雇用契約と業務委託契約の違い|SES企業が社員とBPを使い分ける基準と、業務委託なのに雇用とみなされる失敗例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

雇用契約と業務委託契約の違いは「指示できるか」

雇用契約と業務委託契約のいちばんの違いは、会社が働き方を指示できるかどうかです。雇用契約なら会社は業務の進め方や勤務時間を指示できます。業務委託契約では、仕事のやり方は受ける側に任せます。

雇用契約とは、働く人が会社の指示に従って働き、会社がその対価として給料を払う契約のことです。民法第623条の「雇用」にあたり、労働基準法や労働契約法が適用されます。

業務委託契約とは、会社が外部の会社や個人に仕事を任せ、報酬を払う契約の呼び名のことです。法律上は、成果物の完成を約束する請負契約か、作業そのものを行う準委任契約のどちらかにあたります。SESでフリーランスのエンジニアと結ぶ契約は、ふつう準委任契約です。

比べる点雇用契約(社員)業務委託契約(個人事業主のBP)
根拠となる法律民法第623条、労働基準法、労働契約法民法第632条(請負)・第656条(準委任)、フリーランス法
働き方の指示会社ができるできない(本人に任せる)
払うお金給料(労働時間に対して払う)報酬(仕事に対して払う)
社会保険・雇用保険会社が加入させ、保険料の一部を負担本人が国民健康保険・国民年金に加入
残業代・有給休暇あるない
契約の終わり方解雇には厳しい制限がある契約期間の満了や解約(フリーランス法の予告ルールあり)

SESの現場では、自社で雇う社員を「プロパー」、他社や個人事業主の要員を「BP」と呼び分けます。呼び方の違いはSESのプロパーとBPの違い|営業が使い分ける意味と提案時の注意点で詳しく説明しています。

どちらになるかは契約書ではなく「働き方の実態」で決まる

業務委託契約書を交わしていても、実態が雇用と同じなら労働基準法上の「労働者」と判断されます。契約の名前は判断の決め手になりません。

労働者性とは、形式が業務委託でも、実態は会社の指揮監督の下で働き、報酬を受けている状態のことです。労働基準法第9条は、労働者を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています。

判断の基準は、1985年(昭和60年)の労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」です。厚生労働省は今もこの基準を使っています。

中心になる考え方は「使用従属性」です。使用従属性とは、他人の指揮監督の下で働き、その働きに対して報酬を受けている関係のことです。

判断の要素雇用(労働者)に近い状態業務委託に近い状態
仕事を断る自由頼まれた仕事を断れない断ることができる
業務の指示進め方を細かく指示される進め方は本人が決める
時間・場所の拘束始業・終業の時刻が決められ、管理される時間の使い方は本人に任される
代わりの人本人以外が行うことを認めない補助者や代わりを立てられる
報酬の決まり方欠勤や遅刻で差し引かれる仕事や成果に対して払われる
事業者らしさ道具・PCをすべて会社が用意する自分の道具を使い、報酬額も高め
専属性ほかの会社の仕事を事実上できない複数の取引先と仕事ができる

1つの項目だけで決まるわけではありません。 多くの項目が雇用寄りになるほど、労働者と判断されやすくなります。8項目のチェック表と判例は業務委託の労働者性の判断基準|偽装フリーランスを防ぐ8項目にまとめています。

偽装フリーランスとは、業務委託契約なのに、実態は雇われた労働者と同じ働き方になっている状態のことです。厚生労働省は2024年11月1日から、全国の労働基準監督署に相談窓口を置いています。名前は「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」です。

SESで指示できる範囲:社員・BP・客先の3者で違う

SESでは「誰が誰に指示できるか」が契約ごとに違います。社員には自社が指示できますが、BPには自社も客先も働き方の指示ができません。 客先は、社員にもBPにも直接の指示はできません。

指揮命令とは、仕事の進め方・時間・順番などを具体的に指示し、従わせることです。SESの契約は準委任契約なので、客先には指揮命令の権利がありません。客先が直接指示すると、偽装請負の問題になります。

