採用担当とは?SES企業で営業が採用を兼ねるときの仕事と役割分担
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
採用担当とは?会社の中での役割
採用担当とは、会社に必要な人材を集め、選考し、入社まで導く担当者のことです。多くの会社では人事部の中に置かれ、「採用担当者」「リクルーター」とも呼ばれます。
一般的な会社の採用担当は、次の流れを受け持ちます。この一連の流れを採用フローと呼びます。
何人・どんな人が必要かを決める(採用計画)
求人を出して応募を集める(母集団づくり)
書類と面接で選ぶ(選考)
内定を出し、入社の準備をする(内定・入社手続き)
入社した人が定着するよう見守る(フォロー)
SES企業の採用担当は「アサインまで」が仕事
SES企業の採用担当は、一般的な会社より仕事の範囲が1つ長いのが特徴です。エンジニアは入社しただけでは売上になりません。客先の案件に入って、はじめて売上が立ちます。
| 項目 | 一般的な会社 | SES企業 |
|---|---|---|
| 採用のゴール | 入社して部署に配属される | 入社して案件に参画する |
| 採りたい人の決め方 | 部署の要望で決める | 営業中の案件のスキルと単価で決める |
| 入社後の心配ごと | 職場になじめるか | 案件が決まらず待機にならないか |
| 必要な知識 | 人事・労務の知識 | 人事の知識+案件と単価の知識 |
待機とは、エンジニアが案件に入っておらず、売上が立っていない状態のことです。SES企業の採用担当は、この待機を出さないように採用を進めることが大切です。
中小SES企業では営業が採用担当を兼ねることが多い
社員が数十名までのSES企業では、専任の人事を置かず、営業や経営者が採用を兼ねる形がよく見られます。人事を1人雇う余裕がないことに加え、営業が採用に向いている理由があるからです。
営業が採用を兼ねるメリット
今売れる案件のスキルと単価を知っているので、「採ったのに案件がない」を防ぎやすい
面接の場で「この案件なら提案できます」と具体的に話せるので、候補者が入社をイメージしやすい
入社後にそのまま自分でアサインするので、採用から売上までの流れが途切れない
営業が採用を兼ねるデメリット
採用の作業に時間を取られ、既存案件の提案や面談調整が遅れる
応募対応が営業の空き時間に後回しになり、候補者を他社に取られる
求人票や面接で、法律で決められた表示や質問のルールを見落としやすい
デメリットの多くは「時間が足りない」ことから起きます。そのため、兼務ではやることの範囲と時間の上限を先に決めるのがコツです。
営業が採用を兼ねるときの仕事5つ
営業が兼務するときの仕事は、採用計画・求人媒体の運用・スカウト・面接・入社後のアサインの5つです。それぞれ、営業ならではの進め方があります。
| 仕事 | 主な作業 | 営業ならではのポイント |
|---|---|---|
| ①採用計画 | 人数・スキル・時期を決める | 3か月先の案件の見込みから逆算する |
| ②求人媒体の運用 | 求人票の作成・応募対応 | 案件の例と待機中の扱いを書く |
| ③スカウト | 候補者に直接声をかける | 実在する案件を添えて送る |
| ④面接 | 経験とスキルを確かめる | その場で提案できる案件を考える |
| ⑤入社後のアサイン | 案件への提案・面談調整 | 入社日から逆算して提案を始める |
①採用計画:案件の見込みから人数を決める
採用計画とは、いつまでに・何人・どんなスキルの人を採るかを決めることです。SES企業では、営業中の案件と、今後3か月で増えそうな案件から逆算します。
たとえば、Javaの開発案件が毎月5件以上届くのに、自社で出せる人が1人だけなら、Javaの経験者を採る理由になります。反対に、案件が少ないスキルの人を採ると、入社後に待機になりやすくなります。詳しい計算は、採用計画の立て方|SES企業の人材採用を稼働人数から逆算する手順で紹介しています。
②求人媒体の運用:求人票に案件の例を書く
求人媒体とは、求人を載せて応募を集めるサイトやサービスのことです。転職サイト、求人検索サイト、ハローワークなどがあります。
SESの求人票には、参画する案件の例と待機中の給与の扱いを書くと、応募者の不安が減ります。SESは客先で働くことが多いため、勤務地の書き方にも注意が必要です。
2024年4月1日から、募集のときに「就業の場所の変更の範囲」と「従事すべき業務の変更の範囲」を示すことが必要になりました。職業安定法施行規則の改正によるものです。客先常駐で働く場所が変わるSES企業は、求人票に「会社の定める場所(客先を含む)」のように変更の範囲を書いておきます。書き方の例は、SESの求人票の書き方|応募が増える項目別の記入例とNG表現にまとめています。
③スカウト:案件を添えて直接声をかける
スカウトとは、会社から候補者に直接声をかける採用の方法のことです。ダイレクトリクルーティングとも呼ばれます。知名度で大手に負けやすい中小SES企業にとって、応募を待つより効きやすい方法です。
営業が送るスカウトの強みは、実在する案件を添えられることです。「AWSの構築経験を活かせます」より、「10月開始のAWS構築案件(リモート週3日)に提案できます」のほうが返信を得やすくなります。例文はSESエンジニアへのスカウト文面|返信率を上げる例文8つとコツを参考にしてください。
