SES業界カオスマップ2026|企業の種類を4つの軸で分けて、営業先・BP候補の探し方まで解説
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
SES業界のカオスマップとは
カオスマップとは、ある業界の企業やサービスを種類ごとに分けて、1枚に並べた地図のことです。 数が多くて全体が見えにくい業界を、ひと目でつかむために使われます。
SES業界は、会社の数がとても多い業界です。SES(システムエンジニアリングサービス)とは、エンジニアの技術力を、準委任契約などで顧客に提供するサービスのことです。 大手のグループ会社から数人の会社まで、いろいろな会社が同じ市場にいます。
SES営業にとって、カオスマップは「どこに営業するか」を決める道具です。区分ごとに、案件が出やすい会社・人材が集まりやすい会社がちがうからです。
この記事では、公開されている一般的なマップをなぞるのではなく、営業先とBP候補を探すための分け方で整理します。BP(ビジネスパートナー)とは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。
SES業界カオスマップ2026(全体図)
SES業界は、「SESを提供する企業」と「企業どうしをつなぐサービス」の2層で見ると全体がつかめます。表は、この記事で使う区分の一覧です。
| 層 | 区分 | どんな会社・サービスか | 営業での主な使い道 |
|---|---|---|---|
| 企業 | 資本系列(5区分) | メーカー系・ユーザー系・独立系・外資系・SES専業 | 案件の出どころを知る |
| 企業 | 商流の位置(3区分) | 元請・中間下請・最終下請 | 取引の向き(案件か人材か)を決める |
| 企業 | 得意分野(6区分) | 開発・インフラ・PMO・組込み・テスト・ヘルプデスク | 提案する人材と合わせる |
| 企業 | ビジネスモデル(5区分) | プロパー中心・BP中心・高還元型・フリーランス中心・技術者派遣 | 人材の出やすさ、条件の合わせ方を知る |
| つなぐ側 | サービス・ツール(4区分) | マッチングサービス・フリーランスエージェント・営業支援ツール・交流会 | 営業先を見つける手段にする |
1つの会社は、4つの軸それぞれでどこかに入ります。たとえば「独立系・中間下請・インフラが得意・BP中心」のように、4つのラベルの組み合わせで相手を表せます。
実在の会社名を知りたいときは、系統別の一覧記事が役立ちます。→ メーカー系・ユーザー系・独立系・外資系SIerの一覧
軸1:資本系列で分ける(5区分)
資本系列とは、その会社の株を主に持っている親会社がどんな会社か、という分け方です。 親会社によって、案件の出どころと取引の入り口が変わります。
| 区分 | 親会社・成り立ち | 案件の特徴 | 営業のしかた |
|---|---|---|---|
| メーカー系 | コンピューターや電機のメーカー | 親会社の製品を使う大型案件 | 協力会社として登録を目指す |
| ユーザー系 | 銀行・商社・鉄道などの事業会社 | 親会社グループの社内システム | 金融・流通など業界知識で提案する |
| 独立系 | 特定の親会社がない | 業種を問わず幅広い | 担当者との関係で取引が広がる |
| 外資系 | 海外のIT企業の日本法人 | 自社製品の導入・コンサル | 英語・製品資格のある人材を出す |
| SES専業 | 親会社がない中小のSES企業 | 他社から受ける案件が中心 | BPとして案件・人材を交換する |
SIer(システムインテグレーター)とは、システムの設計から開発・運用までをまとめて請け負う会社のことです。 メーカー系・ユーザー系・独立系・外資系は、主にSIerの分け方です。この記事では、そこに「SES専業」を足して5区分にしています。SIerの系列と下請け構造を図で見たいときはSIer業界地図2026が参考になります。
営業での使い分け
案件を増やしたいとき:メーカー系・ユーザー系の子会社や、その協力会社を狙います。大型案件は、系列の中で仕事が流れることが多いためです。登録の審査で見られる点はSIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目にまとめています。
