SES業界の市場規模と推移|SES単独の統計がない理由と公的データで読む4つのポイント

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SESの市場規模とは?SES単独の公的な統計はない

SESの市場規模を直接示す、国の統計はありません。国が産業を分ける「日本標準産業分類」に、SESという区分がないからです。

市場規模とは、ある業界で1年間に動くお金(売上高の合計)の大きさのことです。SESとは、エンジニアの技術力を提供し、稼働時間などに応じて報酬を受け取る事業のことです。正式にはシステムエンジニアリングサービスと言います。

SESはどの分類に入るのか

日本標準産業分類では、SESの多くは「情報サービス業」の中に入ると考えられます。代表的なのが「受託開発ソフトウェア業」です。

受託開発ソフトウェア業とは、お客さまの委託を受けて、コンピュータのプログラムを作る事業所のことです。システム開発業や、システムインテグレーションサービス業も含まれます。

ただし、SESの売上だけを取り出した数字は、この分類からは出せません。自社の業種の書き方は、SES事業の業種と業種番号の書き方で詳しく解説しています。

ネットで見かける「SES市場規模」の数字の正体

ネットの記事には、「SES市場は〇兆円」という数字がよく出てきます。多くは、情報サービス業全体の数字や、民間の調査会社の推計です。

民間の推計が悪いわけではありません。ただし、どこまでをSESに含めたかが記事ごとに違います。数字を使うときは、次の4点を必ず確かめましょう。

  1. 出典はどこか(国の統計か、民間の推計か)

  2. 何年の数字か

  3. どこまでを数えているか(情報サービス業全体か、IT人材の派遣・SESだけか)

  4. 金額は売上高か、それ以外の指標か

ポイント1:情報サービス業の売上高は2024年に約17.9兆円

経済産業省の「特定サービス産業動態統計」によると、2024年の情報サービス業の売上高は約17.9兆円でした。前の年と比べて5.5%増えています。

特定サービス産業動態統計とは、経済産業省が毎月集めている、サービス業の売上高などの統計のことです。情報サービス業では、業界の年間売上高のおおむね7割をカバーする、売上の大きい企業を調べています。

業務の種類別に見た2024年の売上高

業務の種類売上高前年比全体に占める割合
ソフトウェア開発・プログラム作成(計)約12.96兆円5.9%増約72%
└ 受注ソフトウェア約11.04兆円7.8%増約62%
└ 受注のうちシステムインテグレーション約7.32兆円9.7%増約41%
└ ソフトウェアプロダクト約1.92兆円4.2%減約11%
システム等管理運営受託約2.24兆円3.9%増約12%
計算事務等情報処理約1.24兆円7.0%増約7%
合計約17.92兆円5.5%増100%

※ 割合は、表の売上高から計算した概数です。合計には表にない区分(データベースサービス・各種調査・その他)も含みます。

受注ソフトウェアとは、お客さまの注文を受けて、ソフトウェアを作る仕事のことです。システムインテグレーション(SI)とは、システムの企画から開発、導入までをまとめて請け負う仕事のことです。

情報サービス業の売上の約6割は、注文を受けてソフトウェアを作る受注ソフトウェアです。SESで人を出す現場の多くも、このような受注開発のプロジェクトです。

受注ソフトウェアの中でも、システムインテグレーションは前年比9.7%増と、全体より高い伸びでした。

ポイント2:前年比は2019年から6年続けてプラス

情報サービス業の売上高の前年比は、2019年から2024年まで6年続けてプラスでした。コロナ禍の2020年も、わずかながら増えています。

年集計された売上高前年比
2019年約12.06兆円4.0%増
2020年約12.91兆円0.2%増
2021年約14.16兆円2.4%増
2022年約16.00兆円3.8%増
2023年約16.99兆円6.8%増
2024年約17.92兆円5.5%増

※ 経済産業省の統計を、一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)がまとめた年別の表から作成しました。