④面接:スキルと「提案できるか」を同時に見る
営業が面接に入る一番の価値は、その場で提案先の案件を考えられることです。職務経歴を聞きながら、「この経験ならあの案件の面談に出せる」と判断できます。
ただし、面接で聞いてはいけない質問があります。厚生労働省は、就職差別につながるおそれがある事項を示しています。本籍・出生地、家族の職業や収入、住宅の状況、宗教、支持政党、尊敬する人物、愛読書などです。案件の面談で客先に聞かれる内容とは別物なので、面接では仕事の経験とスキルだけを聞くようにします。
⑤入社後のアサイン:入社日から逆算して提案する
アサインとは、エンジニアを案件に割り当てることです。SES企業の採用は、アサインが決まって初めて完了します。
内定を出した時点で、入社日の2〜3週間前から案件への提案を始めるのが目安です。たとえば2026年11月2日(月)入社なら、10月中旬には提案を始めます。提案から客先との面談、参画決定までには日数がかかるからです。参画初日までの準備はSESの参画初日までに営業がやる準備|入場チェックリストと案内文が参考になります。稼働の管理はSESのアサイン表の作り方|要員稼働表のテンプレ項目と更新ルールで紹介しています。
兼務の時間配分は「週8時間まで」を目安にする
営業が採用を兼ねるなら、採用に使う時間は週の2割(週40時間のうち8時間)までを目安にします。これは編集部の目安です。これを超えると、既存案件の提案や更新の確認が遅れ、売上に響きやすくなります。
営業と採用の担当の分け方は、SES営業の分業体制の作り方|案件・人材・事務の担当分けの型でも型を紹介しています。
週8時間の配分例
| 作業 | 時間の目安 | 進め方のコツ |
|---|---|---|
| 応募の確認と返信 | 毎日15分×5日 | 朝の決まった時間にまとめて返す |
| スカウトの送信 | 週2時間 | 今週の案件3件に合わせて送る |
| 面接 | 週3時間(2〜3件) | 面接日を週2日に固定する |
| 計画と振り返り | 週1時間 | 応募数・面接数・入社数を記録する |
応募への返信は、遅くとも翌営業日までに返すようにします。返信が遅いと、候補者は先に返事をくれた他社の選考に進んでしまいます。
営業と採用を分ける目安
営業と採用の役割は、「採用の作業が営業の時間を圧迫し始めたとき」に分けます。次のどれか1つに当てはまったら、分担を見直す時期です。
分担を見直すサイン(チェックリスト)
採用に使う時間が、3週間続けて週8時間を超えている
応募への返信が、2営業日以上遅れることがある
月の面接が10件を超えている
年間で5人以上を採る計画がある
採用のせいで、既存案件の更新確認や提案が遅れたことがある
分け方は3段階で考える
いきなり人事を1人雇う必要はありません。次の順で、少しずつ切り離すのがおすすめです。
事務だけ切り離す:応募の受付・日程調整・合否連絡を、営業事務やバックオフィスに任せる
集める人と選ぶ人を分ける:求人媒体とスカウトは採用の担当、面接と見極めは営業が受け持つ
専任の採用担当を置く:採用計画から入社手続きまでを任せ、営業は面接の最終確認とアサインだけに入る
どの段階でも、面接の最後に営業が入る形は残します。案件と単価を知っている人が見ないと、「採ったのに提案できない」人を採ってしまうおそれがあるからです。
| 段階 | 営業の担当 | 採用の担当(または事務) |
|---|---|---|
| 1. 事務を切り離す | 計画・スカウト・面接・アサイン | 応募受付・日程調整・連絡 |
| 2. 集めると選ぶを分ける | 面接・アサイン | 計画・求人媒体・スカウト・日程調整 |
| 3. 専任を置く | 最終面接・アサイン | 計画から入社手続きまで全部 |
採用担当に向いている人の特徴
採用担当に向いているのは、人の話を最後まで聞けて、返事が早く、数字で振り返れる人です。SES企業では、これに「案件を知っていること」が加わります。
| 特徴 | なぜ向いているか |
|---|---|
| 話を聞くのが得意 | 候補者の経験を引き出し、合う案件を見つけられる |
| 返事が早い | 候補者を他社に取られにくい |
| 数字で振り返れる | 応募数・面接数・入社数から、効く方法を選べる |
| 案件と単価を知っている | 入社後にすぐ提案できる人を見極められる |
| 約束を守る | 面接日程や合否連絡の信頼が、会社の評判になる |
反対に、自分の話が長い人や、連絡を後回しにしがちな人は、採用担当では苦労しやすいです。営業の中から兼務者を選ぶなら、面談の段取りが丁寧な人を選ぶとうまくいきやすくなります。
初めて採用担当になった営業がやること5ステップ
初めて採用を任されたら、まず「どんな人を、いつまでに、何人」を決めることから始めます。次の5つの手順で進めます。
案件の棚卸しをする:営業中の案件と、今後3か月で増えそうな案件のスキルを一覧にする
採る人の条件を決める:スキル・経験年数・希望単価の目安を、案件に合わせて3つまでに絞る
集め方を2つ選ぶ:求人媒体1つとスカウト1つなど、手間と費用に合わせて絞る
