秘密保持契約書(NDA)に印紙は必要?不要な理由と、SESの契約書セット別の判定表・押印と製本の要否

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

秘密保持契約書に印紙が不要な理由

秘密保持契約書に印紙が要らないのは、印紙税法が定める20種類の課税文書のどれにも当たらないからです。

秘密保持契約書(NDA)とは、取引で知った相手の秘密を、漏らしたり目的外に使ったりしないと約束する契約書のことです。SESでは、新しいBP(ビジネスパートナー)と案件・人材の情報をやりとりする前に結ぶことが多い書類です。条項の中身はSESの秘密保持契約(NDA)ひな形|BPと結ぶ条項と注意点8つで解説しています。

課税文書とは、印紙税がかかる文書のことです。国税庁は、課税文書を次の3つをすべて満たす文書と説明しています。

  1. 印紙税法の別表第一にある20種類の文書に書かれる事項(課税事項)が書いてある

  2. その事項を証明する目的で作られた文書である

  3. 法律で非課税とされた文書ではない

秘密を守る約束は、20種類のどれにも入っていません。そのため、秘密保持だけを定めたNDAは不課税文書(そもそも印紙税の対象外の文書)になります。

「機密保持契約書」「守秘義務契約書」も同じ扱い

名前が「機密保持契約書」「守秘義務契約書」でも、中身が秘密保持の約束だけなら印紙は不要です。国税庁は、課税文書かどうかを名前ではなく、書かれた文言の実質的な意味で判断するとしています。

書類の名前中身印紙
秘密保持契約書秘密保持の約束だけ不要
機密保持契約書秘密保持の約束だけ不要
守秘義務に関する誓約書秘密保持の約束だけ不要
名前はNDAでも取引条件入り単価・支払方法など必要になることがある

印紙が必要になるのはどんなとき?境目は「取引の条件」

秘密保持契約書に印紙が必要になるのは、請負などの取引条件を書き込んだときです。代表的なのは第7号文書と第2号文書の2つです。

第7号文書とは、「継続的取引の基本となる契約書」のことで、印紙は1通4,000円です。国税庁は、次の条件をすべて満たすものを第7号文書としています。

条件内容
だれとだれか原則として営業者(事業をしている会社など)どうし
どんな取引か売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負を2回以上続けて行う
何を決めているか目的物の種類・取扱数量・単価・対価の支払方法・債務不履行の損害賠償の方法・再販売価格のどれか1つ以上
期間3か月以内で更新の定めがないものは除く

第2号文書とは、「請負に関する契約書」のことです。契約金額が1万円以上100万円以下なら200円、金額の記載がなければ200円で、金額が大きくなるほど高くなります。

NDAが課税文書になりやすい書き方の例

次のような条文をNDAに入れると、課税文書になる可能性があります。

  1. 「今後の個別案件は、請負として1人月あたり単価○円で行う」と単価を決めている

  2. 「成果物の対価は月末締め翌月末払いとする」と支払方法を決めている

  3. 「秘密情報を使った開発業務を○円で請け負う」と請負の内容と金額を書いている

秘密保持の義務に違反したときの損害賠償の条文だけなら、秘密保持契約であることに変わりはありません。迷ったら、取引条件は基本契約書や個別契約書に書き、NDAは秘密保持だけにするのがいちばん確実です。

SESの契約書セット別・印紙の判定表

SESの契約でよく作る書類を、印紙の要否で整理すると次のとおりです。秘密保持条項があるかどうかは、どの書類でも判定に影響しません。 見るべきは「請負を含むか」「取引条件や金額があるか」です。

書類主な中身印紙の目安
秘密保持契約書(NDA)秘密保持だけ不要
基本契約書(準委任だけ)準委任の取引ルール不要(委任は7号の対象外)
基本契約書(請負も含む)請負の支払方法など第7号で4,000円
個別契約書・注文請書(請負)作業内容と金額第2号で金額に応じて200円〜

準委任とは、仕事の完成ではなく、決められた業務を行うこと自体を約束する契約です。SESの多くは準委任で結ばれます。準委任だけの契約書は第2号にも第7号にも当たらないため、印紙は不要です。くわしくは業務委託契約の印紙はいくら?準委任は必要?判定表と貼り方で解説しています。

よくある誤解:「基本契約書に秘密保持条項を入れたから4,000円」

基本契約書に4,000円の印紙が必要になるのは、請負を含む取引条件があるからです。秘密保持条項を入れたからではありません。

反対に、秘密保持条項を基本契約書から切り出して別のNDAにしても、基本契約書の印紙は安くなりません。印紙を気にしてNDAを分けるかどうかを決める必要はない、ということです。請負を含む基本契約書の金額の考え方は、業務委託契約の印紙はいくら?準委任は必要?判定表と貼り方にまとめています。

秘密保持契約書に押印は必要?

