JISAのDI調査で見る情報サービス業の景況|SES営業が営業計画と単価交渉に使う5ステップ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
JISAのDI調査とは?
JISA-DI調査とは、業界団体のJISAが主要な会員企業に「この先3か月の売上」と「今の人手」を聞いた調査です。結果は3か月ごとに公表されます。SES営業にとっては、業界の景気の向きを早めに知る道具になります。
JISAとは、一般社団法人情報サービス産業協会のことです。システム開発やIT運用を行う企業の業界団体で、SIer(システム開発をまとめて請け負う会社)の多くが会員です。
DIとは、「良くなる」と答えた割合から「悪くなる」と答えた割合を引いた数字のことです。英語のDiffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略で、日銀の短観などでも使われています。プラスが大きいほど「良くなる」と考える会社が多いことを表します。
JISA-DI調査の2つの指標
JISA-DI調査には、2つの指標があります。どちらも単位は「%ポイント」です。
| 指標 | 計算のしかた | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 売上高予測DI | 「増加」と答えた割合 −「減少」と答えた割合 | 今後3か月の売上が、今の3か月より増えそうか |
| 雇用判断DI | 「不足」と答えた割合 −「過剰」と答えた割合 | 今、従業員が足りないと感じているか |
たとえば100社中40社が「増加」、5社が「減少」と答えると、売上高予測DIは35ポイントです。残りの55社が「横ばい」でも、計算には入りません。
JISAが出している4つの統計
JISAはDI調査のほかにも、統計を公表しています。役割が違うので、組み合わせて使います。
| 統計の名前 | 出る頻度 | わかること |
|---|---|---|
| JISA将来見通し・雇用判断DI調査 | 3か月ごと | 3か月先の売上見通し、人手の不足感 |
| 情報サービス産業動向調査 | 毎月 | 業界全体の売上の前年比(総務省の統計をJISAがまとめたもの) |
| 情報サービス産業 基本統計調査 | 年1回 | 会員企業の売上・利益・外注費・給与などの実績 |
| 賃金改定・採用計画アンケート | 年1回 | 賃上げ率、賞与、新卒採用の計画 |
ここでは、景気を先読みするための読み方に絞って解説します。業界全体の大きさはSES業界の市場規模と推移|公的データで見る4つのポイントでまとめています。足元の数字の追い方はIT業界の現状と市場動向2026|SES営業が見る4つの数字で解説しています。
最新のJISA-DI調査(2026年6月期)の結果
2026年6月末時点の調査では、7〜9月期の売上高予測DIが33.3ポイント、雇用判断DIが59.3ポイントでした。公表日は2026年7月30日です。売上の見通しは前の期から持ち直し、人手不足はやや和らいだものの高いままです。
売上高予測DIの推移(売上全体)
直近5期の売上高予測DIは次のとおりです。見出しの「期」は、見通しの対象になる3か月を指します。
| 見通しの対象期間 | 増加 | 減少 | DI |
|---|---|---|---|
| 2025年7〜9月期 | 40.0% | 0.0% | 40.0 |
| 2025年10〜12月期 | 39.2% | 2.0% | 37.3 |
| 2026年1〜3月期 | 52.0% | 2.0% | 50.0 |
| 2026年4〜6月期 | 29.4% | 15.7% | 13.7 |
| 2026年7〜9月期 | 35.2% | 1.9% | 33.3 |
2026年4〜6月期は、「減少」が15.7%まで増えてDIが13.7に下がりました。7〜9月期は「減少」が1.9%に戻り、DIも33.3まで回復しています。
読み方のポイント:JISAの資料は、4〜6月期に下がった理由までは説明していません。1期だけの落ち込みで「景気が悪くなった」と決めつけず、次の期で戻るかを見ることが大切です。
仕事の種類別:どの仕事の案件が増えそうか
主な仕事の種類別に見ると、SES案件に近い「受注ソフトウェア」のDIが大きく戻りました。
| 仕事の種類 | 2026年4〜6月期 | 2026年7〜9月期 | 動き |
|---|---|---|---|
| 受注ソフトウェア(受託開発) | 4.4 | 26.5 | 大きく回復 |
| ソフトウェアプロダクト(パッケージなど) | 2.9 | 30.8 | 大きく回復 |
| システム等管理運営受託(運用・保守) | 5.6 | 9.1 | ほぼ横ばい |
| セキュリティサービス | 28.0 | 26.1 | 高い水準を維持 |
