SI事業とは?ビジネスモデルと7つの工程、SES事業との違い・SES人材が求められる工程を営業目線で解説
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
SI事業とは?意味を1文で
SI事業とは、顧客のシステムづくりを企画から保守までまとめて請け負う事業のことです。SIは「システムインテグレーション(System Integration)」の略です。インテグレーションは「組み合わせて1つにまとめる」という意味です。
SI事業を行う会社をSIer(エスアイヤー)と呼びます。SIerは、ソフトウェアの開発だけでなく、サーバーなどの機器やクラウドの選定も合わせて引き受けます。顧客が「全部まとめて任せたい」と頼める相手が、SIerです。
国の産業分類では、SI事業は「受託開発ソフトウェア業(番号3911)」に入ります。例として「システムインテグレーションサービス業」がはっきり書かれています。
SI業界とは
SI業界とは、SI事業を行う会社の集まりのことです。成り立ちによって、メーカー系・ユーザー系・独立系・外資系などに分かれます。
| 系統 | どんな会社か | SES営業から見た特徴 |
|---|---|---|
| メーカー系 | 電機メーカーなどから生まれた | 大規模案件が多く、商流が深くなりやすい |
| ユーザー系 | 銀行・商社などの情報部門が独立した | 親会社の案件が中心で、業界知識が問われる |
| 独立系 | 親会社を持たない | BP(取引先の会社)を多く使う会社が多い |
| 外資系 | 海外のIT企業の日本法人 | 自社製品の導入案件が中心 |
系統ごとの会社名は「メーカー系SIer一覧|ユーザー系・独立系・外資系と4系統の違い」にまとめています。
SI事業の市場の大きさ
SI事業は、情報サービス業の売上の約4割を占めます。経済産業省の特定サービス産業動態統計では、2024年11月の1か月で、情報サービス業の売上は約1兆3,068億円でした。そのうち「システムインテグレーション」は約5,080億円、構成比は38.9%です。
なお、この統計は2025年1月分から総務省の「サービス産業動態統計調査」に統合されました。2026年7月分(速報)の情報サービス業の売上高は約2兆9,453億円で、前年同月比8.2%増、52か月連続の増加です。統合後の統計は集計の範囲が違うため、2024年以前の数字とそのまま比べないようにします。
SES営業にとっては、案件の出どころの大部分がSI事業だということです。SIerの動きを知ることが、案件の予測につながります。
SI事業のビジネスモデル:3つの儲け方
SI事業の売上は、「開発の受注」「機器・ソフトの販売」「保守・運用の月額」の3つでできています。中心は開発の受注で、受け方には「一括請負」と「工程別の見積もり」があります。
| 儲け方 | 中身 | 売上の入り方 |
|---|---|---|
| 一括請負 | 要件定義から納品まで、1つの金額で受ける | 完成して検収されたら入る |
| 工程別の見積もり(多段階契約) | 工程ごとに契約を分けて受ける | 工程ごとに入る |
| 機器・ソフトの販売 | サーバーやパッケージソフトを仕入れて売る | 納品時に入る(1回きり) |
| 保守・運用 | 稼働後の問い合わせ対応や修正を受ける | 毎月入る(積み上がる) |
一括請負とは
一括請負とは、システムの完成を約束し、全体を1つの金額で受ける契約のことです。見積もりより早く作れれば利益が増えます。反対に、作業が膨らむと赤字になります。
工程別の見積もり(多段階契約)とは
多段階契約とは、要件定義・設計・開発などの工程ごとに、別々の契約を結ぶ方法のことです。最初は作るものがはっきりしないため、決まった工程から順に見積もります。
IPA(情報処理推進機構)が公開するモデル契約書でも、この考え方が示されています。要件定義は準委任、中身が決まった詳細設計〜結合テストは請負、とする整理が一般的です。
見積もりの中身と計算例
SIerの見積もりは、工数(人月)× 単価に、管理費と予備費を足す形が基本です。人月とは、1人が1か月働く作業量のことです。
計算例(例として置いた数字です)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 開発の工数 | 30人月 × 100万円 | 3,000万円 |
