SESのメリット・デメリット7項目|発注企業から見た派遣・請負・出向との比較表と営業トーク例
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
SESとは?発注企業に説明するための基本
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、SES会社が雇うエンジニアの技術力を、客先に提供する契約の形のことです。契約の種類は、多くの場合「準委任契約」です。
準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた作業をきちんと行うことを約束する契約のことです。民法656条で、委任の決まりを事務の委託に当てはめる形で定められています。
発注企業にとってのポイントは、お金を払う対象が「成果物」ではなく「作業」だという点です。ここが派遣・請負・出向との違いを生み、メリットとデメリットの両方につながります。
発注企業から見たSESのメリット4つ
発注企業にとってのSESのメリットは、「人を雇わずに、必要な技術を必要な期間だけ使える」ことに集約されます。営業が説明しやすい4つに分けます。
メリット1:必要なスキルの人をすぐ確保できる
SESなら、採用よりずっと早くエンジニアに参加してもらえます。正社員の採用は、求人を出してから入社まで数か月かかることが珍しくありません。
SES会社は、自社の社員とパートナー会社の人材から候補を探して提案します。スキルシート(経歴と技術をまとめた書類)で絞り込み、面談を経て参画が決まります。
営業としては「来月から入れる人がいます」と、具体的な候補と時期で示すと説得力が出ます。
メリット2:雇用と労務管理の負担がない
SESのエンジニアを雇っているのはSES会社です。そのため、社会保険の手続き、給与計算、勤怠の管理、健康診断などはSES会社が行います。
発注企業は、採用費や教育費をかけずに済みます。プロジェクトが終われば契約を終えられるので、固定費を増やさずに体制を組めるのも利点です。
メリット3:派遣のような受け入れ期間の上限がない
労働者派遣には、派遣法の期間制限があります。同じ組織単位で同じ派遣社員を受け入れられるのは、原則3年までです。
SES(準委任契約)には、この期間の上限がありません。何年も続く保守・運用の案件でも、同じエンジニアに続けて入ってもらえます。ただし、実態が派遣になっていないことが前提です。
メリット4:仕様が固まる前から頼める
請負契約では、何を作るかを先に決め、完成品に対してお金を払います。仕様が決まっていないと、見積もりも契約もできません。
SESは作業に対してお金を払うので、要件定義の前や、仕様が変わり続ける開発でも頼めます。月の稼働時間に合わせて支払う精算幅(例:月140〜180時間の範囲なら同額)を使えば、稼働の増減にも対応できます。
発注企業から見たSESのデメリット3つ
SESのデメリットは、「作業を買う契約」であることの裏返しです。隠さずに伝え、対策をセットで示すのが営業の腕の見せどころです。
デメリット1:客先の社員が直接指示できない
SES(準委任契約)では、エンジニアへの指示はSES会社が出します。客先の社員が「これをやって」と直接指示すると、実態は派遣と同じになります。
契約が準委任なのに、実態が派遣になっている状態を偽装請負といいます。偽装請負とは、請負や準委任の形をとりながら、実際には客先が直接指揮命令している違法な状態のことです。判断は契約書の名前ではなく現場の実態で行われます。
対策:SES会社の業務責任者を決め、指示はその人を通す流れにします。依頼は作業範囲を書いた書面やチケットで出す、と取り決めておきます。詳しくは偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策をご覧ください。
デメリット2:完成の責任はSES会社が負わない
準委任契約でSES会社が負うのは、善管注意義務です。善管注意義務とは、プロとして当然求められる注意を払って作業する義務のことです(民法644条)。
請負と違い、「システムを完成させる」責任まではありません。納期に間に合わなくても、きちんと作業していれば、原則として契約違反にはなりません。なお、2020年4月の改正民法で、成果に対して報酬を払う「成果完成型」の準委任(民法648条の2)も定められました。SESの多くは作業時間に対して払う形ですが、契約書でどちらの型かを確認しておきましょう。
対策:成果物の完成が大事な工程は、請負契約や受託開発で切り出す方法があります。作業報告書(月報・週報)で、何をしたかを見える形にするのも有効です。
デメリット3:ノウハウが社内に残りにくい
SESのエンジニアは、契約が終われば客先を離れます。仕組みの知識や作業の手順が、外の人の頭の中だけに残るおそれがあります。
また、商流が深い(間に入る会社が多い)と、客先の要望が正しく伝わりにくくなります。
対策:引き継ぎ資料の作成を作業範囲に入れる、客先の社員と一緒に作業する体制にする、などを提案します。商流については、SESの多重下請け構造とは?図解と問題点、何次請けが平均かも参考になります。
SES・派遣・請負・出向の違いを比較表で整理
4つの形の違いは、「誰が指示するか」「完成の責任があるか」「誰と雇用関係があるか」の3点で見分けられます。発注企業の立場で比べると、次のようになります。
