採用計画の立て方|SES企業は「目標稼働人数・待機率・退職率」から採用人数を逆算する(計画書ひな形つき)
公開日:2026年10月1日更新日:2026年10月1日
採用計画とは?SES企業ではなぜ必要か
採用計画とは、「いつまでに・どんな人を・何人・どの方法で・いくらで採るか」を前もって決めた計画のことです。
似た言葉の要員計画とは、事業に必要な人数を部署や職種ごとに決める計画のことです。要員計画が「何人いればよいか」、採用計画が「足りない分をどう集めるか」にあたります。
SES企業では、採用計画がそのまま売上計画になります。エンジニア1人が稼働すると、毎月の売上と粗利が生まれるからです。
逆に、採用が遅れると、取れたはずの案件をBPに回すか、お断りするしかありません。
人事部がある大企業と違い、中小のSES企業は営業責任者や経営者が採用を兼ねていることがほとんどです。
だからこそ、営業の数字(稼働人数・待機・案件の開始月)と採用の数字を、1枚の計画でつなげておくことが大切です。
採用計画を立てる前に集める数字4つ
計画の前に、自社の数字を4つだけそろえます。
どれも営業の管理表や給与台帳から出せる数字です。
| 数字 | 意味 | どこから出すか |
|---|---|---|
| 目標稼働人数 | 期末に案件で働いている人数の目標 | 事業計画・売上目標 |
| 待機率 | 在籍していても案件に入っていない人の割合 | 要員稼働表(アサイン表) |
| 離職率 | 1年間に辞めた人の割合 | 過去1〜2年の退職者数 |
| 案件の開始月 | 新しい案件が始まりやすい月 | 過去の契約開始日の一覧 |
目標稼働人数とは、期末の時点で案件に入って売上を生んでいる人数の目標のことです。
売上目標を「平均単価×12か月」で割ると、おおよその目安が出ます。
待機率とは、在籍しているエンジニアのうち、案件に入っていない人の割合のことです。
「待機人数 ÷ 在籍人数」で出します。計算のしかたはSESの稼働率の平均と上げ方|待機を減らす営業の打ち手5つで解説しています。
離職率とは、一定の期間に辞めた人の割合のことです。
厚生労働省の雇用動向調査では、1年間の離職者数を1月1日時点の常用労働者数で割って出しています。
令和7年(2025年)の結果は、全産業で13.7%、情報通信業で10.4%でした。
自社の過去の離職率がわかるなら、そちらを優先します。
社員が少ない会社は1人の退職で率が大きく動くので、2〜3年分をならした数字を使うと安定します。
「今期何人採るか」を逆算する4ステップ
採用人数は、目標稼働人数から逆算して4つの手順で出します。
先に式を示し、そのあとで計算例を見ていきます。
目標稼働人数を決める:期末に何人を稼働させたいかを決めます。
必要な在籍人数を出す:目標稼働人数 ÷(1 − 待機率)。待機が出る分だけ、在籍は多めに必要です。
辞める見込みの人数を出す:期初の在籍人数 × 離職率。小数は切り上げます。
採用人数を出す:必要な在籍人数 − 期初の在籍人数 + 辞める見込みの人数。
計算例:正社員の稼働を26人から30人に増やしたい会社
2026年10月〜2027年9月を1期とする会社で考えます。数字は説明のための例です。
期初(2026年10月)の正社員の在籍:28人(うち稼働26人・待機2人)
期末(2027年9月)の正社員の目標稼働人数:30人
待機率:5%
離職率:10.4%(情報通信業の値を仮に使用)
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 必要な在籍人数 | 30 ÷(1 − 0.05)= 31.6 | 32人 |
| 辞める見込み | 28 × 0.104 = 2.9 | 3人 |
| 採用人数 | 32 − 28 + 3 | 7人 |
この会社は、稼働を4人増やしたいだけでも、正社員を7人採る必要があるとわかります。
辞める人と待機の分を足し忘れると、採っても採っても稼働が増えない状態になります。
よくある失敗:稼働人数ではなく「在籍人数」で目標を立てる
「期末に社員30人」を目標にすると、待機が増えても目標は達成できてしまいます。
SES企業の目標は、売上につながる稼働人数で置くのが基本です。
待機が長引いたときの給与の扱いも、あらかじめ社内で決めておきます。
正社員・フリーランス・BPの3ルートの配分を決める
稼働人数を増やす入り口は、正社員採用・フリーランス・BPの3つです。
すべてを正社員でまかなおうとすると、採用費と待機のリスクが大きくなります。
BP(ビジネスパートナー)とは、自社の案件に人材を出してくれる取引先の会社のことです。
フリーランスとBPの人材は自社の社員ではないため、案件が終わっても待機の給与は発生しません。
そのかわり、1人あたりの粗利は正社員より小さくなりやすいです。
| ルート | 向いている案件 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 正社員採用 | 長く続く案件・育てたい人材 | 粗利が大きい・定着すれば安定 | 採用に数か月かかる・待機の給与が出る |