秘密保持契約書への押印は、法律上の必須条件ではありません。契約は、当事者どうしが合意すれば成立します。

内閣府・法務省・経済産業省は、2020年6月19日に「押印についてのQ&A」を公表しました。特別な定めがある場合を除き、書面の作成も押印も契約成立の要件ではないとしています。押印がなくても、契約の効力には影響しません。

ただし、押印には証拠としての意味があります。民事訴訟法228条4項により、本人の署名か押印がある私文書は、本人が作ったものと推定されます。あとで「そんな約束はしていない」と争われたときに、立証の手間が減ります。

結び方印紙押印
紙で2部作り、それぞれ保管不要(NDAのみの場合)法律上は任意。押すのが一般的
PDFをメールでやりとり不要不要(電子署名などで代える)
電子契約サービス不要不要(電子署名で本人確認)

営業としては、相手の会社のルールに合わせるのが現実的です。大手の元請けやエンド企業は、社内規程で押印や電子契約の方法を決めていることがあります。締結の進め方は契約書の締結の流れ5ステップ|署名欄の書き方と電子契約の選び方で確認できます。

秘密保持契約書の製本・割印・契印は必要?

製本も、割印・契印も、法律上の義務ではありません。 どれも「あとから差し替えられていない」ことを示すための実務上の工夫です。

  • 製本とは、複数ページの契約書を1冊に綴じ、とじ目に帯(製本テープ)を貼ることです。

  • 契印とは、ページのつなぎ目にまたがって押す印のことで、ページの差し替えを防ぎます。

  • 割印とは、2部の契約書を少しずらして重ね、両方にまたがって押す印のことです。2部が同じものだと示せます。

NDAは2〜4ページ程度のことが多く、ホチキス留めと契印で十分なケースがほとんどです。相手から製本の指定があれば、それに合わせましょう。

誤って印紙を貼った・貼り忘れたときの対処

課税文書ではないNDAに印紙を貼ってしまった場合は、税務署で還付を申請できます。国税庁によると、手続きは次のとおりです。

  1. 「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」に必要事項を書く

  2. 印紙を貼った原本そのものを添えて、納税地の税務署に出す

  3. 確認後、銀行口座への振込か郵便局を通じた送金で返金される

還付を受けられるのは、文書を作った日から5年以内のものです(2026年9月30日時点の国税庁の案内)。

反対に、課税文書になったNDAに印紙を貼り忘れると、過怠税がかかります。過怠税とは、貼るべき印紙を貼らなかったときにかかる罰の税金のことです。本来の印紙代とその2倍、合計3倍です。税務調査の前に自分から申し出れば1.1倍に下がります。

秘密保持契約書を送る前のチェックリスト

BPや客先にNDAを送る前に、次の6項目を確認しましょう。

  1. NDAの条文が秘密保持の約束だけになっている(単価・支払方法・請負の金額が入っていない)

  2. 取引条件は基本契約書・個別契約書のほうに書くと決めている

  3. 基本契約書が請負を含むかを確認し、含むなら4,000円の印紙を準備している

  4. 相手が紙・PDF・電子契約のどれで結びたいかを確認している

  5. 紙で結ぶ場合、押印と契印をどうするかを相手とそろえている

  6. 締結日・有効期間・相手の会社名を、自社の取引先リストに記録している

相手に送る確認メールの例文

件名:秘密保持契約書の締結方法のご確認

株式会社○○
営業部 ○○様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日お話しした秘密保持契約書の案をお送りします。

