工数見積もりの手法7選|SES会社が請負・持ち帰り案件で見積根拠を示す方法と、そのまま使えるテンプレート
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
工数見積もりとは?
工数見積もりとは、仕事を終えるまでに必要な人と時間の量を、作業の前に予想することです。見積もった工数に単価をかけると、見積金額になります。
工数とは、作業量を「人数×時間」で表した数字のことです。単位には、人時(にんじ)・人日(にんにち)・人月(にんげつ)を使います。1人が1日働く量が1人日、1人が1か月働く量が1人月です。
→ 人日・人月の換算は人日・人月の計算方法|意味・読み方と換算早見表・見積例で解説しています。
SES営業が工数見積もりを求められる場面
SES会社でも、工数見積もりを求められる場面は増えています。主な場面は次の3つです。
| 場面 | 契約の形 | 見積もりで示すもの |
|---|---|---|
| 客先常駐(通常のSES) | 準委任 | 人数・期間・月額単価・精算幅 |
| 持ち帰り開発 | 請負が多い | 作業一覧・工数・前提条件・金額 |
| 小さな追加改修 | 請負か準委任 | 作業一覧・工数・どちらの契約か |
工数見積もりの手法7選【比較表】
工数見積もりの手法は、過去と比べる方法・作業を積み上げる方法・規模から計算する方法の3系統に分かれます。まず全体を表で比べます。
| 手法 | 見積もり方 | 向く時期 | SES会社での使いやすさ |
|---|---|---|---|
| ① 類推法 | 似た過去案件の実績から出す | 商談の初期 | ◎ 過去案件があればすぐ使える |
| ② ボトムアップ法 | 作業を細かく分けて足す | 要件が固まった後 | ◎ 根拠を説明しやすい |
| ③ 三点見積もり | 楽観・最可能・悲観の3つから出す | 不確かな作業 | ○ リスク分の説明に使える |
| ④ ファンクションポイント法 | 機能の数と複雑さから規模を出す | 要件定義の後 | △ 計測の知識が要る |
| ⑤ プログラムステップ法 | プログラムの行数から出す | 似た開発の繰り返し | △ 言語で差が大きい |
| ⑥ パラメトリック法 | 規模と係数の式で出す | 大きな案件 | △ 自社データの蓄積が要る |
| ⑦ 工程比率法 | 1工程の工数から全体を割り戻す | 見積もりの確かめ | ◎ 公的データで確かめられる |
① 類推法(過去の実績と比べる)
類推法とは、似た過去案件の実績工数をもとに、今回の工数を予想する方法です。「前回の予約画面は15人日だった。今回は項目が倍なので25人日」のように考えます。
速く出せる反面、似た案件がないと使えません。商談の最初に「おおよそいくらか」と聞かれたときの概算工数に向きます。
② ボトムアップ法(作業を積み上げる)
ボトムアップ法とは、作業を細かく分け、1つずつの工数を足して全体を出す方法です。作業を分けた一覧を WBS(作業分解図)と呼びます。
作業ごとに根拠を示せるので、顧客に一番説明しやすい方法です。ただし、作業の漏れがあると、その分だけ少なく見積もってしまいます。
③ 三点見積もり(不確かさを数字にする)
三点見積もりとは、1つの作業に「うまくいった場合」「一番ありそうな場合」「悪い場合」の3つの工数を出し、平均をとる方法です。よく使う式は次のとおりです。
見積工数 =(楽観値 + 最可能値 × 4 + 悲観値)÷ 6
たとえば、外部システムとの連携が楽観3日・最可能5日・悲観13日なら、(3+20+13)÷6=6人日です。最可能値の5日より1日多い分が、リスク工数の根拠になります。
④ ファンクションポイント法(機能の量から出す)
ファンクションポイント法(FP法)とは、画面・帳票・データなどの機能を数え、複雑さで点数をつけて規模を出す方法です。国内では、JIS X 0142(IFPUG法)として規格になっています。
作る言語に左右されないのが強みです。一方で、正しく数えるには手法の知識が要ります。大きな請負案件で、顧客側がFPでの見積もりを求めるときに使います。
⑤ プログラムステップ法(行数から出す)
