なしで解除できますか?
完成前なら、理由がなくても解除できます(民法641条)。その代わり、顧客は受注者の損害を賠償する必要があります。
Q. 請負の途中解除で、利益分まで請求していいのですか?
一般に、完成すれば得られたはずの利益も損害に含まれると考えられています。ただし、解除で使わずに済んだ費用は差し引きます。
Q. 納品前でも、出来高の報酬はもらえますか?
仕上がった部分を分けられて、顧客がそれで利益を受ける場合は、その割合の報酬を請求できます(民法634条)。
Q. SES(準委任)で途中解除されたときも、同じように請求できますか?
準委任は原則、働いた割合の報酬を請求できます(民法648条3項)。損害賠償は、不利な時期の解除などに限られます(民法651条2項)。
Q. 契約書に「中途解約時は出来高のみ支払う」と書いてあったら?
契約書の条項が優先されることが多いです。利益分の請求は難しくなるため、結ぶ前の条項チェックが大切です。
Q. 自社(受注側)から請負契約を途中でやめることはできますか?
641条は注文者(顧客)のための決まりで、受注側は自由には解除できません。顧客の支払いがないなど、契約違反があるときに解除を検討します。

まとめ

  • 請負のシステム開発は、完成前なら顧客がいつでも解除できる。ただし顧客は損害を払う(民法641条)

  • 請求の目安は「契約金額−解除で使わずに済んだ費用」。費用と得られたはずの利益が中身

  • 仕上がった部分を顧客が使えるなら、出来高の報酬も請求できる(民法634条)

  • 準委任(SES)は双方がいつでも解除でき、原則は働いた分の報酬(民法651条・648条)

  • 営業は、文書で連絡をもらう→契約書→出来高→BP→請求→合意書の順で動く

  • 空いたメンバーは、チョータツで次の案件をすぐ探して待機を減らす

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

  • e-Gov法令検索「民法」(第634条、第641条、第648条、第648条の2、第651条)

関連する記事