| フリーランス(例:xhoursで直接スカウト) | 期間が短い案件・珍しいスキル | 必要なときだけ契約できる | 契約形態の確認が必要 |
| BP(取引先の人材) | 急ぎの案件・人数が多い案件 | すぐに候補が出やすい | 商流が深くなり粗利が減りやすい |
配分の決め方3つの目安
1年以上続く見込みの案件は正社員を中心にします。粗利が大きく、育成にもつながります。
半年以内の案件や、社内にいないスキルはフリーランスで埋めます。
来月から急ぎで何人も必要な案件はBPで埋めます。複数の取引先に同時に声をかけられるからです。
4ステップの計算例の会社なら、「正社員の稼働30人・フリーランス4人・BP6人」のように、ルート別に目標を分けて書きます。
こうすると、正社員の採用が遅れたときに、どのルートで穴を埋めるかがすぐ決められます。
フリーランスへの声のかけ方は、フリーランスエンジニアの採用方法|探し方5つと契約前の確認点で解説しています。
待機エンジニアが出ている月は、採用より先に待機者の提案を進めます。優先順位のつけ方はSESの待機エンジニアが複数いるときの営業の優先順位|判断表つきが参考になります。
採用人数から「応募が何件必要か」を逆算する
採用人数が決まったら、次は「何件の応募が必要か」を逆算します。
選考の各段階で人数が減っていく流れを採用ファネル、次の段階に進む割合を歩留まりと呼びます。
自社の過去の実績から、段階ごとの歩留まりを出して掛け算を逆にたどります。
次の表の割合は説明のための例です。必ず自社の数字に置きかえてください。
| 段階 | 次に進む割合(例) | 7人採るのに必要な数 |
|---|---|---|
| 入社(内定承諾) | ― | 7人 |
| 内定 | 承諾率 50% | 14人 |
| 面接 | 内定率 30% | 47人 |
| 応募・スカウト返信 | 面接に進む率 40% | 118件 |
この例では、1年で約118件の応募が必要です。月にならすと約10件です。
月10件の応募が集まらない媒体なら、手法を増やすか変える必要があるとわかります。
媒体ごとの特徴はエンジニア採用媒体の比較|SES企業向けに求人サイト10選と選び方で比べられます。
採用の予算も、この人数から出します。
「採用人数 × 1人あたりの採用単価」が目安です。手法別の費用はSESのエンジニア採用単価の平均|手法別の費用と採用担当の役割をご覧ください。
採用活動の年間スケジュールの作り方
採用活動のスケジュールは、「案件が始まる月」から逆算して組みます。
SESでは、入社してもすぐ案件に入れなければ待機になるからです。
まず、過去1〜2年の契約開始日を並べ、自社で案件が始まりやすい月を確認します。
次に、その月の1〜2か月前に入社する人を採れるよう、募集の開始時期を前にずらします。
月別スケジュールの例(2026年10月〜2027年9月)
案件の開始が4月と10月に多い会社を例にした計画です。
| 時期 | 採用活動 | 営業側の動き |
|---|---|---|
| 2026年10月 | 計画書を確定し、媒体・スカウトを開始 | 期初の待機者を優先して提案 |
| 2026年11月〜12月 | 面接を集中して実施 | 翌年4月開始の案件情報を集める |
| 2027年1月〜2月 | 内定・入社の調整 | 内定者のスキルシートを準備 |
| 2027年3月 | 4月開始の案件に向けて入社 | 入社予定者を提案に乗せる |
| 2027年4月〜6月 | 上期の実績を見て人数を修正 | 足りない分をフリーランス・BPで補う |
| 2027年7月〜9月 | 10月開始に向けた採用・来期計画の準備 | 次の期の目標稼働人数を決める |
毎月の営業会議で見る3つの数字
採用の進み具合:今月までの入社数は、計画どおりか。
待機人数:待機が増えていれば、採用のペースを落とす。
退職の予定:見込みより多ければ、採用人数を足す。
採用だけで数字を追うと、待機が増えても採用を止められません。
営業の稼働表と同じ会議で見ることで、採りすぎも採り遅れも防げます。
会議の進め方は営業会議の進め方|SESで案件・要員を30分で回すアジェンダ例で紹介しています。
営業会議で共有する「採用の月次報告」例文
採用の担当者は、会議の前日に次の形で社内チャットへ投稿します。3行で終わるので、兼任でも続けられます。
【採用 10月実績】入社1人(計画1人)/面接6件/応募・返信15件
【待機と退職】待機2人(先月比±0)、11月末に退職予定1人
【来月の判断】退職1人分を補うため、11月はスカウトを週20通に増やします
採用計画書のひな形(1枚で作る)
採用計画書は、社内で数字と役割を共有するための1枚の資料です。
兼任の会社ほど、長い資料より「毎月見返せる1枚」にまとめるのがおすすめです。
| 項目 | 書く内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 期間 | 計画の対象期間 | 2026年10月〜2027年9月 |
