ITエンジニアの有効求人倍率の推移|厚労省データの調べ方と、採用・単価交渉での使い方
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
有効求人倍率とは?ITエンジニアの数字はどこにあるか
有効求人倍率とは、仕事を探している人1人に対して、求人が何件あるかを示す数字のことです。 計算式は「有効求人数 ÷ 有効求職者数」です。1倍より大きければ人手が足りず、1倍より小さければ仕事が足りない状態を表します。
有効求人数とは、その月にハローワークで募集中の求人の合計のことです。 前の月から続いている求人と、その月に新しく出た求人を足した数です。有効求職者数も同じ考え方で、ハローワークで仕事を探している人の合計です。
ITエンジニアの数字は、厚生労働省が毎月出す「一般職業紹介状況」に載っています。一般職業紹介状況とは、全国のハローワークの求人・求職・就職の件数をまとめた公的な統計のことです。 職業別の表では、ITエンジニアは「情報処理・通信技術者」という区分に入ります。
| 用語 | 意味 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者 | システム開発やネットワークなどの技術者の区分 | ITエンジニアの数字として使う |
| 常用 | 雇用期間が4か月以上か、期間の定めがない仕事 | 職業別の表はこの常用で集計されている |
| パート除く/パート含む | パートタイムの求人・求職を入れるかどうか | SESの正社員採用に近い「パート除く」を中心に見る |
| 原数値 | 季節による増減をならしていない、そのままの数字 | 職業別の表は原数値。同じ月どうしで比べる |
ニュースで「有効求人倍率1.18倍」と出るのは、全職業・パート含む・季節調整値の数字です(2026年7月分)。季節調整値とは、毎年決まった時期に起きる増減をならした数字のことです。 職業別の原数値とは作り方が違うので、横に並べて比べないようにしましょう。
ITエンジニアの有効求人倍率の推移(2021〜2026年の7月分)
ITエンジニアの有効求人倍率は、2023年7月の1.67倍が一番高く、2026年7月は1.50倍まで下がりました。 それでも、全職業の倍率より0.3ポイント以上高い状態が続いています。
職業別の表は原数値なので、季節の影響を受けます。そのため、毎年同じ「7月分」だけを並べました。数字はすべて厚生労働省「一般職業紹介状況」の参考統計表から取っています。
| 年月 | 情報処理・通信技術者(パート除く) | 情報処理・通信技術者(パート含む) | 全職業(パート除く) |
|---|---|---|---|
| 2021年7月 | 1.38倍 | 1.30倍 | 1.06倍 |
| 2022年7月 | 1.61倍 | 1.48倍 | 1.20倍 |
| 2023年7月 | 1.67倍 | 1.54倍 | 1.22倍 |
| 2024年7月 | 1.64倍 | 1.49倍 | 1.19倍 |
| 2025年7月 | 1.63倍 | 1.47倍 | 1.19倍 |
| 2026年7月 | 1.50倍 | 1.34倍 | 1.16倍 |
※いずれも常用・原数値。2026年9月30日時点で公表済みの数字を確認しました。
流れを3つの時期に分けて読む
2021年→2022年:大きく上がった時期。 パート除くで1.38倍から1.61倍へ上がりました。コロナ禍で止まっていた採用が戻った時期です。
2022年→2025年:高いまま横ばいの時期。 1.6倍台が4年続きました。人を集めにくい状態が続いたといえます。
2025年→2026年:下がり始めた時期。 1.63倍から1.50倍へ、1年で0.13ポイント下がりました。
2026年に下がった理由は「求職者の増加」
2026年7月の中身を見ると、倍率が下がった理由がわかります。前の年の同じ月と比べると、次のように動いています(パート除く)。
| 項目 | 2025年7月 | 2026年7月 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 有効求人数 | 53,330件 | 51,741件 | 3.0%減 |
| 有効求職者数 | 32,699人 | 34,555人 | 5.7%増 |
| 有効求人倍率 | 1.63倍 | 1.50倍 | 0.13ポイント低下 |
求人は少し減っただけです。大きいのは、ハローワークでITの仕事を探す人が5.7%増えたことです。つまり「ITエンジニアの仕事が急になくなった」わけではありません。仕事を探す人が増えた結果、倍率が下がったと読むのが正確です。
半年前(2025年12月)との比較
2025年12月の数字も見ておきます。情報処理・通信技術者(パート除く)は1.65倍で、前年同月より0.09ポイント低い数字でした。2025年の後半から下がる流れが始まり、2026年7月の1.50倍で、その流れがはっきりしてきたといえます。
数字を読むときの注意点4つ
有効求人倍率は、ハローワークだけの数字です。 ITエンジニアの転職は、民間の転職サイト・人材紹介・スカウトが中心です。そのため、この倍率だけで「IT人材の採用市場全体」を言い切ることはできません。
営業資料や顧客への説明で使うときは、次の4点を守りましょう。
「ハローワーク経由の公的統計」と必ず書く。 出典と区分(情報処理・通信技術者、常用、パート除く)までセットで示します。
同じ月どうしで比べる。 職業別の表は原数値です。7月と12月を比べると、季節の差まで混ざってしまいます。
民間サービスの「転職求人倍率」と混ぜない。 民間の数字は、集計の仕方も対象も違います。同じ表に並べると誤解のもとになります。