指示する人 → 受ける人自社の社員(雇用契約)個人事業主のBP(準委任契約)
自社(SES企業)から業務の進め方・勤務時間を指示できる働き方の指示はできない。仕事の内容と条件の取り決めだけ
客先から直接の指示はできない(偽装請負になる)直接の指示はできない(偽装請負・労働者性の両方の問題)

つまり、個人事業主のBPを客先に出すときは、2重に注意が必要です。客先が指示すれば偽装請負の問題が出ます。自社が社員と同じように管理すれば、労働者性の問題が出ます。

現場でどこまでがOKかは、準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20で具体例を挙げています。

コストの違い:社員は固定費、BPは変動費

社員は案件がなくても給料と社会保険料がかかる固定費です。BPは稼働した分だけ報酬を払う変動費です。1人あたりの粗利は社員のほうが大きくなりやすい一方、待機のリスクは社員だけにかかります。

社員にかかる会社負担の社会保険料

社員を雇うと、給料のほかに会社負担の保険料がかかります。2026年度の料率で、東京都の協会けんぽに加入する会社(40歳未満の社員)の例を計算しました。

保険全体の料率会社の負担
健康保険(協会けんぽ東京都)9.85%4.925%
子ども・子育て支援金0.23%0.115%
厚生年金18.3%9.15%
雇用保険(一般の事業)1.35%0.85%

合計すると、会社の負担は給与の約15.04%です。このほかに労災保険料と子ども・子育て拠出金もかかります。40歳以上の社員には、介護保険料(全体1.62%、会社負担0.81%)が加わります。

計算例:月額単価70万円の案件に出す場合

同じ月額単価70万円の案件に、社員とBPを出したときの1か月の粗利を比べます。数字は説明のための仮の例です。

項目社員(月給40万円)BP(仕入れ単価60万円)
売上70万円70万円
人にかかる費用給与40万円+会社負担約6万円=約46万円報酬60万円
1か月の粗利約24万円10万円
待機した月の損益約46万円の赤字(休業手当で一部を減らせる場合あり)0円(報酬は発生しない)

社員の会社負担は、40万円×15.04%=約6万円で計算しています。実際の保険料は、給与の等級(標準報酬月額)で決まるので少し変わります。社員は賞与や交通費、採用費もかかります。

この例では、社員が2か月待機すると、約4か月分の粗利が消えます。待機中の給与の考え方はSESの待機期間の給与と対応|休業手当の計算例と早く案件に入る7手順で説明しています。

社員とBPの使い分け:4つの判断基準

社員で雇うか、BPと組むかは、案件の長さ・育成・スキルの替えのききにくさ・待機リスクの4つで決めるのがおすすめです。どれか1つではなく、4つを並べて考えます。

判断基準社員(雇用)が向くBP(業務委託)が向く
案件の長さ1年以上の長期、次の案件も続く見込み3〜6か月の短期、スポットの募集
育成若手を育て、チームで上流工程に上げたい即戦力が必要で、育成の時間がない
スキル自社の強みとして社内に残したい技術自社にない専門スキルを一時的に補う
待機リスク次の案件を用意できる営業力がある案件が途切れやすく、待機を抱えられない

判断の手順は次のとおりです。

  1. 案件の期間・スキル・単価を、募集条件として書き出す

  2. 自社の社員で合う人がいるか、次に空く人がいるかを確認する

  3. 社員がいなければ、BPの人材情報から条件の合う人を探す

  4. 社員を新たに雇う場合は、この案件のあとも続けて出せる案件があるかを確認する

  5. BPで組む場合は、次の章のチェック10項目で、業務委託として成り立つかを確認する

業務委託でエンジニアを「自社の人」のように扱わない

BPと長く組むと、社員と同じように扱いたくなります。しかし、社員と同じルールを当てはめるほど、雇用とみなされるリスクが上がります。長く一緒に働きたい人なら、本人の同意を得て社員として雇うことも選択肢です。