プログラムステップ法とは、作るプログラムの行数(ステップ数)を予想し、1人月で書ける行数で割って工数を出す方法です。LOC法とも呼ばれます。
同じ言語・似た開発を繰り返す会社では使えます。ただ、言語や書く人で行数が大きく変わるため、顧客への根拠としては弱めです。
⑥ パラメトリック法(式で計算する)
パラメトリック法とは、規模などの数字を、過去データから作った計算式に入れて工数を出す方法です。代表例に、規模から工数を出すCOCOMO(ココモ)というモデルがあります。
自社の実績データが多くたまっていると精度が上がります。小さなSES会社が最初から使うのは難しい手法です。
⑦ 工程比率法(全体を割り戻す)
工程比率法とは、1つの工程の工数と、工程ごとの比率の目安から、全体の工数を出す方法です。ほかの手法で出した結果が大きく外れていないかを確かめるときに役立ちます。
比率の目安は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の白書で確認できます。数字は「IPAの工程別工数比率で見積もりを確かめる」で示します。
IPAの工程別工数比率で見積もりを確かめる
IPAの「ソフトウェア開発データ白書2018-2019」を見てみます。新規開発の工数のうち、製作工程が約33%を占めています。基本設計から総合テストまでの5工程の平均は、次のとおりです。
| 工程 | 主な作業 | 工数比率(平均) |
|---|---|---|
| 基本設計 | 画面・機能の外から見た設計 | 16.9% |
| 詳細設計 | プログラムの中の設計 | 17.5% |
| 製作 | プログラミング・単体テスト | 32.6% |
| 結合テスト | 機能をつないで確かめる | 20.0% |
| 総合テスト | システム全体で確かめる | 13.0% |
※新規開発304件の平均。出典:IPA「ソフトウェア開発データ白書2018-2019」図表7-1-16(2026年9月29日確認)
要件定義の工数は、要件定義を含む6工程の中で、中央値が約9%でした(同白書 図表7-1-18)。テスト工数は、結合テストと総合テストを合わせて約33%です。
計算例:製作が30人日なら全体はどれくらいか
プログラミングを30人日と積み上げた場合、比率から割り戻すと全体の目安が出ます。
全体の目安 = 30人日 ÷ 0.326 ≒ 92人日
基本設計の目安 = 92人日 × 0.169 ≒ 16人日
結合テストの目安 = 92人日 × 0.200 ≒ 18人日
ボトムアップで出した設計やテストの工数が、この目安より大幅に少ないなら、作業の漏れを疑います。白書の数字は多くの案件の平均なので、あくまで確かめるための目安として使います。
ボトムアップで工数を見積もる手順7ステップ
実務では、作業を分ける→1つずつ見積もる→確かめる→リスク分を足すの順に進めます。新人でも同じ手順で見積もれます。
要件を聞き取る:画面・帳票・外部連携・データの数を聞く。わからない点は一覧にしておく
作業を分ける(WBS):1つの作業が1〜5人日に収まるまで細かく分ける
1つずつ工数を出す:過去の似た作業の実績を当てる。実績がなければ担当エンジニアに聞く
不確かな作業は三点見積もり:外部連携や初めての技術は、楽観・最可能・悲観の3つで出す
管理の工数を足す:打ち合わせ・進捗報告・資料作成も工数に入れる
工程比率で確かめる:IPAの比率と比べ、設計やテストが少なすぎないかを見る
リスク工数と前提条件を書く:何が変わると工数が増えるかを、文章で残す
「作業見積もりができない」ときの対処
見積もれない原因の多くは、要件が決まっていないことです。その場合は、無理に1つの数字を出さないようにします。
「要件定義まで」と「開発」を分け、先に要件定義だけを見積もる
金額に幅を持たせ、「〇〇が決まった時点で確定します」と書く
要件定義の部分は、時間で精算する準委任で受ける
顧客に見積根拠を示すテンプレート
見積根拠は、作業一覧・工数・根拠・前提条件の4つがそろえば、顧客が中身を確かめられます。次の表をそのままExcelに写して使えます。