全職業との差もあわせて示す。 2026年7月の倍率は下がりましたが、全職業の1.16倍よりまだ高い水準です。「下がった」だけを切り取ると、話が逆に伝わります。
ITエンジニアの有効求人倍率を自分で調べる6ステップ
最新の数字は、厚生労働省のサイトから10分ほどで自分で確認できます。 公表は原則として翌月末ごろです。たとえば2026年7月分は、2026年8月28日に公表されました。
厚生労働省の「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」のページを開く
「公表資料一覧」から、調べたい月(例:令和8年7月分)のページを開く
添付資料の「参考統計表」のPDFを開く
「参考統計表6」(パート含む)か「参考統計表7-2」(パート除く)を開く。「情報処理・通信技術者」の行の右端が有効求人倍率
前年との差は、「参考統計表7-1」(パート含む)か「8-1」(パート除く)の同じ行で見る
同じ手順で、去年・おととしの同じ月の数字も集め、表にまとめる
参考統計表とは、報道発表資料に付いている詳しい数字の表のことです。 職業別の有効求人数・有効求職者数・倍率が、全国計で載っています。
もっと長い期間を見たいときは、政府の統計サイト「e-Stat」の長期時系列表を使います。細かい職業ごとの倍率は、厚生労働省の職業情報サイト「job tag」でも確認できます。
調べた数字を残すときのメモの型
社内で共有するときは、次の型で1行ずつ残すと、あとで比べやすくなります。
2026年7月分/情報処理・通信技術者/常用・パート除く/原数値/有効求人倍率1.50倍(前年同月差−0.13)/全職業1.16倍/出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」参考統計表7-2・8-1(2026年8月28日公表)
毎月末に1行足すだけで、自社専用の「IT人材の需給メモ」ができます。
SES営業での使い方①:人材確保の計画を立てる
有効求人倍率は、「今の採用のしやすさ」を社内で共有する物差しとして使えます。 1.5倍ということは、ハローワークで仕事を探すITエンジニア1人に、求人が1.5件ある状態です。自社の求人が選ばれにくい状況は、まだ続いています。
営業責任者は、倍率を見て次のように動き方を決められます。
| 倍率の動き | 読み方 | 営業・採用での打ち手 |
|---|---|---|
| 高いまま横ばい | 人が集まりにくい状態が続く | 採用だけに頼らず、BPの人材やフリーランスで提案の幅を保つ |
| 下がり始めた | 仕事を探す人が増えている | 採用の募集を強めるタイミング。応募の増減も合わせて見る |
| 全職業との差が縮む | IT職種の特別な人手不足が和らいでいる | 顧客の「人は余っている」という話に、数字で答える準備をする |
2026年は「下がり始めた」段階です。ただし、全職業より高い状態は変わっていません。採用の計画は「少し集めやすくなったが、楽ではない」という前提で立てるのが現実的です。
採用が追いつかず待機と空き案件が同時に出るときは、SESの待機エンジニアが複数いるときの営業の優先順位|判断表つきの考え方で提案の順番を決めます。
採用の進め方はSESのエンジニア採用が難しい理由5つ|職種別の対策と面接のコツで解説しています。手法ごとの費用はSESのエンジニア採用単価の平均|手法別の費用と採用担当の役割が参考になります。
SES営業での使い方②:単価交渉の根拠にする
有効求人倍率は、「人件費が上がる理由」を顧客に説明するための公的な根拠になります。 単価交渉では、自社の都合だけを話しても通りにくいものです。国の統計を添えると、話が客観的になります。
交渉資料には、倍率を1つの材料として入れます。倍率だけで押すのではなく、エンジニアの給与の見直しや、担当業務の広がりとセットで伝えましょう。
交渉メールの例文(2026年10月の更新時期を想定)
件名:【ご相談】2026年11月以降のご契約単価について
〇〇株式会社 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
11月からのご契約更新にあたり、単価のご相談をさせてください。厚生労働省の「一般職業紹介状況」では、2026年7月の情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.50倍でした。全職業の1.16倍を上回り、IT技術者の確保が難しい状況が続いています。
弊社でも、担当エンジニアの処遇を見直し、継続してご支援できる体制を整えています。つきましては、11月以降の単価を月額〇〇万円とさせていただけないでしょうか。
10月9日(金)までに、一度お打ち合わせのお時間をいただけますと幸いです。
顧客に「倍率が下がっている」と言われたときの答え方
2026年は倍率が下がっているため、顧客から指摘されることもあります。そのときは、次の2点で答えます。
「下がった主な理由は、仕事を探す人の増加です。求人の数は前年から3.0%減にとどまっています」
「それでも1.50倍で、全職業の1.16倍より高い水準です。経験のある技術者の確保は、引き続き難しい状況です」
交渉の時期と資料はSESの単価交渉のタイミング|更新の何か月前か・例文と資料5点で解説しています。賃上げ率などほかの材料はJISAのDI調査で見る情報サービス業の景況|SES営業での読み方で紹介しています。
人が足りないときに、自分でできることとツールで楽にする方法
採用で人が集まらないときは、BPの人材とフリーランスの2つで提案の幅を広げるのが基本です。 自社の社員だけで案件を埋めようとすると、倍率が高い時期ほど機会を逃します。