締結方法について、2点ご確認をお願いできますでしょうか。

  1. 紙・PDF・電子契約のうち、ご希望の方法

  2. 紙の場合、押印と製本のご指定の有無

なお、本契約書は秘密保持に関する内容のみのため、収入印紙は不要と考えております。
2026年10月9日(金)までにご返信いただけますと幸いです。

株式会社△△ 営業部 □□

自社でやるなら:NDAと契約書を「分けて」管理する

NDAの印紙で迷わないいちばんの方法は、書類ごとに役割を固定することです。

  1. NDA:秘密保持の約束だけを書く。社内ひな形を1つに決め、条文を勝手に足さない

  2. 基本契約書:取引の共通ルールを書く。請負を含むかどうかを表紙メモに書いておく

  3. 個別契約書・注文請書:案件ごとの作業内容・期間・金額を書く

さらに、取引先ごとに「NDA締結日」「基本契約の有無」「契約形態(準委任・請負)」を一覧表にしておくと便利です。新しい案件の話が来たとき、どの書類がそろっていて、どれを追加で結ぶ必要があるかがすぐわかります。Excelでの管理方法はSESの案件・人材管理をExcelで無料で行う方法|テンプレ付きで紹介しています。

NDAを結んでも、案件情報の転送ルールを決めていないと守られません。NDAを結んだBPに案件を無断で転送されたときの動き方は、SESの案件情報を無断で転送・再配信されたら|対応と防ぐルールにまとめています。

チョータツでBPとの取引情報をまとめる

NDAを結んだあとは、BPと案件・人材の情報をやりとりする段階に入ります。ここで情報がメールやExcelに散らばると、「どの案件が準委任で、どれが請負か」を確かめるのに時間がかかります。

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。

できること営業での使いどころ
案件・人材の管理・共有案件ごとの条件を1か所で確認し、契約書を作る前の確認に使う
パートナーへのメール配信NDAを結んだBPに、案件・人材の情報をまとめて送る
他社との連携連携先の営業中案件・営業中人材をデータベース化する
AIによる入力の手伝い案件・人材の登録の手間を減らす

印紙の判断そのものは人が行う必要があります。そのうえで、判断の材料になる案件情報をすぐ引き出せる状態にしておくと、契約書づくりで迷う時間が減ります。

よくある質問

Q. 秘密保持契約書に印紙を貼らないと、契約は無効になりますか?
無効にはなりません。そもそも秘密保持だけのNDAは印紙不要です。課税文書に印紙を貼り忘れた場合も、契約の効力はそのままで、過怠税がかかるだけです。
Q. 機密保持契約書と秘密保持契約書で、印紙の扱いは違いますか?
違いません。印紙の要否は名前ではなく中身で決まります。どちらも秘密保持の約束だけなら不要です。
Q. SESの基本契約書に秘密保持条項を入れたら、印紙は必要ですか?
秘密保持条項があるかどうかは関係ありません。請負を含む取引条件が書いてあれば第7号文書として4,000円、準委任だけなら不要です。
Q. 秘密保持契約書に押印しなくても大丈夫ですか?
法律上は押印しなくても契約は成立します。ただし押印は本人が作った証拠になるため、紙で結ぶなら押すのが一般的です。
Q. 秘密保持契約書は製本しないといけませんか?
製本は義務ではありません。ページ数が少なければ、ホチキス留めと契印で十分なことが多いです。
Q. エンジニア個人に出してもらう秘密保持の誓約書に印紙は要りますか?
秘密保持の約束だけなら不要です。客先に出す誓約書の注意点はSESの誓約書を客先に出すときの注意点|守秘義務の範囲と文例で解説しています。
Q. NDAを電子契約で結ぶと、何が変わりますか?
印紙はもともと不要ですが、押印・製本・郵送の手間がなくなります。国税庁は、メールで送った電子データには印紙税がかからないとしています。

まとめ

  • 秘密保持の約束だけのNDAは不課税文書なので、印紙は不要

  • 印紙の要否は名前ではなく中身で決まる。単価・支払方法・請負の金額を入れると課税文書になることがある

  • SESの基本契約書の印紙は、秘密保持条項ではなく請負を含む取引条件で決まる(含めば4,000円、準委任だけなら不要)

  • 押印・製本・割印・契印は法律上の義務ではない。押印は証拠として役立つので、紙なら押すのが一般的

  • 誤って貼った印紙は、原本を添えて税務署に申請すれば還付を受けられる(5年以内)

  • NDAは秘密保持だけ、取引条件は基本契約書・個別契約書に、と役割を分けるのが迷わないコツ

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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