| 目標稼働人数 | ルート別の期末目標 | 正社員30人/フリーランス4人/BP6人 |
| 前提の数字 | 待機率・離職率・期初人数 | 待機率5%・離職率10.4%・期初28人 |
| 採用人数 | 逆算した正社員の採用数 | 7人(上期4人・下期3人) |
| 求める人物像 | 職種・スキル・経験年数 | Javaでの開発経験3年以上など |
| 採用手法 | 使う媒体・スカウト・紹介 | 求人媒体2つ+スカウト+社員紹介 |
| 予算 | 採用人数×採用単価 | 手法別に上限額を書く |
| スケジュール | 月別の募集・面接・入社予定 | 月別スケジュール表を添付 |
| 担当 | 面接・連絡・媒体管理の担当者 | 一次面接は営業責任者、最終は社長 |
| 見直しの時期 | 数字を確認する会議 | 毎月の営業会議、4月に全体修正 |
「求める人物像」は、営業が今売りやすいスキルから決めます。
求人票への落とし込みはSESの求人票の書き方|応募が増える項目別の記入例とNG表現が参考になります。
採用計画でやってはいけないこと4つ
失敗の多くは、「辞める人」と「待機」を計算に入れないことから起きます。
計画を確定する前に、次の4点を確認してください。
退職者を0人で計算する:1人でも辞めると、稼働目標に届きません。
入社月と案件開始月をそろえない:入社してから案件探しを始めると、待機が長くなります。
正社員だけで全部埋めようとする:短い案件のために採用すると、案件終了後に待機が増えます。
一度決めた数字を1年見直さない:案件の数は月ごとに変わるので、毎月確認します。
採った人が辞めないことも、採用計画の一部です。
定着のための施策はSESエンジニアの離職対策|定着率を上げる施策7つと帰属意識でまとめています。
xhoursとチョータツブーストで、採用以外の入り口を用意する
正社員の採用は時間がかかるため、フリーランスとBPの入り口を並べて持っておくと計画が崩れにくくなります。
ここまでの手順は、ツールがなくても表計算ソフトで進められます。
そのうえで、採用が遅れた月の穴埋めを楽にする方法を紹介します。
xhours:ITフリーランスに直接スカウトする
xhoursは、企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスです。
数千名のフリーランスのデータベースから、案件に合う人を探せます。
「半年だけ必要な珍しいスキル」のように、正社員で採りにくい人材の入り口として使えます。
チョータツブースト:人材を出してくれる取引先を増やす
チョータツブーストは、SES営業の案件・人材の管理ツール「チョータツ」の中で、新しいパートナー企業を開拓できる機能です。
チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
取引先の数が増えるほど、急ぎの案件に人材を出してもらえる先が増えます。
チョータツブーストの登録は、下の登録ボタンから始められます。
よくある質問
- Q. 採用計画は何人くらいの会社から必要ですか?
- 人数に関係なく、年に1人以上採るなら作る価値があります。SES企業は1人の入社が売上に直結するため、10人未満の会社でも逆算の効果が大きいです。
- Q. 採用計画書と採用スケジュールは別に作るべきですか?
- 1枚の採用計画書に、月別スケジュールの表を添える形がおすすめです。数字と日程を同じ会議で見られるからです。
- Q. 待機率は何%で計算すればよいですか?
- 自社の過去1年の平均を使います。記録がなければ、要員稼働表から毎月の待機人数を数えるところから始めてください。
- Q. フリーランスやBPの人数も採用計画に入れるべきですか?
- 入れるべきです。正社員とは分けて、ルート別の稼働目標として書きます。採用が遅れたときの穴埋め先がすぐに決まります。
- Q. 採用計画はいつ見直せばよいですか?
- 毎月の営業会議で進み具合を確認し、半期ごとに人数そのものを修正します。大きな案件の獲得や失注があったときも見直します。
まとめ
SES企業の採用計画は、目標稼働人数から逆算して作る
採用人数 = 必要な在籍人数 − 期初の在籍人数 + 辞める見込みの人数
必要な在籍人数 = 目標稼働人数 ÷(1 − 待機率)
離職率の目安は、令和7年の情報通信業で10.4%。自社の実績があればそちらを使う
正社員・フリーランス・BPの3ルートに目標を分け、案件の長さとスキルで配分する
採用計画書は1枚にまとめ、営業の稼働表と同じ会議で毎月見直す
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年10月1日|更新日:2026年10月1日
参考資料(2026年9月30日確認)
厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」(産業別の入職と離職:情報通信業の離職率10.4%、産業計13.7%/用語の定義)