SES業界とは?エンド・元請け・BPの関係と、お金と情報の流れを新任SES営業向けに解説
公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日
SES業界とは
SES業界とは、エンジニアの技術や作業を、お客さんのシステム開発・運用の現場に提供する会社の集まりです。1社で完結せず、多くの会社がつながって1つのプロジェクトを支えるのが特徴です。
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、エンジニアの技術や作業をお客さんに提供する事業のことです。契約は多くの場合、準委任契約で結びます。
準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた作業を行うこと自体を約束する契約のことです(民法656条)。SESでは、たとえば「月額〇万円・稼働140〜180時間」のように、作業時間をもとに精算するのが一般的です。
SESの業種は「情報通信業」
SES事業の業種は、日本標準産業分類で「3911 受託開発ソフトウェア業」が基本です。大分類は「G 情報通信業」です。日本標準産業分類は会社の主な活動の中身で業種を決めるため、派遣が主な会社は「9121 労働者派遣業」になります。
書類での書き方はSES事業の業種は何?書き方と業種番号を3つの場面別に解説で詳しく説明しています。
SES(準委任)・請負・派遣の違い
SES・請負・派遣の大きな違いは、何を約束するかと、誰がエンジニアに指示を出すかです。営業が契約形態を聞かれたときは、この2点で説明できます。
| 契約 | 約束すること | 作業の指示を出す人 | 国の許可 |
|---|---|---|---|
| SES(準委任) | 決められた作業を行うこと | SES企業(受ける側) | 不要 |
| 請負 | 仕事を完成させること | 請け負った会社 | 不要 |
| 労働者派遣 | 人を派遣し、客先の指示で働いてもらうこと | 派遣先(客先) | 必要(厚生労働大臣の許可) |
3つを比べた詳しい表はSESの準委任・派遣・請負の違い|比較表と営業が確認する5項目にまとめています。
SES業界に登場する4種類の会社
SES業界には、エンド・元請け・一次請け以下・BPという立場の会社が登場します。同じ会社でも、案件によって立場が変わることがあります。
| 立場 | どんな会社か | 例 |
|---|---|---|
| エンド | システムを実際に使う会社。発注の出発点 | 銀行、メーカー、通信会社、官公庁 |
| 元請け | エンドから直接仕事を受け、全体をまとめる会社 | 大手・中堅のSIer |
| 一次請け・二次請け | 元請けやその下から仕事を受ける会社 | 中堅SIer、SES企業 |
| BP(ビジネスパートナー) | 案件や人材を紹介し合う取引先 | 同業のSES企業、フリーランス |
エンドとは、システムを使う会社、つまり発注の出発点のことです。元請けとは、エンドから直接仕事を受ける会社のことで、多くはSIerです。
SIerとは、システムを企画から開発・運用までまとめて請け負う会社のことです。SIerとSES企業の違いはSIerとSESの違い|商流の位置と営業先の見分け方5つで解説しています。
BP(ビジネスパートナー)とは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。上にいるBPからは案件が、横や下にいるBPからは人材が届くことが多いです。
商流とは:仕事が流れる経路
商流とは、システム開発の仕事がエンドから、いくつもの会社を通って流れていく経路のことです。SES業界では、商流の段が深いか浅いかが、単価や情報の早さを左右します。
商流は、次のように上から下へつながります。
エンドがシステムを作りたいと考え、元請けに発注する
元請けが全体の計画を立て、足りない人手を協力会社に頼む
一次請けが自社のエンジニアを出し、足りなければさらに下に頼む
二次請け以降が自社のエンジニアやBPの人材を出す
実際のエンジニアが、エンドや元請けの現場で作業する
「一次請け」の数え方は会社によって違います。元請けを一次請けと呼ぶ会社もあれば、元請けの1つ下を一次請けと呼ぶ会社もあります。営業の現場では、「エンドから数えて何社目ですか」と数字で聞くのが確実です。
商流の途中の会社を飛ばして上の会社と直接取引する「商流飛ばし」は、契約違反やトラブルのもとになります。注意点はSESの商流飛ばしは違法?営業が知るべきリスクと防ぎ方5つで解説しています。
お金の流れ:上から下へ、各社の取り分を引いて流れる
お金はエンドから下へ流れ、1社通るごとに各社の取り分(マージン)が引かれます。そのため、商流が深いほど、エンジニアの所属会社に届く金額は小さくなります。
マージンとは、受け取った金額と、下の会社に払う金額の差のことです。営業や管理の費用、会社の利益にあてられます。
次の表は、しくみを理解するための計算例です。実際の金額や率は、案件や会社によって大きく違います。
| 立場 | 上から受け取る月額(例) | 下へ払う月額(例) |
|---|---|---|
| 元請け | 100万円(エンドから) | 90万円 |
| 一次請け | 90万円 | 80万円 |
| 二次請け(エンジニアの所属) | 80万円 | ―(エンジニアの給与・会社の経費へ) |