受注ソフトウェアとは、お客さんの注文を受けて作るシステム開発のことです。SESの開発案件の多くは、この仕事の一部として発注されます。受注ソフトウェアのDIが上がると、開発要員の募集も増えやすくなります。
発注する業種別:どの業界の案件が増えそうか
発注元の業種別では、製造業・電気ガス業・情報通信業のDIが30ポイントを超えました。
| 発注元の業種 | 2026年4〜6月期 | 2026年7〜9月期 | 動き |
|---|---|---|---|
| 製造業 | 16.7 | 34.9 | 大きく上昇 |
| 電気・ガス業 | 10.0 | 35.3 | 大きく上昇 |
| 情報通信業 | 25.0 | 31.1 | 上昇 |
| 金融・保険業 | 25.0 | 21.4 | ほぼ前期並み |
| 官公庁・団体 | ▲5.3 | 12.5 | マイナスからプラスへ |
| 建設・不動産業 | 36.0 | 31.0 | 高い水準を維持 |
この表は、営業先の業界を選ぶときに役立ちます。たとえば製造業のDIが上がった期は、製造業向けの開発案件を多く持つ元請けへの連絡を増やします。大手SIerと新しく取引するときの流れはSIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目で解説しています。
雇用判断DI:人手不足は続いている
雇用判断DIは、2026年6月末で59.3ポイントでした。2026年3月末の68.6ポイントから下がりましたが、高い水準です。
| 調査時点 | 不足 | 適正 | DI(過剰は各期0%) |
|---|---|---|---|
| 2025年6月末 | 63.6% | 36.4% | 63.6 |
| 2025年9月末 | 64.7% | 35.3% | 64.7 |
| 2025年12月末 | 68.0% | 32.0% | 68.0 |
| 2026年3月末 | 68.6% | 31.4% | 68.6 |
| 2026年6月末 | 59.3% | 40.7% | 59.3 |
5期続けて「過剰」と答えた会社は0%です。会員企業の6割近くが、まだ人が足りないと感じています。 SES営業から見ると、元請けやSIerが外部の人材を探し続ける状態が続いていると読めます。ITエンジニアの求人の数字はITエンジニアの有効求人倍率の推移|公的データで見る採用と営業の今で確認できます。
基本統計調査でわかる業界の「体格」
基本統計調査とは、JISAの正会員企業に売上・利益・外注費・給与などの実績を聞く年1回の調査です。DI調査が「この先の向き」を示すのに対し、基本統計調査は業界の今の体格を示します。
最新の2025年版は、2026年4月30日にJISAのサイトに掲載されました。2024年度(2024年4月〜2025年3月に終わった決算)の数字です。
| 項目 | 2025年版の数字 | SES営業にとっての意味 |
|---|---|---|
| 回答企業 | 468社中300社(回答率64.1%) | 大手・中堅のSIerが中心 |
| 売上高成長率 | 2024年度5.08%、2025年度見込み6.68% | 発注元の売上はまだ伸びる見込み |
| 売上高外注費率 | 加重平均33.54%、中央値29.01% | 売上の約3割を外部に発注している |
| 売上高営業利益率 | 10.79% | 発注元には利益の余裕がある |
外注費率とは、売上のうち、ほかの会社に仕事を頼んだ費用の割合のことです。SES企業がSIerから受け取る代金は、SIerから見ると外注費になります。外注費率33.54%は、会員企業が売上の約3割を外部の会社に頼んでいることを表します。
基本統計調査の報告書は、JISAのサイトで公開されています。2026年版は2026年9月時点で回答を集めている段階です。結果は2027年1月末ごろに会員へ届く予定と案内されています。
月次の売上統計で「答え合わせ」をする
DIは「見通し」なので、実際の売上と合っているかを月次の統計で確かめます。使うのは、総務省のサービス産業動態統計です。JISAはこれを「情報サービス産業動向調査」として毎月まとめています。
サービス産業動態統計とは、総務省統計局がサービス業の売上や働く人の数を毎月調べる統計のことです。2025年1月分から、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査などと統合されました。
2026年7月分(速報)の情報サービス業の数字は次のとおりです。
| 項目 | 2026年7月分(速報) | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆9,453億円 | 8.2%増 |
| 事業従事者 | 147万5,600人 | 3.4%増 |
