IT人材の単価推移を公的データで確認|SESの単価は上がっているのか、値上げ交渉と仕入れ単価の見直しに使う手順
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
IT人材の単価とは?推移を見る前の3つの前提
IT人材の単価とは、エンジニア1人が1か月(または1日)働くことに対して、お客さんが払う金額のことです。SESでは、1か月あたりの金額(人月単価)で話すのが一般的です。単価の推移を読む前に、3つの前提を押さえておきましょう。
前提1:SES単価そのものの公的統計はありません。
国の統計に「SESの単価」という項目はありません。そのため、この記事では一番近い公的な数字として、厚生労働省の派遣料金を使います。
前提2:派遣料金は、SES単価とは契約が違います。
派遣料金とは、派遣会社が派遣先の会社から受け取る料金のことです。派遣は指揮命令の仕組みがSES(準委任)と違います。ただ、「IT技術者1人にいくら払われているか」を毎年同じ方法で集めた、数少ない公的データです。
前提3:平均値なので、経験の浅い人から上級者まで混ざっています。
数字は事業所ごとの平均をさらに平均したものです。個別の案件の単価ではなく、全体の流れ(上がっているか、下がっているか)を見る数字として使います。
公的データの種類と、それぞれでわかることはSESの単価相場|職種別の月額目安と公的データの使い方で詳しく整理しています。
IT人材の単価推移(厚生労働省の派遣料金・令和元年度〜6年度)
IT系の派遣料金は、令和元年度から6年度まで毎年上がっています。下がった年は1度もありません。厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」の「情報処理・通信技術者」の数字をまとめると、次のとおりです(2026年9月時点で確認)。
| 報告年度 | 派遣料金(1日8時間・税込) | 前年度からの伸び | 派遣労働者の賃金(1日8時間) |
|---|---|---|---|
| 令和元年度 | 31,539円 | ― | 19,439円 |
| 令和2年度 | 32,147円 | +1.9% | 19,779円 |
| 令和3年度 | 32,394円 | +0.8% | 19,886円 |
| 令和4年度 | 32,871円 | +1.5% | 20,120円 |
| 令和5年度 | 33,387円 | +1.6% | 20,430円 |
| 令和6年度 | 34,382円 | +3.0% | 21,032円 |
※「前年度からの伸び」は、厚生労働省の数字をもとに編集部で計算しました。派遣料金は消費税を含む額です。
月額に直すとどれくらい上がったか
1日の料金を月20日で計算すると、SESの月単価と比べやすくなります。消費税(10%)を除いた月額は、次のとおりです。
| 報告年度 | 1日の料金(税込) | 月20日・税込 | 月20日・税抜 |
|---|---|---|---|
| 令和元年度 | 31,539円 | 約63.1万円 | 約57.3万円 |
| 令和6年度 | 34,382円 | 約68.8万円 | 約62.5万円 |
税抜の月額で見ると、5年で約5万円上がった計算です。1年あたりでは、平均で約1万円ずつ上がってきたことになります。
推移から読み取れる3つのこと
ずっと上がり続けている:5年間、前年度を下回った年はありません。
最近になって伸びが大きい:令和5年度までは1〜2%でしたが、令和6年度は約3%でした。
全業務の平均ほどは伸びていない:全業務の平均は、同じ5年で23,629円から26,257円へ約11%上がりました。IT系は約9%で、もともと高い水準から少しずつ上がっています。
賃金も上がっている?料金と賃金の差の推移
エンジニアの賃金も、単価と同じペースで上がっています。IT系の派遣労働者の賃金は、令和元年度の19,439円から令和6年度の21,032円へ、約8%上がりました。
料金と賃金の差が料金に占める割合(マージン率に近い数字)を計算すると、次のとおりです。マージンとは、単価から人件費を引いた、会社の取り分のことです。