表1:指示と責任の違い
| 比べる点 | SES(準委任) | 労働者派遣 | 請負 |
|---|---|---|---|
| 客先の社員が直接指示できるか | できない | できる | できない |
| 完成の責任 | なし(善管注意義務) | なし | あり |
| お金を払う対象 | 作業(時間・期間) | 労働時間 | 完成した成果物 |
| 受け入れ期間の上限 | なし | 原則3年(期間制限) | なし |
表2:雇用と許可の違い
| 比べる点 | SES(準委任) | 労働者派遣 | 在籍型出向 |
|---|---|---|---|
| 客先と雇用関係があるか | ない | ない | ある(出向元とも) |
| 事業の許可 | 不要 | 厚生労働大臣の許可が必要 | 許可の制度なし(業として行うのは禁止) |
| 客先が直接指示できるか | できない | できる | できる |
| 主な使われ方 | 開発・保守の技術支援 | 人手の確保 | グループ内の人事交流など |
客先には、次のように言い換えると伝わります。「指示を出したいなら派遣、完成品がほしいなら請負、技術と体制を任せたいならSES」です。詳しくはSESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目をご覧ください。
SESとアウトソーシングの違い
SESは、アウトソーシングの中に含まれる1つの形です。両者は「どちらか」ではなく、「大きな箱」と「その中の1つ」の関係にあります。
アウトソーシングとは、自社の仕事の一部を外の会社に任せることを広く指す言葉です。法律で決まった用語ではありません。IT分野のアウトソーシングには、次のような形があります。
SES(準委任):エンジニアの作業を提供してもらう
受託開発(請負):システムの完成までを任せる
派遣:人を受け入れ、自社で直接指示する
運用・保守の委託:決まった業務を丸ごと任せる(準委任や請負で契約)
客先が「アウトソーシングを検討している」と言ったときは、どの形を想定しているかを最初に確かめることが大切です。完成品がほしいのか、人手がほしいのかで、提案する契約が変わります。受託開発との売り分けは、SESと受託開発の違い|アウトソーシングの種類と営業の売り分け方で解説しています。
SESと出向の違い
SESと出向のいちばんの違いは、客先と雇用関係を結ぶかどうかです。SESでは客先と雇用関係を結ばず、在籍型出向では出向先とも雇用関係を結びます。
在籍型出向とは、元の会社(出向元)に籍を残したまま、出向先の会社とも雇用関係を結んで働く形のことです。出向先の指示で働くため、客先が直接指示できます。
注意したいのは、在籍型出向は法律上「労働者供給」にあたる点です。業として(くり返し、もうけのために)行うと、職業安定法44条に違反します。厚生労働省は、次の目的の出向なら、ふつうは業にあたらないと整理しています。雇用の維持・技術指導・能力開発・グループ内の人事交流です。
SES会社が売上のために客先へ「出向」の形で人を出し続けるのは、この目的にあたりにくいため避けましょう。客先から「出向で来てほしい」と言われたら、準委任か、許可を持つ会社との派遣契約を提案します。詳しくは出向と派遣の違いとは?在籍出向の条件とSESで使うときの注意点をご覧ください。
新規の客先に「なぜSESか」を説明する手順
新規の客先への説明は、ヒアリング → 比較 → デメリットと対策 → 次の一歩の順に進めます。この順なら押し売りに聞こえません。
困りごとを聞く:人が足りないのか、技術が足りないのか、期間はどのくらいかを確認する
契約の形を比べて見せる:比較表を使い、派遣・請負・SESのどれが合うかを一緒に考える
SESを勧める理由を2つに絞る:客先の困りごとに合うメリットだけを伝える
デメリットと対策を自分から話す:指示の出し方と、完成の責任の範囲を先に説明する
次の一歩を決める:候補者のスキルシート送付や、面談の日程を決める
初回商談で聞く項目は、SESの営業ヒアリング項目30|初回商談のヒアリングシート付きにまとめています。手順2〜4で見せる資料は、SESの会社紹介資料の作り方|BP・エンド向けの構成10枚を参考に準備します。
そのまま使える営業トーク例
トーク例は、客先の困りごとごとに使い分けます。どの場面でも、メリットの後にデメリットと対策を添えるのがコツです。
場面1:採用が間に合わない客先
「正社員の採用には数か月かかることが多いですが、SESなら候補が合えば来月から入っていただけます。雇用は弊社のままなので、社会保険や勤怠の管理も弊社で行います。ひとつだけ、指示は弊社の責任者を通していただく形になります。窓口を1人決めておけば、現場の負担はほとんど変わりません。」
場面2:派遣を使っていて3年の上限が気になる客先
「派遣は、同じ組織単位で同じ方に来ていただけるのが原則3年までです。SES(準委任)にはこの上限がありません。ただし、指示の出し方が派遣とは変わります。作業範囲を決めて、弊社の責任者経由でご依頼いただく形です。切り替える前に、今の業務の進め方を一緒に確認させてください。」
場面3:請負で頼みたいが仕様が決まっていない客先