売上高の前年同月比は、52か月連続のプラスです。DIが示す「売上は増える」という見通しと、実際の売上の動きはそろっています。
読み方のポイント:月次の売上は、3月・6月・9月・12月に大きくなります。2026年3月分は4兆8,408億円でした。決算期末に検収(納品物の確認)が集中するためです。月ごとの金額を並べず、前年同月比で比べるようにしましょう。
賃上げ・採用のデータは単価交渉の裏付けになる
JISAの「賃金改定・採用計画アンケート」も、単価交渉の材料になります。2026年度の結果は2026年5月28日に公表されました。
| 項目 | 2026年度の結果 |
|---|---|
| 賃上げ率(確定した55社の平均) | 4.22%(前年は4.55%) |
| 2026年4月の新卒採用の達成率 | 89.2% |
| 2027年4月の採用予定数 | 1社平均47.5名 |
回答は456社中80社です。大手でも新卒採用は計画の約9割しか達成できていないことがわかります。人件費が上がり、人も集まりにくい状態です。発注元に単価の見直しをお願いするときの、客観的な裏付けとして使えます。
DIをSES営業の計画に使う5ステップ
DIは「見て終わり」にせず、3か月ごとの営業計画に組み込むと役に立ちます。次の5ステップで進めます。
公表を確認する:JISAの統計データのページで、最新のDI調査を開きます。3か月ごとに更新されます。
3つの数字をメモする:売上全体のDI、受注ソフトウェアのDI、雇用判断DIを、前の期と並べて書き出します。
増える業種を選ぶ:発注元の業種別で、DIが上がった業種を2つ選びます。その業種に強い元請けやSIerを、次の3か月の重点営業先にします。
月次の売上で答え合わせをする:サービス産業動態統計の前年同月比を毎月確認します。DIと逆の動きが2か月続いたら、計画を見直します。
自社の数字と比べる:自社の問い合わせ件数・提案数・成約数の前年比を並べます。業界が伸びているのに自社が伸びていない場合は、営業のやり方に課題があります。
DIの状態別:営業の打ち手の目安
DIの組み合わせごとに、営業の打ち手の目安をまとめました。あくまで判断の出発点です。
| 売上高予測DI | 雇用判断DI | 業界の状態 | 営業の打ち手 |
|---|---|---|---|
| 高い(30以上) | 高い(50以上) | 案件が多く人が足りない | 単価の見直しを相談する。BPの人材を集める |
| 高い | 下がってきた | 案件は多いが採用が進んだ | 提案のスピードで勝負する |
| 低い(10以下) | 高い | 案件は減るが人は足りない | 既存の現場の延長を固める |
| 低い | 下がってきた | 案件も人の需要も減る | 待機に備え、案件の仕入れ先を増やす |
2026年6月期は、1行目の「案件が多く人が足りない」状態に当たります。
単価交渉で使うときの例文
DIや賃上げ率は、交渉の「根拠の1つ」として添えます。相手を責める書き方は避け、相談の形にします。
件名:2026年10月以降のご契約条件についてのご相談
〇〇株式会社 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
10月からの契約更新にあたり、単価についてご相談させてください。情報サービス産業協会(JISA)の2026年度調査では、会員企業の賃上げ率は平均4.22%でした。
当社も2026年4月に賃上げを行い、担当エンジニアの人件費が上がっています。つきましては、月額単価を〇〇万円から〇〇万円へ見直すことをご検討いただけますでしょうか。
〇月〇日(〇)までに、一度お打ち合わせの時間をいただけますと幸いです。
交渉の時期や資料の準備は、SESの単価交渉のタイミング|更新の何か月前か・例文と資料5点で詳しく解説しています。価格転嫁のルールは、労務費の価格転嫁指針をSESの単価交渉で使う方法|改定条項の例つきも参考にしてください。協議に応じてもらえないときは取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法で考え方を整理しています。
JISAのデータを読むときの注意点4つ
JISAのデータは信頼できる一次情報ですが、読み方を間違えると判断を誤ります。次の4点に気をつけましょう。
1. 大手・中堅の見通しである
DI調査の対象は「JISA理事会社・主要会員企業」です。回答社数は資料に書かれていません。小さなSES企業の景況とは、ずれることがあります。
2. 「どれだけ増えるか」はわからない
DIは、増えると答えた会社の割合を表します。売上が何%増えるかは示しません。金額の伸びは、月次の売上統計で確認します。
3. 1期だけで判断しない
