IT人材白書とは?DX白書・DX動向への引き継ぎと、SES営業が提案資料に使えるデータ5つ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
IT人材白書とは?何を調べた資料か
IT人材白書とは、IPA(情報処理推進機構)が毎年まとめていた、日本のIT人材の調査報告書のことです。 IPAは、経済産業省が所管する公的な機関です。国家試験の「情報処理技術者試験」を実施している組織でもあります。
IT人材白書は、2007年度の調査から始まり、2020年版まで毎年発行されました。調べていたのは、主に次のようなことです。
| 調べた相手 | 主な質問 | SES営業にとっての意味 |
|---|---|---|
| IT企業(SIer・ソフト会社など) | IT人材の量・質は足りているか | 取引先(元請け・BP)の人手不足の度合い |
| ユーザー企業(ITを使う一般企業) | 社内のIT人材は足りているか | エンドの会社がどれだけ外部の人材を必要としているか |
| IT人材の個人 | 学び方・転職の理由・働き方 | エンジニア採用や定着の説明材料 |
IT企業とは、システムを作る側の会社のことです。ユーザー企業とは、システムを使う側の一般企業のことです。SES営業から見ると、ユーザー企業は「エンド」、IT企業は「元請けやBP」にあたります。
最終版「IT人材白書2020」の中身
IT人材白書2020は、2020年8月31日に発行された最後のIT人材白書です。 副題は「今こそDXを加速せよ 選ばれる"企業"、選べる"人"になる」でした。全204ページで、PDFは今もIPAのサイトから無料で読めます。
調査には、IT企業996社、ユーザー企業821社が回答しています。すでにこの版から、テーマの中心が「DX」に移っていたことがわかります。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を使って、仕事のやり方や事業そのものを変えることです。
IT人材白書とDX白書・DX動向の関係
IT人材白書は2021年から「DX白書」に統合され、さらに2024年からは「DX動向」に引き継がれました。 IPAは統合の理由を「ITとビジネスの関係がさらに密接になった」ためと説明しています。人材だけを切り出して調べるのではなく、戦略・技術と一緒に見る形に変わりました。
| 資料名 | 発行時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| IT人材白書(〜2020) | 毎年(最終は2020年8月) | IT人材そのものの量・質・働き方を調査 |
| DX白書2021 | 2021年12月 | 人材・技術・戦略を1冊に統合。日米を比較 |
| DX白書2023 | 2023年3月 | 副題「進み始めた『デジタル』、進まない『トランスフォーメーション』」 |
| DX動向2024〜2026 | 毎年6〜7月ごろ | DX白書を引き継ぎ、より早く結果を公表する形に変更 |
DX動向2024の公表時、IPAは「DX白書から引き継ぎ、より迅速に結果を公表する形式に変更した」と説明しています。つまり、「IT人材白書の最新版がほしい」なら、今は「DX動向」の最新年を見るのが正解です。
「IT人材」と「デジタル人材」「DX人材」の違い
デジタル人材とは、デジタル技術を使って事業や仕事を変える人材のことです。 DX人材もほぼ同じ意味で使われます。IT人材白書のころは「IT人材」、DX白書・DX動向では「DXを推進する人材」という言い方が中心です。
言葉が変わったのは、調べる対象が広がったからです。システムを作る人だけでなく、事業を企画する人やデータを分析する人も含むようになりました。経済産業省とIPAの「デジタルスキル標準」は、5つの人材類型を示しています。ビジネスアーキテクト・デザイナー・データサイエンティスト・ソフトウェアエンジニア・サイバーセキュリティです。
SES営業が使えるデータ5つ
SES営業が提案資料や採用の説明で使いやすいのは、次の5つのデータです。 どれもIPAの公式サイトで無料公開されています(2026年9月30日確認)。数字の詳しい比較はデジタル人材不足の最新データ7つ|IT人材白書の後継調査で確認にまとめています。
| No. | データ | 数字 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 1 | DX人材が「不足」と答えた日本企業 | 85.5%(回答1,799社) | DX動向2026 |
| 2 | 日本と米国・ドイツの人材不足の差 | 日本は不足8割超/米国は「過不足なし・やや過剰」約7割 | DX動向2025 |
| 3 | 企業規模別のAI導入率 | 従業員1,001人以上は8割近く、101人以下は16.6% | DX動向2026 |
| 4 | DXに取り組む日本企業の割合 | 73.7%(2023年度調査) | DX動向2024 |
| 5 | ユーザー企業のIT人材の「質」の不足 | 「大幅に不足」39.5%(2019年度) | IT人材白書2020 |
データ1:DX人材の不足は85.5%