失敗例:業務委託なのに勤怠を管理して雇用とみなされる

SES企業でよくある失敗は、業務委託のBPに社員と同じ勤怠ルールを当てはめることです。善意の管理でも、実態が雇用に近づきます。

失敗例の流れ

あるSES企業が、個人事業主のエンジニアと準委任契約を結び、客先に常駐させたケースを考えます。管理を楽にするため、社員と同じ仕組みを使いました。

  1. 社員用の勤怠システムで、毎日9時と18時に出退勤を打刻させた

  2. 9時を過ぎたら「遅刻」とし、3回で1日分の報酬を差し引いた

  3. 休むときは、前日までに営業へ申請して許可を得るルールにした

  4. 自社の社内研修と月1回の帰社日への参加を義務にした

  5. ほかの会社の仕事を受けるときは、事前の許可を必要にした

この5つがそろうと、判断の要素のうち「時間の拘束」「報酬の決まり方」「断る自由」「専属性」が雇用寄りになります。本人が労働基準監督署に相談すれば、労働者と判断される可能性が高い状態です。

労働者と判断されると、残業代の支払いなど使用者としての義務が問題になります。社会保険の加入もさかのぼって問われることがあります。

どこからがNGか:OKな管理とNGな管理

BPの稼働時間を知ること自体は問題ありません。精算のために時間を報告してもらうのはOK、時刻を決めて守らせるのはNGと考えるとわかりやすいです。

場面OKな管理(業務委託として成り立つ)NGな管理(雇用に近づく)
稼働時間月末に稼働報告書で合計時間を報告してもらう始業・終業の時刻を決め、打刻させる
遅れ・休み作業に影響するときは連絡してもらう遅刻・欠勤で報酬を差し引く、休みを許可制にする
仕事の進め方作業の範囲と納期、報告の頻度を契約で決める毎日の作業内容や順番を細かく指示する
ほかの仕事制限しない(秘密保持と競業だけ契約で決める)ほかの取引先の仕事を許可制にする

稼働報告書とは、1か月の作業時間や作業内容をまとめて報告する書類のことです。精算幅(月の稼働時間の上限・下限)の計算に使うので、業務委託でも出してもらって問題ありません。

客先の勤怠管理がどこから違法かは、SESの勤怠管理は違法?客先が管理するNG例と日報・週報の扱いで解説しています。

BPに運用ルールを伝えるときの例文

契約開始前に、次のように「時間の報告」と「連絡」だけを求める形で伝えます。

例文・テンプレート
件名:〇〇案件 参画にあたってのご連絡事項

〇〇様

株式会社△△の□□です。11月からの参画に向けて、
ご連絡事項を3点お送りします。

1. 稼働報告:毎月末日に、稼働報告書で合計時間と作業内容をご提出ください
2. お休みの連絡:作業に影響する場合は、前もってご連絡ください
 (許可は不要です。客先との調整は弊社が行います)
3. 作業のご依頼:客先からの依頼は、弊社の□□を通してお伝えします

ご不明点があれば、お気軽にご連絡ください。

BPと業務委託契約を結ぶ前のチェック10項目

個人事業主のBPと契約する前に、次の10項目を営業が確認しておくと、雇用とみなされるリスクを下げられます。1つでも「いいえ」なら、契約書か運用を見直します。

#確認すること見る場所
1契約書に、作業の範囲と報告の方法が書かれているか業務委託契約書・個別契約
2始業・終業の時刻を自社が指定していないか契約書・運用ルール
3遅刻・欠勤で報酬を差し引く定めがないか契約書・精算条件
4休みを「許可制」にしていないか運用ルール
5報酬が「精算幅つきの月額」など仕事に対して決まっているか個別契約
6客先が本人に直接指示しない体制になっているか客先との契約・現場の窓口
7ほかの取引先の仕事を禁止・許可制にしていないか契約書の競業条項
8社員向けの研修・帰社日への参加を義務にしていないか運用ルール
9フリーランス法の取引条件(報酬額・支払期日など)を書面かメールで示したか発注書・3条通知
10報酬の支払期日が、役務の提供を受けた日から60日以内か個別契約・支払いサイト

9と10は、2024年11月1日に施行されたフリーランス法の義務です。9の取引条件の明示は、従業員のいない発注者も含めたすべての発注者の義務です。10は、従業員を使うか役員が2人以上いる発注者の義務です。詳しくはフリーランス法のSES対応|発注者の義務7つと実務チェック表を確認してください。