| 報告年度 | 派遣料金 | 賃金 | 差の割合 |
|---|---|---|---|
| 令和元年度 | 31,539円 | 19,439円 | 約38.4% |
| 令和6年度 | 34,382円 | 21,032円 | 約38.8% |
差の割合は、5年でほとんど変わっていません。つまり、料金が上がった分は、ほぼ賃金の上昇に回っていると読めます。派遣料金は税込なので、実際の会社の取り分はこの割合より小さくなります。
SES営業にとって、ここが大事なポイントです。単価を据え置いたまま給与だけを上げると、自社の粗利が削られていきます。マージン率の相場はSESのマージン率の平均と相場|計算式・適正ライン・説明例文付きで解説しています。
IT業界の単価が上がっている4つの理由
IT業界の単価が上がっている一番の理由は、エンジニアを求める会社に対して、人が足りていないことです。そこに人件費の上昇が重なっています。主な理由は次の4つです。
| 理由 | 中身 | SES営業への影響 |
|---|---|---|
| 人材不足 | 経済産業省の2019年3月の試算では、2030年に最大で約79万人(78.7万人)のIT人材が不足する | 経験者の取り合いになり、仕入れ単価が上がる |
| 賃上げ | 2026年の民間主要企業の春の賃上げ率は5.18%で、3年連続5%台 | エンジニアの給与を上げないと採用・定着が難しい |
| 労務費の転嫁のルール | 人件費の上昇分を取引価格に反映するための国の指針がある | 値上げを相談しやすい環境になっている |
| DX・AIの需要 | 業務のデジタル化やAI活用の案件が増えている | クラウド・データ・AIの経験者は高単価になりやすい |
79万人は需要の伸びが最も大きい場合の数字で、中位の試算では約45万人です。値上げの根拠に使うときは「最大約79万人」と幅を添えます。
労務費の転嫁指針とは
労務費の転嫁指針とは、内閣官房と公正取引委員会が2023年11月29日に公表した、人件費の上昇分を取引価格に反映するための行動ルールのことです。発注する側・受注する側それぞれが取るべき行動がまとめられています。SESの単価交渉での使い方は労務費の価格転嫁指針をSESの単価交渉で使う方法|改定条項の例つきをご覧ください。
IT人材の単価は今後も上がる?見通しと注意点
IT人材の単価は、しばらくは上がる方向が続くと考えるのが自然です。人材不足と賃上げという2つの理由が、すぐには消えないためです。ただし、すべての人材が同じように上がるわけではありません。
編集部では、次のように見ています。
上がりやすい人材:上流工程(要件定義・設計)の経験者、クラウド・セキュリティ・データ・AIの経験者、PM・PMO
上がりにくい人材:テストや運用の定型作業が中心の人材、経験の浅い若手
注意が必要な点:生成AIで一部の作業が早くなると、人月(人数×月数)で払う考え方そのものが見直される可能性があります
生成AIの影響はSESへの生成AIの影響|人月モデルと単価の変化、営業の備え5つで詳しく扱っています。「全体は上がっている」という数字だけで、すべての要員の値上げを求めるのは避けましょう。スキルや担当範囲の変化とセットで説明するのが基本です。
SES営業が単価推移を仕事で使う2つの場面
単価推移のデータは、売る側(値上げ交渉)と買う側(仕入れ単価の見直し)の両方で使えます。SES営業は両方の立場に立つため、同じデータを2つの向きで使い分けます。
| 場面 | 自社の立場 | 推移のデータの使い方 |
|---|---|---|
| 値上げ交渉 | 売る側(客先・上位会社に対して) | 「世の中の単価と賃金が上がっている」根拠として示す |
| 仕入れ単価の見直し | 買う側(BP・フリーランスに対して) | 相手の値上げ要請が妥当かを判断する物差しにする |
仕入れ単価とは、BP(取引先の会社)やフリーランスから人材を受け入れるときに、自社が払う単価のことです。売る単価と仕入れる単価の両方が上がる流れなので、片方だけ動かすと粗利がずれる点に気をつけます。
値上げ交渉で単価推移を使う5つの手順