| 工程・作業 | 工数(人日) | 根拠 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 要件確認の打ち合わせ(2回) | 2 | 1回あたり準備・議事録込み1人日 | PM |
| 基本設計(画面8・帳票2) | 12 | 1画面1.2人日(過去3案件の平均) | SE |
| 製作・単体テスト | 30 | 画面・帳票ごとに積み上げ | PG |
| 外部連携(決済API) | 6 | 三点見積もり(3・5・13人日) | SE |
| 結合・総合テスト | 30 | 製作とほぼ同じ量(IPA比率で確認) | SE・PG |
| 進捗管理・報告 | 5 | 週1回×10週・1回0.5人日 | PM |
| 合計 | 85 | 1人月=20人日で約4.3人月 | ― |
前提条件の書き方(例)
画面数8・帳票数2を前提とします。増えた場合は別途お見積りします。
顧客側の確認は、提出から3営業日以内にいただく前提です。
本番環境の準備・データ移行は、見積もりに含みません。
外部連携先の仕様変更による作業は、見積もりに含みません。
→ Excelで人日・人月を自動計算するならエクセルの工数計算の関数|人日・人月を出す式とテンプレ付き、見積書そのものの書き方はSESの見積書の書き方|テンプレートと記載項目10・注意点へ。
顧客への説明例文
件名:〇〇システム改修のお見積りについて 株式会社〇〇 △△様 お世話になっております。株式会社□□の◇◇です。 ご依頼の改修について、お見積りをお送りします。 ・合計工数:85人日(約4.3人月) ・内訳:作業ごとの工数と根拠を別紙の表にまとめました ・前提:画面8・帳票2、ご確認は3営業日以内を想定しています 決済APIとの連携は、先方仕様に不確かな点があるため、 3つのケースで見積もり、その平均を計上しております。 仕様が確定した時点で、工数を見直してご連絡します。 ご不明な点があれば、お気軽にお申し付けください。
準委任(SES)と請負で、見積根拠はどう変わるか
準委任(SES)の見積根拠は人数×期間×単価で足ります。請負は仕事を完成させる責任を負うため、作業ごとの工数とリスク分まで示す必要があります。
準委任契約とは、決められた作業をすること自体に報酬を払う契約のことです。請負契約とは、仕事の完成に報酬を払う契約のことです。
| 比べる点 | 準委任(SES) | 請負 |
|---|---|---|
| 報酬の対象 | 作業をすること | 仕事の完成 |
| 見積もりの形 | 人数×期間×月額単価 | 作業一覧×工数×単価 |
| 工数が増えたとき | 精算幅を超えれば追加請求できる | 原則として自社の負担 |
| 見積もりで特に大事な点 | 精算幅・期間 | リスク工数・前提条件 |
請負で見積もるときに営業が確認すること
完成の定義:何を納めれば完成か。検収の方法と期間
変更の扱い:要件が増えたときに、追加の見積もりを出せるか
不具合の責任:納品後に不具合が見つかったとき、何か月直すか
作業の場所と指示:客先で作業する場合、顧客から直接指示を受けない体制にできるか
4つ目は特に大切です。請負なのに顧客がエンジニアに直接指示を出すと、偽装請負と判断されるおそれがあります。
→ 準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シート / 受託開発とは?SESとの違いと営業が請負案件を扱う注意点 / 偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策
準委任で出すときの見積メール例(客先常駐の体制提案)
準委任の案件では、作業ごとの工数ではなく体制と条件を1通で示します。
件名:〇〇案件 体制と条件のご提案
・体制:SE 1名・PG 2名(計3名)
・期間:2026年11月1日〜2027年1月31日(3か月、9人月)
・月額単価:SE 70万円、PG 55万円(税抜)
・精算幅:各140〜180時間/月(上下割)
・契約形態:準委任(作業の進め方と要員への指示は弊社が行います)
・月額合計:180万円(税抜)
契約形態の行を入れておくと、請負と準委任の取り違えや、客先からの直接指示を防ぐ話し合いにつなげやすくなります。複数名の体制の組み方と単価の出し方はSESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方で解説しています。
