受託開発とは?意味と業界での位置づけ、SES・自社開発との違いと、SES営業が請負・持ち帰り案件を受けるときの注意点

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

受託開発とは?意味を1文で

受託開発とは、顧客(発注者)から頼まれて、システムやソフトウェアを作って納める仕事のことです。 「受託」は仕事を引き受けること、「開発」はシステムを作ることを指します。

受託開発の契約は、多くの場合請負契約です。請負契約とは、仕事を完成させることを約束し、その結果に報酬を払う契約のことです(民法632条)。つまり、受託開発の会社は「決められたものを、決められた期日までに完成させる」責任を負います。

受託案件とは、こうした受託開発の仕事1件1件のことです。IT業界では「受託」「受託案件」と略して呼ぶことが多いです。英語では一般に contract development などと言います。日本標準産業分類の英語名では、受託開発ソフトウェア業は「Custom software services」です。

「受託」と「委託」の言葉の違いは「受託と委託の違い|業務受託の意味とSES契約での使い分け」で整理しています。

受託開発の業界での位置づけ(産業分類)

受託開発は、国の統計で使う日本標準産業分類に、独立した業種として載っています。日本標準産業分類とは、総務省が定める、事業を種類ごとに分けた国の基準のことです。

受託開発ソフトウェア業(3911)は、頼まれてプログラムを作る事業所です。作成についての調査・分析・助言などを行う事業所も含まれます。例として、プログラム作成業、情報システム開発業、システムインテグレーションサービス業などが挙がっています。

番号分類名中身のイメージ
3911受託開発ソフトウェア業顧客から頼まれて業務システムなどを作る
3912組込みソフトウェア業家電や機械に組み込むソフトを作る
3913パッケージソフトウェア業多くの人に売るソフト製品を作る
3914ゲームソフトウェア業ゲームソフトを作る

4つとも「大分類G 情報通信業」の「ソフトウェア業(391)」に入ります。「組み込み受託」の仕事は、主に3912にあたります(総務省「日本標準産業分類(令和5年7月告示)の解説」)。

SES会社の業種をどう書くかは「SES事業の業種は何?書き方と業種番号を3つの場面別に解説」で説明しています。

受託開発・SES・自社開発の違い

受託開発・SES・自社開発の違いは、「誰のために作り、何に対してお金をもらうか」です。 受託開発は完成に対して、SESは作業に対して報酬を得ます。自社開発は、自社のサービスの利用者から売上を得ます。

SESとは、エンジニアの技術力を、主に準委任契約で顧客に提供するサービスのことです。準委任契約とは、完成ではなく、決められた作業をていねいに行うことを約束する契約のことです(民法656条・644条)。

比べる点受託開発SES
主な契約請負準委任
報酬が出る対象完成した成果物作業した時間・期間
作業の場所自社に持ち帰ることが多い顧客の現場が多い
完成の責任負う負わない(ていねいに作業する義務)
比べる点受託開発自社開発
作るもの顧客のシステム自社のサービス・製品
お金の出どころ発注者からの開発代金利用者からの料金・広告など
仕様を決める人発注者と相談して決める自社で決める
売上の特徴1件ごとに入る利用が増えると積み上がる

「自社サービスと受託の違い」は、仕様を決める人と、売上の入り方に表れます。受託は顧客の要望に合わせるぶん、案件ごとに確実に売上が立ちます。

どちらで提案するかを決める手順は、「SESと受託開発の違い|アウトソーシングの種類と営業の売り分け方」にあります。この記事は、受託開発の仕組みと、請負で受けたときに変わることに絞ります。

受託開発の仕事の流れ

受託開発は、要件を決めてから、作って、確かめて、納めるという順番で進みます。流れの大きな形は、次のとおりです。

  1. 要件定義:発注者と、何を作るか・どこまで作るかを決める

  2. 見積もり・契約:必要な工数から金額と納期を出し、請負契約を結ぶ

  3. 設計:画面・データ・処理の作り方を決める

  4. 開発(プログラミング):設計どおりに作る

  5. テスト:受注側で動作を確かめる

  6. 納品・検収:発注者が確かめ、合格なら検収となり支払いへ進む

  7. 保守・運用:納品後の修正や改善を、別の契約で請け負うことが多い

検収とは、納められたものが契約どおりかを発注者が確かめ、受け取ることを認める手続きのことです。受託開発では、検収に合格するまで報酬を請求できないのが基本です。

要件定義を準委任、開発を請負と、工程ごとに契約を分けるやり方もあります。IPA(情報処理推進機構)が公開している「情報システム・モデル取引・契約書」も、工程ごとに契約の型を分けています。