この例では、同じエンジニアの作業に対して、エンドが払う100万円のうち80万円が所属会社に届きます。間の会社が1社減れば、所属会社に届く金額を増やせる可能性があります。
マージン率の考え方はSESのマージン率の平均と相場|適正ラインと説明のしかたで解説しています。職種別の単価の目安はSESの単価相場|職種・スキル別の月額目安と相場の調べ方3つを見てください。
情報の流れ:案件は上から下へ、人材は下から上へ
SES業界の情報は、案件情報が上から下へ、人材情報が下から上へ流れます。この2つの情報が出会ったところで、提案と契約が生まれます。
| 情報 | 流れる向き | 中身 | 主な手段 |
|---|---|---|---|
| 案件情報 | 上から下へ | 仕事内容、必要なスキル、単価、場所、期間 | 案件の配信メール |
| 人材情報 | 下から上へ | スキル、経験年数、希望単価、稼働開始日 | 人材の配信メール、スキルシート |
| 提案 | 下から上へ | この案件にこの人材を、という組み合わせ | 提案メール、スキルシート |
| 面談・結果 | 上から下へ | 面談日程、参画の可否 | メール、電話 |
SES営業には、毎日たくさんの案件メール・人材メールが届きます。情報を早く正確に読み取り、組み合わせを見つける力が、営業の成果を大きく左右します。
商流が深くなる理由と、公的データ
SES業界の商流が深くなるのは、大きなプロジェクトでも人手が多く要るのはピーク時だけだからです。元請けは、ピーク時の人手を社外から集めて対応します。
公正取引委員会は2022年6月、ソフトウェア業の取引実態を調べた報告書を公表しました。資本金3億円以下のソフトウェア業2万1,000社に依頼し、4,739社が回答しています。報告書は、会社の立場を次の3つに分けています。
| 立場 | 報告書の定義(要約) | 回答企業の割合 |
|---|---|---|
| 元請 | 基本的にエンドユーザーから直接受注する者 | 40.4% |
| 中間下請 | 同業者から受注し、一部を外注する者 | 38.2% |
| 最終下請 | 同業者から受注し、基本的に外注しない者 | 21.3% |
同じ報告書は、多重下請けのもう1つの理由も挙げています。新しい技術に合わせた人材を、すべて自社で雇うのは難しいという事情です。
一方で、課題も示されています。取引の中で「中抜き」をする事業者の存在を感じた会社は全体の25.9%でした。中間下請では29.2%、最終下請では33.5%と、下の段ほど高くなっています。
営業目線で読むと、自社が商流の中で「必要な1社」だと示せないと、中抜きと見られやすいということです。技術の確認、条件の調整、参画後のフォローなど、自社が担う役割を提案時に言葉にしておきましょう。
SES業界の今後:人手不足は続き、ルールは厳しくなる
SES業界の今後は、IT人材の不足が続く一方で、取引のルールが厳しくなるという2つの流れで見るのが基本です。人手が足りないのでSESへの需要は続きますが、商流の深さや支払い条件への目は厳しくなっています。
人手不足:経済産業省の試算では、2030年にかけてIT人材の不足が続くと見込まれています。詳しい数字はIT人材不足の2030年予測とデータ|経産省試算を営業目線で解説で紹介しています
ルールの強化:2026年1月には下請法が「取適法」に変わりました。多重下請けや「中抜き」も、公正取引委員会の調査で課題として取り上げられています
営業の備え:商流を浅くする努力と、契約・支払い条件を提案前に確認する習慣が、これまで以上に大切になります
市場の大きさはSES業界の市場規模と推移|公的データで見る4つのポイントで、AIの影響などの動向はSES業界の今後はどうなる?AI・法改正など5つの動向と営業の備えで解説しています。
SES業界で守るべき3つのルール
SES業界で営業が必ず知っておくべきルールは、指揮命令・再委託・二重派遣の禁止の3つです。どれも、商流が深いほど守りにくくなります。あわせて、2026年に変わった支払いのルールも押さえておきましょう。
| ルール | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 指揮命令 | SESでは客先がエンジニアに直接指示しない。直接指示が続くと偽装請負のおそれ | 労働者派遣法、37号告示 |
| 再委託 | 準委任の仕事を別の会社に任せるには、依頼主の許諾などが必要 | 民法644条の2 |
| 二重派遣の禁止 | 派遣された人を、さらに別の会社に出してはいけない | 職業安定法44条 |
偽装請負とは、契約は準委任や請負なのに、実態は派遣になっている状態のことです。派遣との違いはSES契約と派遣契約の違い|指揮命令など営業の確認ポイント7つで解説しています。避けたい行為は偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選にまとめています。
二重派遣とは、派遣されてきた人を、さらに別の会社に出して指示を受けさせることです。罰則や避け方はSESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方を見てください。
支払いのルールも変わりました。2026年1月1日から、下請法は「取適法」(中小受託取引適正化法)に変わっています。