値上げ交渉では、単価推移を「上げ幅の目安」と「上げる理由」の2つに使います。次の5つの手順で準備しましょう。
今の単価と、前回の改定日を確認する
要員ごとに「今の単価」「最後に改定した月」を一覧にします。2年以上据え置きの要員が、最初の候補です。公的データで上げ幅の目安を決める
IT系派遣料金の直近の伸びは約3%、2026年の民間主要企業の春の賃上げ率は5.18%です。編集部では3〜5%前後を最初の目安にすることをおすすめします。スキル・担当範囲の変化を書き出す
参画してから増えた作業、身につけた技術、任されている役割を3つほど書き出します。今動いている案件・人材の単価と比べる
同じスキルの人材が、今いくらで提案されているかを確認します。「スキル見合い」の案件なら、提示額の考え方はスキル見合いとは?SES案件の単価の意味と提示額の決め方を参考にします。契約更新の1〜2か月前に相談する
更新の直前では、相手が予算を組み直せません。相談のタイミングはSESの単価交渉のタイミング|更新の何か月前か・例文と資料5点で詳しく解説しています。
計算例:月65万円の要員を3%・5%上げる場合
| 上げ幅 | 上がる金額(月) | 改定後の単価(月) | 1年間の増加額 |
|---|---|---|---|
| 3% | 19,500円 | 669,500円 | 234,000円 |
| 5% | 32,500円 | 682,500円 | 390,000円 |
月の差は2〜3万円でも、1年では20〜40万円の差になります。要員が5人いれば、1年で100万円を超える差になることもあります。
例文:単価改定をお願いするメール
件名:【ご相談】〇〇(要員名)の単価改定について
株式会社〇〇 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社〇〇の〇〇です。
2026年12月末の契約更新に向けて、〇〇の単価についてご相談させてください。2027年1月から、月額650,000円(税抜)を670,000円(税抜)に改定いただけないでしょうか。
理由は次の2点です。
・〇〇は参画後、〇〇の設計とレビューも担当するようになりました。
・厚生労働省の集計では、IT技術者の派遣料金は令和元年度から6年度まで毎年上がり、直近では約3%上昇しています。弊社でもエンジニアの処遇改善を進めており、継続して参画いただくための改定です。
ご検討のうえ、11月中旬までにお打ち合わせのお時間をいただけますと幸いです。
仕入れ単価の見直しで単価推移を使う方法
BPやフリーランスから値上げを求められたときも、単価推移が判断の物差しになります。相手の要請が世の中の伸びの範囲かどうかを、まず確認します。
要請された上げ幅を%に直す:「月3万円アップ」なら、今の単価に対する割合を計算します。
公的データの伸びと比べる:3〜5%前後なら、世の中の水準に近い要請です。
売る単価に反映できるか確認する:仕入れだけ上がると粗利が減ります。客先への値上げとセットで考えます。
同じスキルの人材の単価と比べる:代わりの人材を探すと、今いくらかかるかを確認します。
回答の期限を決めて返事をする:保留したまま更新日を迎えると、人材が離れることがあります。
世の中の水準に近い要請を一方的に断ると、BPとの関係が悪くなり、人材が他社の案件に移ることもあります。また、2026年1月から施行された取適法(中小受託取引適正化法)では、協議に応じずに一方的に代金を決めることが問題になる場合があります。法律上の注意点は取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法で解説しています。
単価推移のデータを使うときにやってはいけないこと
公的データは便利ですが、使い方を間違えると信頼を失います。次の4つは避けましょう。
派遣料金をそのままSESの相場として示す:契約の形が違うので、「近い参考値」として紹介します。
税込と税抜を混ぜる:派遣料金は税込です。SES単価は税抜で話すことが多いので、そろえてから比べます。
全体の伸びだけで全員の値上げを求める:要員ごとのスキルや担当範囲の変化を必ず添えます。