DX動向2026では、DXを進める人材が「やや不足」「大幅に不足」と答えた企業が合計85.5%でした。 回答したのは国内企業1,799社です。人材不足を説明するときに、いちばん新しく、いちばん使いやすい数字です。
使える場面は、エンドや元請けへの提案です。「9割近い企業が人材不足を感じている」という前提を示すと、外部の人材を使う理由を説明しやすくなります。
データ2:日本の人材不足は米国・ドイツより深刻
DX動向2025では、日本企業は人材不足が8割を超える一方、米国は「過不足はない」「やや過剰」が約7割でした。 ドイツは「過不足はない」「やや過剰」が約5割です。調査は日本1,535社、米国509社、ドイツ537社が対象です。
この数字は、「日本では人材の取り合いが続く」という説明に使えます。採用や単価の話をするとき、背景として一言添えると説得力が出ます。
データ3:大企業と中小企業でAI導入に大きな差
DX動向2026では、従業員1,001人以上の企業のAI導入率が8割近く、101人以下は16.6%でした。 大企業ほどAIを先に入れていることがわかります。
SES営業にとっては、案件の中身が変わるサインです。大手エンドの案件では、AIやデータ活用のスキルを求める募集が増えると考えられます。詳しくはSESへの生成AIの影響|人月モデルと単価の変化、営業の備え5つにまとめています。
データ4:DXに取り組む企業は7割超
DX動向2024では、DXに取り組む日本企業の割合が73.7%(2023年度)でした。 調査は事業会社1,013社が対象です。
DXに取り組む会社が増えるほど、システム開発やデータ活用の仕事も増えます。新しいエンドを開拓するとき、「DXに取り組む企業は7割を超えている」という事実は話のきっかけになります。
データ5:IT人材の「質」の不足(IT人材白書2020)
IT人材白書2020では、ユーザー企業のIT人材の「質」が「大幅に不足」と答えた割合が39.5%(2019年度)でした。 2016〜2018年度の調査では33%前後だったので、上がっています。
ただし、6年以上前の数字です。使うなら「以前から不足は続いている」という流れの説明に限ります。最新の状況を示すときは、データ1〜4を使いましょう。
2030年に最大約79万人(中位は約45万人)のIT人材が足りなくなるという、経済産業省の試算も有名です。数字の中身と読み方はIT人材不足の2030年予測とデータ|経産省試算を営業目線で解説で解説しています。
最新データの探し方(4ステップ)
白書の数字は、IPAの公式ページから資料の本文PDFを開いて確認するのが確実です。 まとめサイトの数字は、年や質問がずれていることがあります。次の順番で探しましょう。
IPAの「DX動向」ページを開く:IPAのサイトで「DX動向」を探し、いちばん新しい年を選びます。2026年9月時点では「DX動向2026」です。
プレス発表の資料を先に読む:本文は数十ページあります。まずプレス発表のPDFで、要点の数字をつかみます。
本文かデータ集で元のグラフを確認する:使いたい数字が「何の質問に」「誰が答えた」割合かを見ます。DX動向2026には「データ集」のPDFもあります。
資料名・公表日・ページ番号をメモする:提案資料に載せるとき、出典として書くためです。
数字を使うときのチェックリスト
提案資料や社内報告に数字を載せる前に、次の5点を確認します。
資料名と年版を書いたか(例:「IPA『DX動向2026』」)
「大幅に不足」だけか、「やや不足」との合計かを区別したか
誰が答えた数字か(IT企業/ユーザー企業/日本/米国)を書いたか
2020年以前の数字を「最新」と書いていないか
予測(2030年など)と実際の調査結果を混ぜていないか
SES営業の現場での使い方と例文
白書のデータは、「なぜ今、外部の人材が必要なのか」を相手に納得してもらうために使います。 数字だけを並べず、相手の状況とつなげることがコツです。
| 場面 | 使うデータ | 伝え方のポイント |
|---|---|---|
| エンド・元請けへの要員提案 | データ1・2 | 人材不足は業界全体の課題だと示す |
| 新規エンドの開拓 | データ3・4 | DX・AIの取り組みが広がっていると示す |
| 単価交渉 | データ1・2 | 人材の取り合いが続いている背景を添える |
| 採用・社内説明 | データ1・5 | 不足が長く続いていることを示す |
要員提案メールに一文添える例
株式会社〇〇 ご担当者様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
IPA「DX動向2026」では、DXを進める人材が不足していると答えた企業が85.5%にのぼります。
貴社のプロジェクトでも、データ基盤の経験者が見つかりにくい状況かと存じます。
条件に合う人材が2名おりますので、スキルシートをお送りします。
2026年10月5日(月)までにご面談の候補日をいただけますと幸いです。
提案メール全体の組み立て方は要員提案メールの例文とテンプレ|SES営業の通過率を上げる書き方を参考にしてください。会社紹介の資料ならSESの会社紹介資料の作り方|BP・エンド向けの構成10枚の市場説明のページに入れます。
単価交渉で使うときの注意点
白書の数字は「背景の説明」に使い、単価を上げる直接の理由にはしないのが基本です。 相手が知りたいのは、その人材が現場でどう役立つかだからです。