2026年4〜6月期のように、1期だけ大きく下がることがあります。2期以上続けて同じ向きに動いたときに、流れが変わったと考えます。
4. 基本統計調査は年ごとに回答企業が変わる
JISA自身も、入退会や回答率の変化で過去の数字と大きく違う場合があると注意しています。過去との比較は、目安として使いましょう。
景況データと自社の営業データをつなげる方法
業界のDIを生かすには、自社の案件・人材の動きを数字で追えることが前提です。業界が伸びているのか、自社だけが伸びているのかを比べられるからです。
自分でやる方法
Excelやスプレッドシートで、次の4つを毎月記録します。
受け取った案件の数(業種別・仕事の種類別)
提案した人材の数
決まった件数と、その平均単価
待機している人材の数
3か月ごとに、JISAのDIと並べて比べます。たとえば「製造業のDIが上がったのに、製造業の案件が増えていない」なら、製造業に強い取引先を増やす余地があります。記録の表はSESの案件・人材管理をExcelで無料で行う方法|テンプレ付きのテンプレートを使うと始めやすくなります。
ただし、案件メールや人材メールを1通ずつ手で集計すると、毎月かなりの時間がかかります。担当者によって分け方がばらつき、比べられなくなることもあります。
もっと楽にするなら:チョータツ
チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
案件・人材の情報を1か所で管理・共有できるので、月ごとの件数を追いやすくなります
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。自社だけでなく、取引先の動きも見えるようになります
パートナーへのメール配信機能があり、人手不足の時期に人材を集める連絡をまとめて送れます
AIが入力を手伝うので、情報を登録する手間を減らせます
業界のDIで「案件が増える」と読めたときに、すぐ提案できる人材の候補を持っておくことが大切です。チョータツは、その準備を支えます。
よくある質問
- Q. JISAのDI調査はいつ公表されますか?
- 3か月ごとに公表されます。最新の2026年6月期は、2026年7月30日に公表されました。JISAのサイトの「統計データ」のページで確認できます。
- Q. JISA-DIの売上高予測DI 33.3ポイントは高いのですか?
- プラスなので「増える」と見る会社が多い状態です。直近5期では40.0、37.3、50.0、13.7、33.3と動いています。5期の平均は約34.9なので、33.3は平均に近い水準です。
- Q. 雇用判断DIが下がったら、人手不足は終わったのですか?
- 終わっていません。2026年6月末の59.3ポイントは、6割近くの会社が「人が足りない」と答えた数字です。「過剰」と答えた会社は0%でした。
- Q. 情報サービス産業の基本統計調査は誰でも見られますか?
- 報告書のPDFはJISAのサイトで公開されています。2025年版は2026年4月30日に公開されました。回答企業向けの詳しい集計は、会員だけが受け取れます。
- Q. 情報サービス業の景気は2026年、良いのですか?
- 公的データでは良い状態が続いています。2026年7月の売上高は前年同月比8.2%増で、52か月連続のプラスです。DIでも、3か月先の売上は増えると見る会社が多数です。
- Q. DIの数字を小さなSES企業の営業に使っても意味がありますか?
- あります。SES企業の多くは、JISAの会員であるSIerから案件を受けます。発注元の見通しがわかれば、案件が増える業種や時期を先読みできます。
まとめ
JISA-DI調査とは、JISAが3か月ごとに出す「売上の見通し」と「人手の不足感」の調査
2026年6月期は、売上高予測DIが33.3ポイント、雇用判断DIが59.3ポイント
受注ソフトウェアのDIは4.4から26.5へ回復し、製造業・電気ガス業の見通しが上向いた
基本統計調査では、会員企業は売上の約3割(外注費率33.54%)を外部に発注している
月次の売上は52か月連続で前年を上回り、DIの見通しとそろっている
賃上げ率4.22%や採用達成率89.2%は、単価交渉の客観的な裏付けになる
DIは大手中心の見通しなので、月次統計と自社の数字で答え合わせをしてから使う
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)「統計データ」
JISA「JISA-DI調査、情報サービス業 売上の将来見通し/雇用判断(令和8年6月期)」(2026年7月30日)
JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」(2026年4月)
JISA「2026年度 賃金改定・採用計画アンケート結果」(2026年5月28日)
総務省統計局「サービス産業動態統計調査」