工数を増やしすぎない・減らしすぎない
見積もりを安くしたくて工数を削ると、請負では赤字がそのまま自社の損になります。反対に、根拠のないリスク分を上乗せすると、顧客の信頼を失います。
私たちのおすすめは、リスク工数を「どの作業の、何が不確かだから、何人日」と作業ごとに書くことです。全体に一律で上乗せするより、顧客が納得しやすくなります。
見積もった体制の人探しを、チョータツで楽にする
見積もりが通っても、見積もった人数と期間で人をそろえられなければ計画は崩れます。自分でやるなら、自社の待機者一覧とBPへの問い合わせメールで人を探します。
もっと楽にするなら、チョータツを使う方法があります。チョータツは、3,000社以上が使うSES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。
人材の情報を管理・共有:自社とBPの人材を1か所にまとめ、見積もった役割に合う人を探せる
他社との連携:連携した他社の営業中人材をデータベース化でき、足りない役割をすぐ探せる
メール配信:パートナーへ、必要なスキルと期間をまとめて配信できる
見積もりの段階で「この体制なら出せる」と確かめておくと、根拠の説得力も上がります。
よくある質問
- Q. 工数見積もりで一番よく使われる手法はどれですか?
- 実務では、ボトムアップ法(作業の積み上げ)と類推法(過去実績との比較)の組み合わせが多いです。顧客に根拠を説明しやすく、特別な知識もいりません。
- Q. IPAの工数比率はどこで確認できますか?
- IPAのサイトで「ソフトウェア開発データ白書2018-2019」のPDFを無料で読めます。工程別の実績工数の比率は、第7章の図表7-1-16にあります。
- Q. 工数見積もりの根拠を顧客から求められたら、何を出せばいいですか?
- 作業一覧、作業ごとの工数、工数の根拠(過去実績や計算式)、前提条件の4つです。「顧客に見積根拠を示すテンプレート」の表をそのまま使えます。
- Q. 新人でも工数見積もりはできますか?
- できます。WBSで作業を1〜5人日に分け、過去の実績を当てはめます。最後に先輩が工程比率で確かめると、大きな漏れを防げます。
- Q. リスク工数はどれくらい足せばいいですか?
- 決まった割合はありません。三点見積もりで不確かな作業だけ多めに出すと、根拠のある数字になります。自社の過去の見積もりと実績の差も参考にします。
- Q. SESの通常案件でも工数見積もりは必要ですか?
- 準委任のSESなら、人数・期間・月額単価・精算幅で見積もるのが一般的です。作業ごとの工数見積もりが必要になるのは、請負や持ち帰り開発のときです。
- Q. 概算見積もりと詳細見積もりの違いは何ですか?
- 概算見積もりは、要件が固まる前に類推法などで出す大まかな数字です。詳細見積もりは、要件が決まった後にボトムアップで積み上げた数字です。
まとめ
工数見積もりの手法は7つ。過去と比べる・積み上げる・規模から計算する、の3系統に分かれる
SES会社の請負・持ち帰り案件は、ボトムアップで積み上げ、類推法と工程比率法で確かめる
IPAの白書では、新規開発の製作工程が約33%、テストが約33%、要件定義が約9%(中央値)
顧客への根拠は、作業一覧・工数・根拠・前提条件の4点セットで示す
準委任は人数×期間×単価、請負はリスク工数と前提条件まで書く
見積もった体制をそろえられるか、見積もりの段階で確かめる
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「ソフトウェア開発データ白書2018-2019」(図表7-1-16 工程別の実績工数の比率、図表7-1-18 要件定義工程も含めた比率)
IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」
日本規格協会「JIS X 0142:2010 IFPUG機能規模測定手法」
e-Gov法令検索「民法」(第632条 請負、第656条 準委任)
厚生労働省「請負を適正に行うために」