まずは自分でやる方法
付き合いのあるBPに、営業中の人材情報をメールで送ってもらうよう頼む
届いた人材メールを、スキル・単価・稼働開始日ごとにExcelで整理する
案件が入ったら、Excelから条件の合う人をすぐ探して提案する
この方法は、BPが増えるほどメールの量も増えます。整理が追いつかず、条件の合う人を見落としやすくなります。
もっと楽にするなら:チョータツとxhours
チョータツは、SES営業の案件・人材を管理・共有するツールです。他社と連携すると、相手の営業中人材・営業中案件をデータベースとして見られます。人材メールをExcelに写す手間が減り、提案までが早くなります。AIが入力を手伝う機能もあります。
届いたメールの整理が負担なら、チョータツメールAIも使えます。届いたメールをAIが処理し、案件メールと人材メールに切り分けます。転送設定で取り込めて、案件・人材以外のメールはデータに残りません。
BPの人材だけでは足りないときは、DrivenXのxhours(エックスアワーズ)が使えます。ITフリーランスに直接スカウトを送れます。数千名のフリーランスのデータベースから探せます。フリーランスとの契約の進め方はフリーランスエンジニアの採用方法|探し方5つと契約前の確認点にまとめています。
ほかの公的データとあわせて読む
有効求人倍率は「今」の需給を見る数字です。「これから」を見るには、別の公的データと組み合わせます。 1つの数字だけで判断しないことが、説得力のある説明につながります。
| 知りたいこと | 使うデータ | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 今の採用のしやすさ | 一般職業紹介状況(有効求人倍率) | 本ページ |
| 将来のIT人材の不足 | 経済産業省の2030年までの試算 | IT人材不足の2030年予測とデータ |
| 業界の景気の先行き | JISA-DI調査 | JISAのDI調査の記事(上で紹介) |
| 案件の中身の変化 | 募集要件・リモート比率など | SESの案件動向2026 |
よくある質問
- Q. ITエンジニアの有効求人倍率は今いくつですか?
- 2026年7月は、情報処理・通信技術者(常用・パート除く)で1.50倍です。パートを含めると1.34倍です。どちらも厚生労働省「一般職業紹介状況」の原数値です。
- Q. ITエンジニアの有効求人倍率は下がっていますか?
- 下がっています。パート除くで2023年7月の1.67倍が最も高く、2026年7月は1.50倍です。主な理由は、仕事を探す人が前年より5.7%増えたことです。
- Q. ニュースの「有効求人倍率1.18倍」とITの数字は、なぜ違うのですか?
- ニュースの数字は、全職業・パート含む・季節調整値です。職業別の数字は原数値で作り方が違います。比べるときは、同じ表・同じ区分の数字を使いましょう。
- Q. 民間の転職サイトが出す求人倍率とは何が違いますか?
- 集める元のデータが違います。厚生労働省の数字はハローワーク経由だけです。民間の数字は、そのサービスに登録した求人と求職者で計算されます。混ぜずに、出典を分けて使いましょう。
- Q. 都道府県ごとのITエンジニアの倍率はわかりますか?
- 一般職業紹介状況の参考統計表の職業別の表は全国計です。地域の数字は、各都道府県の労働局の資料や、厚生労働省の職業情報サイト「job tag」で確認してください。
- Q. 単価交渉で有効求人倍率を使うときのコツは?
- 出典・区分・年月をはっきり書き、全職業の倍率と並べて示します。倍率だけで押さず、エンジニアの処遇の見直しなど自社の事情とセットで伝えると、納得してもらいやすくなります。
まとめ
ITエンジニア(情報処理・通信技術者)の有効求人倍率は、2026年7月で1.50倍(常用・パート除く)
2023年7月の1.67倍をピークに下がり始めた。主な理由は、仕事を探す人の増加
それでも全職業の1.16倍より高く、人を集めにくい状態は続いている
数字は厚生労働省「一般職業紹介状況」の参考統計表から、6ステップで自分で確認できる
ハローワークだけの数字なので、出典と区分を書き、民間の数字と混ぜない
採用計画の物差しと、単価交渉の公的な根拠の2つに使える
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
厚生労働省「職業安定業務統計 公表資料一覧」
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)について」(参考統計表)
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年12月分及び令和7年分)について」(参考統計表)
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年7月分)について」(参考統計表)
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年7月分)について」(参考統計表)
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年7月分)について」(参考統計表)
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年7月分)について」(参考統計表)
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年7月分)について」(参考統計表)
政府統計の総合窓口 e-Stat「職業安定業務統計 長期時系列表」
厚生労働省 職業情報提供サイト「job tag」