人材を増やしたいとき:SES専業の中小企業を狙います。自社の案件だけでは人材が埋まらず、他社の案件を探している会社が多いためです。
親会社がどこかは、上場企業なら有価証券報告書の「大株主の状況」でわかります。有価証券報告書は、EDINET(金融庁の開示書類の検索サイト)で読めます。
軸2:商流の位置で分ける(3区分)
商流とは、SESの仕事がエンド(発注元)から、いくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。 相手が商流のどこにいるかで、その会社から「案件が来るか、人材が来るか」が決まります。
公正取引委員会は2022年6月、ソフトウェア業の取引を調べた報告書を公表しました。資本金3億円以下のソフトウェア業の会社4,739社の回答で、立場の割合は次のとおりです。
| 立場 | 報告書での意味 | 割合 | 営業で期待できること |
|---|---|---|---|
| 元請 | 基本的にエンドユーザーから直接受注する | 40.4% | 案件をもらう |
| 中間下請 | 同業者から受注し、一部を外注する | 38.2% | 案件も人材も交換する |
| 最終下請 | 同業者から受注し、基本的に外注しない | 21.3% | 人材をもらう |
同じ報告書では、取引の中で「中抜き」をする事業者の存在を感じた会社が、全体の25.9%でした。商流が深い案件ほど、単価が下がりやすい点に注意が必要です。
商流の位置は、会社ごとに固定ではありません。同じ会社でも、案件によって元請にも下請にもなります。営業の現場では、「エンドから数えて何社目ですか」と数字で聞くのが確実です。
何次請けが多いかはSESの多重下請け構造とは?図解と問題点、何次請けが平均かでくわしく解説しています。
商流の位置を聞くメールの例文
〇〇株式会社 △△様
いつもお世話になっております。ご紹介いただいたJava案件について、2点教えてください。
エンドから数えて、御社は何社目のお立場でしょうか。
弊社から人材を出す場合、再委託の条件(弊社の下にBPを入れてよいか)はありますか。
商流の位置によって出せる人材が変わるため、先に確認させていただいております。
この2点を聞いた答えを、自社版マップの「商流の位置」の列にそのまま書き写します。
軸3:得意分野で分ける(6区分)
得意分野で分けると、自社の人材を出しやすい相手が見つかります。 案件と人材の分野がずれていると、何度提案しても決まりません。
| 得意分野 | 主な案件の中身 | 相手の探し方のヒント |
|---|---|---|
| 開発(Web・業務系) | Java・PHPなどでの設計・製造 | 案件メールの言語名で探す |
| インフラ | サーバー・ネットワーク・クラウドの構築・運用 | 資格(CCNA・AWSなど)の記載で探す |
| PMO・コンサル | 進行管理、要件定義の支援 | 元請に近い会社が多い |
| 組込み・制御 | 家電・車載などの機器のソフト | メーカー系や技術者派遣の会社に多い |
| テスト・品質保証 | テストの設計・実施 | 若手を出しやすい |
| 運用保守・ヘルプデスク | 社内システムの問い合わせ・保守 | 経験が浅い人材の提案先になる |
相手の得意分野は、その会社が送ってくる案件メールや人材メールを見るとわかります。1か月分を分野ごとに数えると、相手の本当の強みが見えてきます。
軸4:ビジネスモデルで分ける(高還元型など5区分)
ビジネスモデルとは、その会社がどうやって人材を集め、どこで利益を出しているかという仕組みのことです。 ここを知ると、条件交渉の進め方が変わります。
| 区分 | 人材の持ち方 | 営業で気をつけること |
|---|---|---|
| プロパー中心型 | 自社の正社員(プロパー)を中心に出す | 待機(案件のない社員)を早く埋めたがる |
| BP中心型 | 他社の人材を仲介して出す | 商流が深くなりやすい。再委託の条件を確認する |
| 高還元型 | 単価のうちエンジニアに払う割合を高く見せる | 単価を下げる交渉が通りにくい |
| フリーランス中心型 | 個人事業主のエンジニアと契約して出す | 契約期間や稼働の条件をすり合わせる |
| 技術者派遣型 | 労働者派遣事業の許可を持ち、派遣でも出す | 準委任と派遣のどちらの契約かを確かめる |