「仕様が固まっていない段階だと、請負では見積もりが難しくなります。まずはSESで要件を整理する工程から入り、仕様が決まった部分を請負に切り出す方法もあります。SESでは完成の責任ではなく、作業をきちんと行う責任を負います。そのため、週報で進み具合を毎週お見せします。」
場面4:「SESは中抜きが多い」と言われたとき
「おっしゃる通り、間に入る会社が多いと単価が上がり、要望も伝わりにくくなります。弊社は〇次請けの位置で、エンジニアとは直接やりとりしています。商流を先に明示したうえで、ご提案します。」
中抜き批判への答え方は、SES業界の問題点と解決策|中抜き批判に営業が答える7つの視点も参考にしてください。
説明の前に確認したいチェックリスト
新規の客先にSESを提案する前に、次の7点を確認しておくと、契約後のトラブルを防げます。
客先の社員が、エンジニアに直接指示を出す働き方になっていないか
SES会社側の業務責任者(指示を受ける窓口)を決めたか
作業範囲と、完成の責任がないことを契約書に書いたか
精算幅(例:140〜180時間)と、超過・不足時の単価を決めたか
商流(何次請けか)と、再委託の可否を客先に伝えたか
作業報告書(週報・月報)の形式と提出日を決めたか
完成品が必要な工程は、請負で切り出すかを話し合ったか
たとえば、2026年11月2日(月)から参画する案件なら、10月中にこの7点を客先とすり合わせておくと安心です。契約の形ごとの確認点は、SESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目も使えます。
提案のスピードを上げるならチョータツ
SESのメリット「すぐ確保できる」を客先に信じてもらうには、実際に早く候補を出すことがいちばんの説得材料です。
自分でやる場合は、次の方法があります。
自社の待機中・終了予定のエンジニアを、Excelやスプレッドシートで一覧にする
パートナー会社から届く人材メールを、スキル別のフォルダに分けておく
案件ごとに、条件(スキル・単価・期間・勤務地)をまとめた表を作る
ただ、人材メールは毎日たくさん届くため、手作業での整理はすぐに追いつかなくなります。
チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。主に次のことができます。
| できること | 営業の場面での使い方 |
|---|---|
| 案件・人材の管理・共有 | 客先の条件に合う人を、社内ですぐに探せる |
| 他社との連携 | 他社の営業中の案件・人材をデータベース化できる |
| パートナーへのメール配信 | 案件情報をまとめてパートナーに送れる |
| AIによる入力の手伝い | 登録の手間を減らせる |
届いたメールを案件と人材に切り分けたい場合は、メール取り込み機能のチョータツメールAIも使えます。
よくある質問
- Q. SESのメリットは、発注企業とエンジニアで違いますか?
- 違います。発注企業にとってのメリットは、採用せずに必要な技術を必要な期間だけ使えることです。この記事では、営業が客先に説明するための発注企業側のメリットを扱っています。
- Q. SESとアウトソーシングは何が違いますか?
- アウトソーシングは外に仕事を任せること全体を指す言葉で、SESはその中の1つの形です。ほかに、受託開発(請負)や派遣、運用・保守の委託などがあります。
- Q. SESと出向の違いは何ですか?
- 客先と雇用関係を結ぶかどうかです。在籍型出向は出向先とも雇用関係を結び、出向先が直接指示できます。SESは客先と雇用関係を結ばず、客先は直接指示できません。
- Q. SESなら何年でも同じ人に来てもらえますか?
- 準委任契約には、派遣のような原則3年の期間制限はありません。ただし、客先が直接指示しているなど実態が派遣に近いと、偽装請負と判断されるおそれがあります。
- Q. 客先が「SESでも直接指示したい」と言ったらどうしますか?
- SES(準委任)のままでは受けられません。派遣の許可を持つ会社との派遣契約に切り替えるか、指示を自社の責任者経由にする体制を提案します。
- Q. SESのデメリットを客先に話すと、失注しませんか?
- 先に話すほうが信頼されます。指示の出し方や完成の責任は、契約後に必ず問題になる点です。対策とセットで伝えれば、「わかっている営業」として選ばれやすくなります。
まとめ
発注企業から見たSESのメリットは、すぐ確保できる・労務管理が不要・期間の上限がない・仕様前から頼める、の4つ
デメリットは、直接指示できない・完成の責任がない・ノウハウが残りにくい、の3つ。対策をセットで伝える
派遣とは指揮命令、請負とは完成の責任、出向とは雇用関係で見分ける
SESはアウトソーシングの1つの形。客先がどの形を想定しているかを先に確かめる
新規の客先には、ヒアリング → 比較 → デメリットと対策 → 次の一歩の順で説明する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(632条・644条・648条の2・656条)
e-Gov法令検索「労働者派遣法」(2条・5条・40条の2・40条の3)
e-Gov法令検索「職業安定法」(44条)
厚生労働省・都道府県労働局「派遣先の皆様へ 受入れ期間制限ルール」
厚生労働省「労働者派遣と在籍型出向との差異」
京都労働局「在籍型出向 “基本がわかる” ハンドブック」