「人材不足だから単価を上げてほしい」だけでは、相手は納得しにくいものです。スキルや実績を先に示し、そのうえで市場の背景として数字を添えましょう。タイミングや資料はSESの単価交渉のタイミング|更新の何か月前か・例文と資料5点で紹介しています。
やってはいけない使い方
IT人材白書2020の数字を「最新データ」として使う:6年以上前の調査です。
出典を書かずに数字だけ載せる:相手が確認できず、信用を落とします。
「大幅に不足」の割合と「不足」の合計を取り違える:数字の大きさがまったく変わります。
エンジニア本人に「不足しているから辞めないで」と使う:採用や定着には逆効果です。
人材不足の中で、提案できる人材を増やす方法
人材不足の中で成果を出す近道は、自社とBPの人材を、すぐ提案できる状態にしておくことです。 白書の数字が示すとおり、どの会社も人材を探しています。先に出した会社が選ばれやすくなります。
自分でやる方法
自社とBPの人材を1つの一覧にまとめる:スキル・単価・稼働開始日をそろえて記録します。
BPから届く人材メールを毎日整理する:空き予定の人材を見落とさないようにします。
案件が来たら、一覧から条件に合う人を探して提案する:探す時間が短いほど、提案が早くなります。
Excelやスプレッドシートでも始められます。ただ、BPが増えるとメールと一覧の更新に追われがちです。提案の順番はSESの待機エンジニアが複数いるときの営業の優先順位|判断表つきが参考になります。
チョータツで楽にする方法
チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。 3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
他社と連携すると、他社の営業中人材・営業中案件をデータベース化できます。 BPから届く情報を、自分で一覧に打ち直す手間が減ります。
AIが入力を手伝います。 人材や案件の情報を登録する作業が楽になります。
パートナーへのメール配信機能があります。 自社の人材情報を、BPにまとめて届けられます。
白書が示す「人材の取り合い」の中では、提案のスピードが差になります。自社とBPの人材をすぐ探せる状態を作っておきましょう。
よくある質問
- Q. IT人材白書の最新版はどこで読めますか?
- IT人材白書は2020年版が最後です。IPAのサイトで今も無料で読めます。最新の人材データを見たいときは、後継の「DX動向2026」を見てください。
- Q. IT人材白書2021や2022はありますか?
- ありません。2021年からは「DX白書」に統合されました。DX白書は2021年版と2023年版があり、2024年からは「DX動向」として毎年公表されています。
- Q. IPAのIT人材白書とDX白書は何が違いますか?
- IT人材白書はIT人材そのものを調べた資料です。DX白書は、人材に加えて戦略・技術もまとめて、企業のDXの進み具合を調べた資料です。
- Q. デジタル人材不足の最新の数字は?
- IPA「DX動向2026」では、DXを進める人材が不足していると答えた企業は85.5%でした(回答1,799社)。
- Q. 2030年のIT人材不足の予測はIT人材白書に載っていますか?
- 載っていません。2030年に最大約79万人が不足するという試算は、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年)が出典です。
- Q. 白書の数字を提案資料に載せてもよいですか?
- 出典を明記すれば、説明のための引用として使えます。資料名・年版・公表日を書き、グラフの転載ルールはIPAのサイトで確認してください。
まとめ
IT人材白書は、IPAが2020年版まで出していたIT人材の調査資料
2021年からDX白書、2024年からDX動向に引き継がれた。最新は「DX動向2026」
最新の数字では、DX人材が「不足」と答えた企業は85.5%
SES営業は、要員提案・新規開拓・単価交渉の背景説明に数字を使える
数字は「資料名・調査年・誰が答えたか」をセットで書く。古い数字を最新と言わない
人材不足の中では、自社とBPの人材をすぐ提案できる状態を作ることが近道
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
IPA(情報処理推進機構)「IT人材白書」(IT人材白書2020:2020年8月31日発行)
IPA「IT人材白書2020 概要版(PDF)」
IPA「DX白書」(DX白書2021・DX白書2023)
IPA「DX白書2023」(2023年3月16日)
IPA「「DX動向2024」を公開」(2024年6月27日)
IPA「「DX動向2025」を公開」(2025年6月26日)
IPA「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公開(PDF)」(2026年7月16日:DX動向2026)
IPA「DX動向2026」
IPA「デジタルスキル標準(DSS)」
経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」(2019年4月)