受託開発会社の種類

受託開発会社とは、受託開発を主な事業にしている会社のことです。 大きく4つのタイプに分けられます。

タイプ主な受託の中身SES営業との関わり
SIer企業や官公庁の大きなシステム開発の一部を準委任で外部に頼むことが多い
Web・アプリ開発会社Webサイト、スマホアプリ繁忙期にエンジニアを募集する
組込みソフト開発会社家電・自動車・機械のソフト専門スキルの人材を探している
AI受託開発会社AIを使った分析・システムデータ分析や機械学習の人材が不足しがち

SIerとは、システムの企画から開発・運用までをまとめて請け負う会社のことです。詳しくは「SIerとは?読み方・意味とSESとの関係を営業目線で解説」を見てください。

SES営業にとって、受託開発会社は大事な営業先です。受託開発会社が請負で受けた仕事のうち、人手が足りない部分を準委任でSES会社に頼む流れがよくあります。

AI案件の取り方は「AI受託開発とは?市場規模とSESがAI案件を取る方法」でまとめています。

SES会社が請負・持ち帰り案件を受けると変わる3つのこと

SES会社が請負や持ち帰りの案件を受けると、責任範囲・見積もり・体制の3つが変わります。準委任と同じ感覚で受けると、赤字や揉めごとの原因になります。

持ち帰り案件とは、顧客の現場ではなく、自社の事務所で開発して納める案件のことです。ほとんどは請負で結ばれます。

1. 責任範囲:完成と不具合の責任を負う

請負では、完成させる責任と、納めたものが契約どおりでないときの責任を負います。後者を契約不適合責任と呼びます。

発注者は、不具合を知ってから1年以内に通知すれば責任を問えます(民法637条)。直す・減額する・損害を賠償するなどを求められます。準委任のSESには、この完成の責任はありません。

また、完成前であれば、発注者はいつでも損害を賠償して契約を解除できます(民法641条)。途中で止まったときの報酬の決め方を、契約書で確認しておく必要があります。

2. 見積もり:時間ではなく「金額と納期」を約束する

SESでは「1人月80万円」のように時間あたりの単価を出します。請負では「この機能を720万円で、3か月で」のように総額と納期を約束します。

人月とは、1人が1か月働く作業量の単位のことです。見積もりの工数が外れると、SESなら時間が延びたぶん請求できます。請負では、延びたぶんは自社の持ち出しになります。

3. 体制:自社で指示し、管理する人が要る

請負では、作業の指示や進み具合の管理を自社の責任者が行います。発注者が自社のエンジニアに直接指示を出すことは、請負ではできません。

請負なのに顧客の現場で顧客が指示を出していると、偽装請負と判断されるおそれがあります。偽装請負とは、契約は請負や準委任なのに、実態が労働者派遣になっている状態のことです。判断の目安は「偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選」で確認してください。

そのほか法律・税金で変わること

  • 取適法:下請法は改正され、2026年1月1日から「取適法(中小受託取引適正化法)」になりました。プログラムの作成を他社に頼む取引は、双方の規模によって対象になります。たとえば委託する側が資本金3億円超で、受ける側が3億円以下なら対象です(取適法2条)。従業員数の基準(300人超→300人以下)もあります。

  • 印紙:紙の請負契約書は、契約金額に応じて印紙が必要です(第2号文書)。たとえば500万円超1,000万円以下なら1万円です。電子契約なら印紙はかかりません。

請負の見積もりの計算例(SESとの比較)

同じ3人×3か月の仕事でも、SESと請負では見積もりの考え方が変わります。 下の数字は計算のしかたを示すための例です。

条件の例:エンジニア3人、期間3か月、1人月80万円

項目SES(準委任)受託開発(請負)
基本の金額80万円×3人×3か月=720万円同じく720万円
管理の工数顧客側が管理自社のPMの工数を足す
予備の工数基本は不要手戻りや不具合対応のぶんを足す
工数が延びたら精算幅を超えれば追加で請求自社の負担になる

たとえば管理を0.5人月(40万円)、予備を基本の15%(108万円)と置きます。請負の見積もりは868万円になります。何%を予備にするかは、要件のはっきり具合と自社の経験で決めます。

工数の計算のしかたは「人日・人月の計算方法|意味・読み方と換算早見表・見積例」で詳しく説明しています。

請負・持ち帰り案件を受ける前のチェックリスト

SES営業が請負や持ち帰りの打診を受けたら、見積もりの前に次の7つを確かめます。

  1. 作るものと範囲が決まっているか:機能の一覧と、作らないものが書面にある

  2. 検収の方法と期間:誰が、何日以内に、何を基準に合否を決めるか

  3. 不具合の責任の期間:契約不適合の通知期間を契約書で決めているか

  4. 仕様変更のルール:追加や変更のとき、見積もりと納期を見直せるか

  5. 自社の責任者:指示と進み具合の管理をする人を自社で出せるか

  6. 作業の場所:持ち帰りか常駐か。常駐なら顧客から直接指示を受けない形にできるか

  7. 支払いの条件:着手金や分割払いがあるか、検収後いつ入金されるか

1つでもあいまいなら、要件定義だけを準委任で先に受ける方法を提案できます。範囲が決まってから、開発を請負で見積もり直せます。エンドに体制ごと出す提案書の構成は、エンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本が参考になります。