| 管理費(PMなど) | 3,000万円 × 10% | 300万円 |
| 予備費(リスク分) | 3,000万円 × 15% | 450万円 |
| 見積もり合計 | ― | 3,750万円 |
一括請負で受けると、作業が36人月に膨らんでも受け取るのは3,750万円のままです。増えた6人月(600万円分)は、予備費の450万円を超えるので赤字になります。
SIerが工程を細かく区切りたがり、外部の人材を人月で調達したがるのは、作業が膨らんだときの赤字リスクを抑えるためです。
見積もりの手法は「工数見積もりの手法7選|SES・受託の根拠の示し方とテンプレ付き」で詳しく扱っています。
SI事業の工程:要件定義〜保守の7工程
SIの工程は、要件定義から運用・保守までの7つです。前半を「上流工程」、後半を「下流工程」と呼びます。
| 工程 | やること | 契約形態の目安 |
|---|---|---|
| 1. 要件定義 | 顧客と「何を作るか」を決める | 準委任 |
| 2. 基本設計(外部設計) | 画面・帳票など、利用者から見える部分を設計 | 準委任または請負 |
| 3. 詳細設計(内部設計) | プログラムの中の動きを設計 | 請負 |
| 4. 製造(プログラミング) | プログラムを書き、単体で動作を確かめる | 請負 |
| 5. テスト | 部品をつないだテスト、全体のテスト、受け入れテスト | 結合テストまで請負、システムテストは準委任または請負 |
| 6. 移行 | 古いシステムからデータを移し、切り替える | 準委任または請負 |
| 7. 運用・保守 | 稼働後の監視・問い合わせ・修正 | 準委任(月額が多い) |
上流工程とは、要件定義と基本設計のことです(基本設計と外部設計の違いは「外部設計とは?基本設計・詳細設計との違い」)。SIerの社員が中心になり、顧客と直接話します。下流工程とは、詳細設計から後の工程のことです。人数が必要になり、外部の人材が多く入ります。
7工程の分け方は、順番に進める「ウォーターフォール型」の開発を前提にしています。小さく作って直しをくり返す「アジャイル型」の案件では、工程がはっきり分かれません。
SI事業とSES事業の違い
SI事業とSES事業の一番の違いは、報酬が「完成」に払われるか「作業時間」に払われるかです。SIは完成品を納めて代金を受け取ります。SESは技術者の作業に対して、月ごとの人月単価を受け取ります。
| 比べる点 | SI事業 | SES事業 |
|---|---|---|
| 売るもの | 完成したシステム | 技術者の作業(時間) |
| 主な契約 | 請負(工程により準委任) | 準委任 |
| 報酬の決まり方 | 見積もった総額 | 人月単価 × 人数 × 月数(精算幅あり) |
| 完成の責任 | ある | ない(ていねいに作業する義務はある) |
| 作業の指示 | 自社の社員が出す | 自社が出す。客先が直接指示すると偽装請負のおそれ |
| 儲けの源泉 | 見積もりと実際の差、保守の積み上げ | 仕入れ値と売り値の差(マージン) |
| 大きなリスク | 作業が膨らむと赤字 | 待機(案件のない期間)の人件費 |
SES事業の人月モデルでは、作業が膨らんでも精算幅(稼働時間の上限・下限)の範囲で精算されます。赤字のリスクを負うのはSIer、待機のリスクを負うのはSES会社、と覚えると整理しやすいです。
SI事業の中でのSES会社の位置
SIerが顧客から請け負った仕事は、二次請け・三次請けへと流れていきます。SES会社は、その途中で人材を準委任で出す立場に入ることが多いです。
注意したいのは、SIerと顧客の契約が請負でも、SIerとSES会社の契約は準委任になることが多い点です。自社の技術者は完成の責任を負いませんが、SIerの社員から直接指示を受けると偽装請負のおそれが出ます。
詳しくは「SIerとSESの違い|商流の位置と営業先の見分け方5つ」へ。
SI案件のどの工程でSES人材が求められるか
SES人材が最も多く求められるのは、詳細設計・製造・テストの工程です。この3つの工程で、プロジェクトの人数が最も膨らむのが一般的だからです。上流と保守でも、経験者の募集は出ます。