2023年と2024年は、5%を超える伸びが続いています。DX(デジタル技術で仕事を変えること)への投資が続いていることが、背景の1つと考えられます。

2025年からは総務省の統計で追う

2025年1月分から、経済産業省の統計は総務省統計局の「サービス産業動態統計調査」に統合されました。2025年以降の動きは、総務省の統計で確認します。

2026年7月分の速報では、情報サービスを含む情報通信業の売上高が前年同月比6.4%増でした。前年同月を上回るのは52か月連続です。2026年9月時点でも、伸びは続いていると言えます。

ただし、総務省の統計は調べ方が違うため、2024年までの金額とそのまま並べて比べることはできません。

ポイント3:年ごとの金額を引き算してはいけない

年ごとの売上高の金額を、そのまま比べて「〇兆円増えた」と言うのは誤りです。調査の対象となる企業が、途中で見直されているためです。

たとえば、2020年から2021年の金額は約1.25兆円、率にして約10%増えています。ところが、統計の前年比は2.4%増です。金額の差の多くは、市場の成長ではなく、調べる企業が増えたことによる段差だと考えられます。

正しい読み方は「前年比」を見ること

前年比とは、同じ条件で集めた数字を、1年前と比べた伸び率のことです。調査の対象が変わっても、比べる相手を合わせているので、市場の伸びを正しく表します。

市場の伸びは、前年比で伝えましょう。たとえば「情報サービス業の売上高は、2024年に前年比5.5%増えた」と言います。

ポイント4:統計の数字には3つの限界がある

情報サービス業の統計は信頼できるデータですが、SESの市場を読むには3つの限界があります。限界を知っておくと、数字の使い方を間違えません。

1. SESの売上だけは分けられない
SESは、受注ソフトウェアやシステム等管理運営受託などの区分に混ざっていると考えられます。SESだけの伸びは、この統計ではわかりません。

2. 大きい会社が中心
調査の対象は、売上の大きい企業が中心です。小さなSES企業の動きは、数字に表れにくくなります。大手の売上規模は大手SIer一覧と売上ランキングで確認できます。

3. 同じお金が何度も数えられることがある
SESでは、エンド(発注元)から元請け、一次請け、二次請けへと仕事が流れます。各社がそれぞれ売上を計上すると、同じ仕事のお金が重ねて数えられることがあります。

3つ目の点は、SES業界の多重下請構造と関係しています。多重下請構造とは、1つの仕事が何社もの会社を通って下へ流れていくしくみのことです。

公正取引委員会は2022年6月、ソフトウェア業の約2万1,000社を対象にした実態調査の報告書を公表しました。報告書は、多重下請構造の中で、買いたたきなどの問題が起きていることへの懸念を示しています。

市場が伸びても、自社が伸びるとは限らない

情報サービス業全体が伸びていても、すべてのSES企業の売上が伸びるわけではありません。商流のどこにいるかで、受け取れるお金が大きく変わるからです。

商流とは、仕事がエンドからいくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。商流が深い(下の方にいる)ほど、途中の会社の取り分が引かれ、単価が下がります。

商流の位置市場の伸びの受け取りやすさ営業のポイント
エンド・元請けに近い受け取りやすい直接の取引を増やす
一次請け比較的受け取りやすい元請けとの関係を深める
二次請け以降受け取りにくい商流を上げる取り組みが必要

商流と単価の関係は、SESの一次請け・二次請けの違いと商流を上げる方法で詳しく説明しています。職種ごとの月額の目安は、SESの単価相場で確認できます。

市場規模の数字を営業トークに使うコツ

市場規模の数字は、「市場が伸びている」という事実を短く伝えるときに使うのが一番安全です。予測や推計を、確かな事実のように話すのは避けましょう。

使ってよい言い方・避けたい言い方

言い方評価理由
情報サービス業の売上高は2024年に前年比5.5%増でした〇出典と年がはっきりしている
IT業界は6年続けて売上が伸びています(経産省の統計)〇前年比の事実にもとづく
SES市場は〇兆円で、毎年〇兆円ずつ増えています×SES単独の統計がなく、金額の差は段差を含む
今後もSES市場は必ず伸び続けます×将来の断定はできない