条件に当てはまる取引では、支払期日の決め方にルールがあります。物や作業を受け取った日から60日以内で、できるだけ短く決める必要があります。
新任SES営業の仕事の流れ
新任のSES営業の仕事は、案件と人材を集め、組み合わせて提案し、契約後も関係を保つことです。1件の成約までは、おおむね次の7ステップで進みます。
案件を集める:元請けやBPから届く案件メールを読み、条件を整理する
人材を集める:自社エンジニアとBPの人材の情報をそろえる
組み合わせを見つける:スキル・単価・場所・開始日が合う組み合わせを探す
提案する:スキルシートを添えて、上位の会社に提案メールを送る
面談に同席する:客先や上位の会社との面談を調整し、同席する
契約する:契約形態・精算幅・支払い条件を確認して契約を結ぶ
参画後もフォローする:稼働の状況を確認し、契約の更新や次の案件につなげる
新任のうちは、3番の「組み合わせを見つける」に時間がかかりがちです。案件と人材の情報を1か所にまとめておくと、組み合わせを探す時間を短くできます。
面談の流れはSES面談の流れ|2回面談になる理由と営業の段取り7ステップで解説しています。提案メールはSES営業メールの例文10選|案件・人材紹介の書き方とコツを参考にしてください。
チョータツで案件と人材の組み合わせを早く見つける
案件と人材の組み合わせを早く見つけるには、散らばった情報を1か所に集めることが近道です。自分でやるなら、Excelで案件一覧と人材一覧を作り、届いたメールの内容を転記していきます。
ただし、配信メールは1日に何十通も届きます。転記が追いつかず、よい組み合わせを見落とすことも少なくありません。もっと楽にするなら、チョータツが使えます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件・人材を記録する | メールを読んでExcelに転記 | 案件・人材の情報を管理・共有。AIが入力を手伝う |
| BPの案件・人材を知る | 配信メールを1通ずつ読む | 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化 |
| 自社の人材を届ける | BCCでメールを一斉送信 | パートナーへのメール配信機能で届ける |
チョータツは3,000社以上が利用しているSES営業のためのツールで、無料で始められます。商流の上と下からの情報を同じ場所で見られるので、新任の営業でも業界の動きをつかみやすくなります。
よくある質問
- Q. SES業界とは簡単にいうと何ですか?
- エンジニアの技術や作業を、システム開発・運用の現場に提供する会社の集まりです。多くの会社が商流でつながり、1つのプロジェクトを支えています。
- Q. SESの業種は何ですか?
- 日本標準産業分類では「情報通信業」の「受託開発ソフトウェア業(3911)」が基本です。派遣の売上がいちばん多い会社は「労働者派遣業」になります。
- Q. SESの商流はなぜ深くなるのですか?
- 大きなプロジェクトでも、人手が多く要るのはピーク時だけだからです。元請けはピーク時の人手を社外から集め、その会社もさらに外から集めるため、段が重なります。
- Q. SESと派遣は同じですか?
- 違います。SESは客先がエンジニアに直接指示できず、派遣は客先が直接指示できます。派遣を事業として行うには国の許可が必要です。
- Q. SESと請負の違いは何ですか?
- SES(準委任)は決められた作業を行うことを約束し、請負は仕事の完成を約束します。どちらも、作業の指示を出すのは受けた側の会社です。
- Q. SES業界の今後はどうなりますか?
- IT人材の不足が続くため、SESへの需要は続くと見られます。一方で、取適法の施行など取引のルールは厳しくなり、商流の浅さと契約の正しさがより問われます。
- Q. 新任のSES営業が最初に覚えることは?
- 「エンド・元請け・一次請け・BP」の立場と、「商流」「準委任」「精算幅」の3つの言葉です。立場と言葉がわかると、案件メールの大半が読めるようになります。
まとめ
SES業界は、エンジニアの技術や作業を現場に提供する会社の集まり。業種は「情報通信業」
登場するのはエンド・元請け・一次請け以下・BPの4つの立場
お金は上から下へ、各社の取り分を引いて流れる。案件情報は下へ、人材情報は上へ流れる
商流が深くなるのは、人手が要るのがピーク時だけだから。公取委の調査では元請40.4%・中間下請38.2%・最終下請21.3%
営業が守るべきルールは、指揮命令・再委託・二重派遣の禁止。支払いは2026年1月から取適法
今後は人手不足が続く一方、ルールは厳しくなる。自社が商流で果たす役割を言葉にしておく
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日
参考資料(2026年9月28日確認)
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書について」(2022年6月29日)
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(本体PDF)」(2・8・14・26ページ)
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