| 工程 | よく出る募集 | 求められる経験 | 営業のポイント |
|---|---|---|---|
| 要件定義・基本設計 | PMO・業務SE | 同じ業界の上流経験 | 単価は高いが、人数は少ない |
| 詳細設計・製造 | 開発SE・プログラマー | 言語・フレームワークの実務 | 募集が最も多い。スピード勝負 |
| テスト | テスター・テストリーダー | テスト設計・手順書の作成 | 経験が浅い人も入りやすい |
| 移行 | 移行SE・作業要員 | データ移行、夜間・休日作業 | 期間が短い。終わりの日を確認 |
| 運用・保守 | 運用保守・ヘルプデスク | 監視・問い合わせ対応 | 長く続きやすい。交代要員の提案も |
SI案件とは?案件票から工程を読むコツ
SI案件とは、SIerが顧客から受けたシステム開発の仕事のうち、外部の人材を募集している案件のことです。SES営業のもとには、案件票(案件の条件を書いた紹介文)として届きます。
案件票の「工程」の欄を見ると、提案の時期が読めます。次は案件票の例です。
【案件】〇〇銀行 融資システム更改(Java) 工程:詳細設計〜結合テスト(2026年11月〜2027年6月) 人数:5名(うち1名はリーダー経験) 契約:準委任/精算幅140〜180h 商流:エンド→元請けSIer→弊社(一次)
上の案件票の例では、2027年6月で工程が終わることがわかります。システムテストや移行に続けて入れるかを、提案の段階で聞いておきます。続かない場合は、終了の2か月前から次の案件を探し始めます。
工程の続きを聞くメール例文
〇〇株式会社 △△様
融資システム更改の件、ご紹介ありがとうございます。提案前に2点だけ教えてください。
結合テストのあと、システムテスト・移行の工程にも同じメンバーで続く見込みはありますか。
2027年6月以降の増員・減員のご予定があれば、わかる範囲で教えてください。
工程の続きがわかると、長く入れるメンバーを優先してご提案できます。
体制で出すときの組み方と単価は、SESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方で解説しています。
SI案件に人を出す前の確認手順7つ
SI案件に自社やBPの技術者を出す前に、次の7つを順に確認します。工程と契約形態を取り違えると、あとで責任の範囲で揉めます。
工程と期間:どの工程に入り、いつ終わるか。次の工程に続く見込みはあるか
自社との契約形態:準委任か請負か。案件票だけでなく、注文書の文面で確かめる
指示を出す人:誰が技術者に作業の指示を出すか。自社のリーダーを置けるか
商流:元請けSIerから自社まで何社あるか
精算幅と単価:稼働時間の上限・下限と、超えたときの精算方法
再委託の可否:BPの技術者を出してよいか
体制図:SIer側の責任者と、自社の連絡窓口
7つのうち「指示を出す人」の確認は特に大切です。準委任で入る技術者に、SIerの社員が直接細かく指示すると、偽装請負と判断されるおそれがあります。
自社でやるなら:SIerごとの「工程カレンダー」を作る
SI案件の波を先読みするには、取引先のSIerごとに、進行中の案件と工程の終わる月を表にするのが効果的です。Excelで次の列を作るだけで始められます。
| SIer名 | 案件名 | 今の工程 | 工程が終わる月 |
|---|---|---|---|
| A社 | 融資システム更改 | 製造 | 2027年2月 |
| B社 | 物流システム保守 | 運用・保守 | 更新は3か月ごと |
表の作り方は「SESのアサイン表の作り方|要員稼働表のテンプレ項目と更新ルール」も参考にしてください。
製造が終わる月の2か月前には、テスト工程の増員を聞きに行きます。反対に、テストが終わる月は、自社の技術者が一斉に空くおそれがあります。案件が終わる月の前に、次の提案を用意するのが待機を減らすコツです。
チョータツでSI案件と人材を工程ごとに管理する
工程カレンダーをExcelで続けるのは、案件と人材が増えるほど大変になります。チョータツを使うと、SIerから届く案件と、自社・パートナーの人材を1か所で管理・共有できます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の工程・期間を残す | メールを読んでExcelに転記 | 案件情報をチョータツで管理。AIが入力を手伝う |