面接で聞くことを決める:経験した工程、使った言語、チームの人数など、案件の面談で聞かれる項目に合わせる
記録をつける:手法ごとに、応募数・面接数・内定数・入社数・アサインまでの日数を記録する
応募者への最初の返信例文
応募が届いたら、その日のうちに次のような返信を送ります。
件名:【株式会社〇〇】ご応募ありがとうございます(面接日程のご案内)
〇〇様
株式会社〇〇の△△です。このたびはご応募いただき、ありがとうございます。
私は営業を担当しており、面接では参画できる案件の例もご紹介します。面接はオンラインで30分ほどを予定しています。
次の候補日から、ご都合のよい日時をお知らせください。・10月6日(火)10:00〜/15:00〜
・10月7日(水)13:00〜/17:00〜
・10月9日(金)11:00〜/16:00〜ご不明な点があれば、お気軽にご返信ください。
「営業が面接をする」と最初に伝えると、候補者は案件の話を聞けると期待し、面接に来やすくなります。
正社員の採用が間に合わないときの手
正社員の採用は、求人を出してから入社まで数か月かかることがあります。案件の開始が近いなら、正社員の採用と並行して、外の人材で埋める手を持っておきます。
自分でやるなら、次の2つから始められます。
BPに人材を出してもらう:取引のあるBP(案件や人材を紹介し合う取引先)に、案件のスキルを伝えて提案を頼む
フリーランスに直接声をかける:SNSや知人の紹介で、条件に合うフリーランスを探して連絡する
どちらも、BPの数や人脈が少ないと、なかなか人が見つかりません。探し方の詳細は、フリーランスエンジニアの採用方法|探し方5つと契約前の確認点で紹介しています。
xhoursとチョータツブーストで、探す手間を減らす
もっと楽にするなら、DrivenXの2つのサービスが使えます。
xhours(エックスアワーズ)は、企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから、案件に合う人を探せます。兼務の営業でも、案件の条件に合う人へすぐに声をかけられます。
チョータツブーストは、SES営業の案件・人材の管理ツール「チョータツ」の中で、新しいパートナー企業を開拓できる機能です。人材を出してくれるBPを増やしたいときに使えます。チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
| 困りごと | 自分でやる方法 | もっと楽にする方法 |
|---|---|---|
| 案件に合うフリーランスがいない | SNSや紹介で探して連絡する | xhoursで直接スカウトする |
| 人材を出してくれるBPが少ない | 交流会や募集ページで探す | チョータツブーストで開拓する |
よくある質問
- Q. 採用担当とは、どんな仕事をする人ですか?
- 会社に必要な人を集めて、選考し、入社まで導く人です。SES企業では、入社後に案件へアサインするところまでが仕事になります。
- Q. 会社の採用担当は、人事部の人でないといけませんか?
- 決まりはありません。中小のSES企業では、営業や経営者が採用を兼ねることがよくあります。案件と単価を知る営業が入ると、入社後に提案できる人を見極めやすくなります。
- Q. 初めて採用担当になったら、まず何をすればいいですか?
- 営業中の案件と、今後3か月で増えそうな案件を一覧にします。そこから、採る人のスキル・人数・時期を決めるのが最初の一歩です。
- Q. 採用担当に向いている人はどんな人ですか?
- 人の話を最後まで聞けて、返事が早く、数字で振り返れる人です。SES企業では、案件と単価を知っていることも強みになります。
- Q. 営業と採用の担当は、いつ分けるべきですか?
- 採用の時間が週8時間を超える状態が続く、応募への返信が遅れる、といったサインが出たら分けどきです。まず応募受付や日程調整などの事務から切り離します。
- Q. 面接で聞いてはいけないことはありますか?
- あります。厚生労働省は、本籍・出生地、家族の職業や収入、宗教、支持政党などを、就職差別につながるおそれがある事項としています。面接では、仕事の経験とスキルに関係することだけを聞きます。
まとめ
採用担当とは、必要な人を集めて選び、入社まで導く担当者のことです。SES企業ではアサインまでが仕事です。
中小SES企業では営業が採用を兼ねることが多く、案件を知っていることが大きな強みになります。
兼務の仕事は、採用計画・求人媒体・スカウト・面接・アサインの5つです。時間は週8時間までを目安にします。
分担は、事務→集める→選ぶの順で少しずつ切り離します。面接の最後には営業が入る形を残します。
案件の開始に採用が間に合わないときは、フリーランスへの直接スカウトやBPからの提案を並行して使います。
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
厚生労働省「公正な採用選考の基本」(就職差別につながるおそれがある事項)
厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」(従事すべき業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約の更新基準)