顧客に返すメールの例文

例文・テンプレート
件名:〇〇システム開発のご相談について(進め方のご提案)

株式会社〇〇
〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
〇〇システムの開発について、ご相談いただきありがとうございます。

現時点では、画面数と連携先がまだ決まっていないと伺いました。
そこで、次の2段階での進め方をご提案いたします。

1. 要件定義(準委任):2026年11月〜12月、1名
2. 開発(請負):要件の確定後に、金額と納期をお見積もり

範囲を固めてから請負でお見積もりすることで、
追加費用や納期のずれを抑えられると考えております。
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

自社でやるなら:請負と準委任を取り違えない工夫

請負と準委任の取り違えは、案件を受け付けた時点で契約形態を記録するだけで大きく減らせます。自社でできる工夫は3つです。

  1. 案件の管理表に「契約形態」の列を作る:準委任・請負・派遣を必ず選んで入れる

  2. 請負は社内で2人以上が確認する:営業だけで決めず、技術の責任者が見積もりを見る

  3. 契約書のひな形を分ける:準委任用と請負用をまぜない

請負契約の条文や確認点は「請負契約とは?民法の意味・特徴とSESが受ける前の確認点7つ」でさらに詳しく扱っています。契約書での見分け方は「準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シート」を参照してください。

チョータツで案件の契約形態と人材をまとめて管理する

請負の話が来たときに必要なのは、案件の条件と、社内・パートナーの人材の空きをすぐ確かめることです。チョータツを使うと、案件・人材の情報を1か所で管理・共有できます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の契約形態を残すメールを読んでExcelに転記案件情報をチョータツで管理。AIが入力を手伝う
体制を組める人を探す社内に聞いて回る人材の情報を社内で共有し、すぐ確認
パートナーの人材を探す届くメールを1通ずつ読む連携すると、他社の営業中人材をデータベース化
人を集める連絡をする1社ずつメールを送るパートナーへのメール配信機能で一斉に連絡

請負で受けるかどうかの判断は、人が契約の中身を見て行います。チョータツは、その判断に必要な案件と人材の情報をすぐ出せる状態にするための道具です。

よくある質問

Q. 受託案件とは何ですか?
顧客から開発を頼まれ、完成させて納める仕事1件1件のことです。多くは請負契約で結ばれ、報酬は完成した結果に対して払われます。
Q. 受託開発とSESの違いは何ですか?
一番の違いは完成の責任です。受託開発(請負)は完成に対して、SES(準委任)は作業に対して報酬が出ます。SESは完成の責任を負いません。
Q. 自社サービスと受託の違いは何ですか?
自社サービスは自社で仕様を決め、利用者から売上を得ます。受託は顧客の仕様に合わせて作り、発注者から開発代金を受け取ります。
Q. 受託開発ソフトウェア業とは何ですか?
日本標準産業分類の業種の1つで、番号は3911です。頼まれてプログラムを作る事業所や、システムインテグレーションサービス業などが入ります。
Q. 受託開発は英語で何と言いますか?
一般に contract development や custom software development と言います。海外の会社に説明するときは、契約の形も書き添えると誤解がありません。
Q. SES会社が受託開発を始めるときに気をつけることは?
完成の責任と不具合の責任を負う点です。自社の責任者を置き、見積もりに管理と予備の工数を入れ、検収の条件を契約で決めてから受けましょう。
Q. AI受託開発も請負になりますか?
契約の中身しだいです。完成品を納めて報酬を得るなら請負、調査や検証の作業に報酬を払うなら準委任になることが多いです。

まとめ

  • 受託開発とは、顧客から頼まれてシステムやソフトウェアを作り、完成品を納める仕事

  • 契約は多くが請負。産業分類では「受託開発ソフトウェア業(3911)」

  • SESとの違いは完成の責任。自社開発との違いは、仕様を決める人と売上の入り方

  • SES会社が請負・持ち帰りを受けると、責任範囲・見積もり・体制の3つが変わる

  • 見積もりには管理と予備の工数を足し、受ける前に7項目を確かめる

  • 範囲があいまいなら、要件定義を準委任で先に受ける進め方を提案できる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)