| 空く予定の技術者を探す | 社内に聞いて回る | 人材の情報を社内で共有し、すぐ確認 |
| 増員に足りない人を探す | BPに1社ずつメール | 他社と連携すると、他社の営業中人材をデータベース化 |
| 自社の空き人材を知らせる | BCCで一斉送信 | パートナーへのメール配信機能で届ける |
チョータツは3,000社以上が使うSES営業向けのツールで、無料で始められます。どの工程に誰を出すかの判断は、営業が案件の中身を見て行います。チョータツは、その判断に必要な案件と人材の情報をすぐ出せる状態にするための道具です。
SES会社がSI事業(請負)を始めるときの注意
SES会社がSI事業に踏み出すと、「完成の責任」「見積もり」「体制」の3つが変わります。準委任のSESとは、負うリスクがまったく違います。
完成の責任:作り終えるまで報酬が入らず、不具合を直す責任も負う
見積もり:時間ではなく、金額と納期を約束する。予備費を必ず入れる
体制:自社の責任者が作業を指示し、進み具合を管理する
いきなり一括請負を受けるより、要件定義や保守を準委任で受けてから、中身の決まった工程だけ請負にするのが安全な進め方です。
詳しくは「受託開発とは?SESとの違いと営業が請負案件を扱う注意点」へ。
よくある質問
- Q. SI事業とは簡単に言うと何ですか?
- 顧客のシステムを、企画から開発・保守までまとめて請け負う事業です。ソフトの開発に加え、機器やクラウドの組み合わせも引き受けます。
- Q. SI業界とはどんな業界ですか?
- SI事業を行う会社(SIer)の集まりです。メーカー系・ユーザー系・独立系・外資系などに分かれ、元請けから下請けへ仕事が流れる構造があります。
- Q. SIサービス・SI業務とは何ですか?
- SIサービスは、SIerが顧客に提供するシステム構築の仕事全体を指します。SI業務は、その中の要件定義・設計・開発・テスト・保守などの作業を指すことが多いです。
- Q. SIシステムとは何ですか?
- SIerが顧客ごとに組み上げたシステムを指して使われることが多い言葉です。既製品のソフトと区別して「個別に作ったシステム」という意味で使われます。
- Q. システム開発とSIは同じですか?
- 重なりますが同じではありません。システム開発はプログラムを作る作業です。SIは開発に加え、機器の選定・導入・保守まで含めて請け負う点が違います。
- Q. SIのビジネスモデルでSES会社はどこに入りますか?
- 多くは、SIerが請け負った案件に人材を準委任で出す立場です。詳細設計〜テストの工程で人数が必要になるため、そこで声がかかりやすくなります。
- Q. SI案件の単価は、工程で変わりますか?
- 一般に、上流工程ほど高く、テストや運用に近づくほど下がる傾向があります。ただし同じ工程でも、業界知識や言語で大きく変わります。
まとめ
SI事業とは、顧客のシステムを企画から保守までまとめて請け負う事業
儲け方は「一括請負・工程別の見積もり」「機器・ソフトの販売」「保守の月額」の3つ
工程は要件定義〜運用・保守の7つ。要件定義は準委任、詳細設計〜結合テストは請負とする整理が一般的
SESとの違いは完成の責任。赤字リスクはSIer、待機リスクはSES会社が負う
SES人材の出番は詳細設計〜テストが最も多い。案件票の工程と終わる月を必ず確認する
SIerごとの工程カレンダーを作ると、次の提案の時期が読める
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
政府統計の総合窓口(e-Stat)「日本標準産業分類(令和5年7月改定)受託開発ソフトウェア業」
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)「特定サービス産業動態統計 情報サービス業 令和6年11月分(確報)」
一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)「サービス産業動態統計・令和8年7月分(速報)」(総務省統計局の公表値の集計)
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書」
e-Gov法令検索「民法」(632条 請負、656条 準委任)