7の「ほかの仕事を許可制にしない」と、掛け持ちで稼働が足りなくなる問題は分けて考えます。発覚したときの対応はSESのBP要員の案件掛け持ちが発覚したら|契約違反の判断と対応で解説しています。

社員を雇うときに押さえること

社員として雇う場合は、労働条件をはっきり示すことと、客先に指示させない配属のルールが大切です。雇用契約は解雇の制限が厳しいので、入り口での取り決めが後のトラブルを防ぎます。

会社は、社員を雇うときに賃金・労働時間などの労働条件を書面で示す義務があります(労働基準法第15条)。SES企業は、客先の就業場所や、待機中の給与の扱いも決めておく必要があります。書き方は雇用契約書の書き方|SES企業がエンジニアを雇うときの記載事項で条文例とあわせて説明しています。

社員を客先に常駐させるときも、客先が直接指示すれば偽装請負になります。自社の社員だから安心、ではない点に注意してください。

チョータツで社員とBPの人材を案件と並べて管理する

社員とBPの使い分けは、「今どの案件が営業中で、どの人材が空いているか」がわかると判断しやすくなります。自分でやるなら、案件と人材をスプレッドシートに1行ずつまとめます。列は「社員/BP」「契約形態」「稼働開始日・終了日」を作ります。

ただ、案件メールや人材メールは毎日たくさん届きます。手作業で表を更新し続けるのは大変です。

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。案件と人材の情報を管理し、チームで共有できます。提案前に、案件ごとの条件を確認する使い方ができます。

  • 案件と人材の情報を1か所で管理・共有できる

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる

  • パートナーへのメール配信機能がある

  • AIが入力を手伝う

  • 3,000社以上が利用していて、無料で始められる

自社の社員で埋まらない案件は、連携先の営業中人材からBPを探す、という流れを作れます。個人のフリーランスに直接声をかけたいときは、xhoursも使えます。xhoursとは、企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスのことです(xhoursを見る)。

よくある質問

Q. 雇用契約と業務委託契約の違いを一言でいうと?
会社が働き方を指示できるかどうかです。雇用契約は指示でき、給料・社会保険・残業代が伴います。業務委託契約は仕事を任せる契約で、進め方は本人が決めます。
Q. 業務委託契約書を交わしていれば、雇用とみなされることはない?
いいえ。労働者かどうかは契約書の名前ではなく、働き方の実態で判断されます。時間の拘束や細かい指示があれば、業務委託契約でも労働者と判断されることがあります。
Q. 業務委託のBPに稼働報告書を出してもらうのは勤怠管理になる?
精算のために月の合計時間を報告してもらうだけなら、問題になりにくいです。始業・終業の時刻を決めて打刻させたり、遅刻で報酬を差し引いたりすると雇用に近づきます。
Q. 業務委託のエンジニアに残業代は必要?
業務委託として実態が成り立っていれば、残業代は不要です。精算幅の上限を超えた分は、契約で決めた超過単価で精算します。実態が雇用と判断されると、残業代の支払いが問題になります。
Q. 自社の社員を業務委託に切り替えることはできる?
本人の同意があれば契約は変えられます。ただし契約書だけ変えて、働き方が社員のときと同じなら雇用のままと判断されます。会社から一方的に切り替えを迫るのは避けてください。
Q. 契約社員と業務委託の違いは?
契約社員は期間を決めた雇用契約で、社員と同じく労働基準法や社会保険が適用されます。業務委託は雇用ではないので、それらは適用されません。

まとめ

  • 雇用契約は「指示できる・給料を払う」、業務委託契約は「任せる・報酬を払う」契約

  • 雇用か業務委託かは、契約書の名前ではなく働き方の実態(使用従属性)で決まる

  • SESでは、客先はどちらにも直接指示できない。BPには自社も働き方を指示できない

  • 社員の会社負担の社会保険料は給与の約15%(2026年度・東京都・40歳未満の例)

  • 社員は粗利が大きい固定費、BPは待機リスクのない変動費

  • BPに打刻・遅刻の控除・休みの許可制・専属を課すと、雇用とみなされやすい

  • 精算のための稼働報告はOK、時刻を決めて守らせるのはNG

  • BP契約の前に、チェック10項目とフリーランス法の義務を確認する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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