提案の場面での使い方の例

たとえば、お客さまに増員を提案するときは、次のように話せます。数字は根拠として添えるだけにし、話の中心はお客さまの課題に置きます。

例文・テンプレート
情報サービス業の売上高は、経済産業省の統計で2024年に前年比5.5%増えています。
開発案件が増えている分、経験のあるエンジニアは早く決まりやすい状況です。
今回の増員は、開始の1か月前には候補をお出しできるよう、今から動かせてください。

自分で市場データを追う方法

市場の動きは、公的な統計を定期的に見ることで、無料で追いかけられます。次の手順で習慣にしましょう。

  1. 総務省統計局の「サービス産業動態統計調査」のページを開く:毎月、最新の結果が公表されます。

  2. 情報通信業・情報サービス業の「前年同月比」を見る:金額ではなく、伸び率を記録します。

  3. Excelに月ごとの伸び率を書き足す:3か月ほど続けると、伸びが強まっているか弱まっているかがわかります。

  4. 業務の種類別の動きも見る:受注ソフトウェアとシステム等管理運営受託の伸びを、とくに気にかけます。

  5. 自社の数字と並べる:自社の案件数や稼働人数の伸びと比べ、市場より伸びているかを確かめます。

伸び率が下がり始めたときは、案件が減る前ぶれかもしれません。早めに取引先を増やすなどの手を打てます。

チョータツで「自社のまわりの市場」を見る

統計でわかるのは業界全体の動きです。自社の営業に直接効くのは、取引先の間で「今どんな案件・人材が動いているか」という情報です。

自分で追う場合は、BPから届く案件メール・人材メールを読み、Excelにまとめることになります。取引先が増えるほど、この作業は重くなります。

チョータツでできること

チョータツとは、SES営業の案件・人材を管理・共有するためのツールのことです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。

  • 自社の案件・人材の情報を管理・共有できる(AIが入力を手伝う)

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる

  • パートナーへのメール配信機能がある

知りたいこと自分でやる場合チョータツを使う場合
業界全体の伸び経産省の統計を毎月確認同じく統計で確認する
取引先で動いている案件メールを読んでExcelに転記連携先の営業中案件がデータベースになる
取引先で動いている人材メールを読んでExcelに転記連携先の営業中人材がデータベースになる

業界全体の数字は統計で、自社のまわりの動きはチョータツで。2つを組み合わせると、市場の変化に早く気づけます。

よくある質問

Q. SESの市場規模はどれくらいですか?
SESだけの公的な統計はありません。一番近い情報サービス業の売上高は、2024年に約17.9兆円でした(経済産業省「特定サービス産業動態統計」)。
Q. SES業界の市場規模は伸びていますか?
情報サービス業の売上高の前年比は、2019年から2024年まで6年続けてプラスです。2026年7月も、情報通信業の売上高は前年同月比6.4%増でした(総務省、速報)。
Q. SES事業の市場規模を調べるには、どの統計を見ればいいですか?
2024年までは経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」を見ます。2025年からは総務省統計局の「サービス産業動態統計調査」で、毎月の売上高と前年同月比が公表されています。
Q. SES市場とは、どこまでを指すのですか?
決まった定義はありません。一般には、エンジニアの技術力を提供するSES契約の取引全体を指します。国の統計では、情報サービス業の中に含まれると考えられます。
Q. ネットの「SES市場規模〇兆円」は信用できますか?
出典・年・数えている範囲を確認してから使いましょう。情報サービス業全体の数字をSESの数字として紹介している記事もあります。

まとめ

  • SESだけの市場規模を示す公的な統計はない。国の分類にSESの区分がないため

  • 近いデータは情報サービス業の売上高で、2024年は約17.9兆円、前年比5.5%増

  • 前年比は2019年から6年続けてプラス。2025年からは総務省の統計で追い、2026年7月も増加

  • 年ごとの金額の引き算は誤り。調査対象の見直しによる段差を含むので、前年比で読む

  • 市場が伸びても、商流が深いと恩恵を受けにくい。商流を上げる取り組みとセットで考える

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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