高還元SESとは、エンジニアへの給与の割合(還元率)を高く設定し、それを公開して採用に使うSES企業のことです。 エンジニアの手取りを守るため、低い単価の案件は受けにくい傾向があります。くわしくは高還元SESのビジネスモデルと利益で解説しています。
プロパーとは、その会社に正社員として雇われているエンジニアのことです。 プロパー中心型の会社は、人材の情報を早く出してくれることが多く、BPとして組みやすい相手です。
マッチングサービス・ツールの区分(4区分)
SES業界には、企業どうしをつなぐサービスやツールという区分もあります。 取引相手ではなく、取引相手を見つけるための手段として使い分けます。
| 区分 | どんなものか | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| 案件・人材マッチングサービス | 企業が案件や人材を載せ、ほかの企業と出会うサイト | 新しいBPを広く探す |
| フリーランスエージェント | フリーランスのエンジニアと案件をつなぐ会社 | 個人の人材を探す |
| 営業支援ツール | 案件・人材の管理、メール配信、メールの仕分けなど | 取引が始まったBPとのやりとりを効率化する |
| 交流会・商談会 | SES企業どうしが集まって名刺交換する場 | 顔を合わせて関係をつくる |
マッチングサービスの選び方は、SESマッチングツールの選び方と比較ポイント7つでくわしく比べています。Slackなどの営業仲間の集まりを使う方法は、SES営業コミュニティの活用法|Slack等で案件・人材を回すコツで紹介しています。
営業支援ツールは、見つけたBPとの取引を回すための道具です。 探す手段と管理する道具を分けて考えると、ツールを入れすぎずにすみます。
目的別:どの区分から営業先・BP候補を探すか
目的によって、最初に当たる区分は変わります。 おすすめの順番を表にしました。
| 目的 | 最初に当たる区分 | 次に当たる区分 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 案件を増やしたい | 元請に近い独立系・ユーザー系子会社 | PMO・コンサルが得意な会社 | 案件の出どころに近い |
| 人材を増やしたい | SES専業・プロパー中心型 | フリーランスエージェント | 他社案件を探している会社が多い |
| 単価を上げたい | 元請・メーカー系の協力会社 | 高還元型の会社 | 商流が浅く、単価の話ができる |
| 若手を決めたい | テスト・ヘルプデスクが得意な会社 | 運用保守の元請 | 経験が浅くても入れる案件が多い |
やってはいけないこと
区分を見ずに、一斉に営業メールを送る:相手に合わない案件や人材ばかり届き、読まれなくなります。
商流を確かめずに人材を出す:商流が深すぎて、単価が合わなくなることがあります。
1つの区分だけに偏る:その区分の案件が減ったとき、売上が一気に落ちます。
自社版カオスマップを作る5ステップ
自社版カオスマップは、今の取引先とこれから狙う会社に、4つの軸のラベルを付けるだけで作れます。 Excelやスプレッドシートで十分です。
今の取引先を書き出す:過去6か月に案件か人材のやりとりがあった会社を、1行に1社で並べます。
4つの軸のラベルを付ける:資本系列・商流の位置・得意分野・ビジネスモデルの列を作って埋めます。
公的なサイトで基本情報を確かめる:国税庁の法人番号公表サイトで、正式な社名と所在地を確認します。派遣もする会社なら、厚生労働省の人材サービス総合サイトで許可を確認します。
空いている区分を見つける:取引が少ない区分が、次に開拓する場所です。
月に1回見直す:取引の量が変わった会社のラベルや優先度を更新します。
ラベル付けの例
| 会社(例) | 資本系列 | 商流の位置 | 得意分野・モデル |
|---|---|---|---|
| A社 | ユーザー系子会社 | 元請 | 業務系開発・プロパー中心 |
| B社 | SES専業 | 中間下請 | インフラ・BP中心 |
| C社 | 独立系 | 最終下請 | テスト・高還元型 |
この例では、案件の相談はA社、インフラ人材の交換はB社、若手の案件探しはC社に声をかけます。声をかける相手を目的で選べるようになります。
区分ごとに取引前に確認するチェックリスト
新しい区分の会社と取引を始める前に、次の6項目を確かめます。 区分によって、トラブルになりやすい点がちがうからです。
正式な社名・所在地が、法人番号公表サイトの情報と一致している
案件の商流(エンドから何社目か)を数字で聞いた
再委託(さらに下の会社に任せること)の可否と条件を確かめた
派遣で出す場合は、労働者派遣事業の許可番号を確かめた
支払いサイト(請求から入金までの日数)と精算の条件を聞いた
窓口の担当者と、案件・人材メールの送り先を決めた
取引先の選び方は、SESパートナー募集企業の一覧と探し方7選でも紹介しています。
チョータツとチョータツブーストで区分ごとの取引先を広げ、管理する
自分でマップを作ったあとは、DrivenXのチョータツを使うと、探すことと管理することを1か所にまとめられます。 Excelで区分を付けても、案件や人材の情報が別の場所にあると、すぐ古くなるためです。
チョータツでできること
案件・人材の情報を管理し、社内やパートナーと共有できます。
パートナーへのメール配信機能で、区分ごとに合う相手へ案件や人材を届けられます。
他社と連携すると、その会社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。
AIが入力を手伝うので、登録の手間が減ります。
空いている区分を埋めるならチョータツブースト
チョータツブーストは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できる機能です。 自社版マップで取引が少ない区分が見つかったら、ブーストで新しい取引先を探す、という使い方ができます。
チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
よくある質問
- Q. SES業界のカオスマップは、どこかで公開されていますか?
- 民間の会社が作ったものが公開されていることがあります。ただし、作った会社の視点で区分が決まっています。営業に使うなら、自社の取引先に4つの軸でラベルを付けた自社版を作るのがおすすめです。
- Q. SES企業の種類は、何で分けるのがいちばん実用的ですか?
- 営業で最初に使うなら「商流の位置」です。相手から案件が来るか人材が来るかが決まるためです。次に資本系列、得意分野、ビジネスモデルの順で足していくと整理しやすくなります。
- Q. SIerとSES企業は、同じ区分で考えてよいですか?
- 同じマップの中に並べて考えて問題ありません。SIerも、自社の人材だけで足りない分をSES企業に頼んでいるためです。
- Q. 高還元SESの会社とは取引しにくいですか?
- 取引しにくいわけではありません。単価を下げる交渉は通りにくいですが、単価の高い案件なら人材を出してもらいやすい相手です。
- Q. 相手の資本系列はどうやって調べますか?
- 上場企業ならEDINETの有価証券報告書で「大株主の状況」を見ます。上場していない会社は、公式サイトの会社概要にある株主やグループ会社の記載を確認します。
- Q. マッチングサービスと営業支援ツールは、どちらを先に入れるべきですか?
- BPが少ないうちは、マッチングサービスで相手を増やします。BPが増えてやりとりが追いつかなくなったら、営業支援ツールを入れる順番がおすすめです。
まとめ
カオスマップとは、業界の企業やサービスを種類ごとに分けて並べた地図のこと
SES企業は、資本系列・商流の位置・得意分野・ビジネスモデルの4軸で分けると整理できる
ソフトウェア業の元請は40.4%、中間下請は38.2%、最終下請は21.3%(公正取引委員会・2022年)
案件を増やすなら元請に近い系列、人材を増やすならSES専業・プロパー中心型から当たる
自社版マップは、取引先に4つのラベルを付けるだけで作れる。空いている区分が次の開拓先
区分ごとの取引先の管理はチョータツ、空いている区分の開拓はチョータツブーストで楽にできる
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書について」(2022年6月29日)
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(本体PDF)」
金融庁「EDINET」(有価証券報告書:大株主の状況)
国税庁「法人番号公表サイト」
厚生労働省「人材サービス総合サイト」(労働者派遣事業の許可の確認)
e-Gov法令検索「労働者派遣法」(第5条:労働者派遣事業の許可)