出典と年度を書かない:「厚生労働省・令和6年度」のように、どの資料のいつの数字かを明記します。
自社で「単価の推移」を記録する方法
公的データの弱点は、1年以上前の数字で、細かいスキル別に分かれていないことです。そこで、自社で見ている案件・人材の単価を毎月記録すると、より新しい推移がわかります。
記録する項目を決める:日付、職種、主なスキル、経験年数、単価、商流の位置の6項目がおすすめです。
月に1回、同じ条件で集計する:たとえば「Java・経験5年・二次請け」のように条件をそろえて、平均を出します。
半年ごとに公的データと並べる:自社の数字と公的データの向きが同じかを確かめます。
| 記録項目 | 記入例 |
|---|---|
| 日付・職種 | 2026年9月・開発(バックエンド) |
| スキル・経験年数 | Java/Spring・経験5年 |
| 単価・商流 | 月68万円・二次請け |
Excelでも始められますが、案件メールや人材メールから毎回手で書き写すのは手間がかかります。記録が続かないと、推移は見えてきません。
チョータツで今動いている単価を集める
手作業での記録を楽にするなら、チョータツが使えます。チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が利用していて、無料で始められます。
他社の営業中案件・営業中人材がデータベースになる:パートナーと連携すると、相手の営業中の案件・人材を自社のデータベースとして見られます。
今の単価を公的データと並べられる:1年以上前の公的データに、今動いている案件・人材の単価を足して判断できます。
自社の案件・人材もまとめて管理できる:AIが入力を手伝うので、記録の手間を減らせます。
パートナーへのメール配信もできる:改定後の単価で、人材情報をまとめて案内できます。
届いた案件メール・人材メールを手で仕分けている場合は、チョータツメールAIも役立ちます。届いたメールをAIが案件メールと人材メールに切り分けるので、情報を集める手間が減ります。
BPの値上げが続き、仕入れ先を広げたい場合は、xhoursも使えます。企業がITフリーランスに直接スカウトできるサービスです。
よくある質問
- Q. IT人材の単価は上がっていますか?
- 上がっています。厚生労働省の集計では、IT系の派遣料金は令和元年度の1日31,539円から令和6年度の34,382円へ、約9%上がりました。5年間、前年度を下回った年はありません。
- Q. IT業界の単価が上がっている理由は何ですか?
- 主な理由は人材不足と賃上げです。2026年の民間主要企業の春の賃上げ率は5.18%で、3年連続5%台でした。人件費の上昇分を取引価格に反映するための国の指針も後押ししています。
- Q. 値上げ交渉では何%上げるのが目安ですか?
- 公的な相場はありません。IT系派遣料金の直近の伸び約3%と、春の賃上げ率5.18%を物差しに、3〜5%前後から考えるのが現実的です。担当範囲が大きく増えた場合は、それ以上を相談してもかまいません。
- Q. 最新の単価推移のデータはいつ出ますか?
- 厚生労働省の派遣事業の集計(速報)は、近年は3月末ごろに公表されています(令和4年度分は2024年3月29日、令和5年度分は2025年3月31日)。令和6年度の集計(速報)は2026年3月31日に公表されました。
- Q. 公的データより新しい単価を知る方法はありますか?
- 今動いている案件・人材の単価を集めるのが一番の方法です。チョータツでパートナーと連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベースとして見られます。
まとめ
IT系の派遣料金は、令和元年度31,539円から令和6年度34,382円へ、5年で約9%上がった
直近の伸びは約3%。賃金も約8%上がり、料金と賃金の差の割合はほぼ変わっていない
上がる理由は、人材不足・賃上げ・労務費の転嫁の指針・DXやAIの需要
単価推移は、値上げ交渉(売る側)と仕入れ単価の見直し(買う側)の両方の根拠になる
上げ幅は3〜5%前後を最初の目安に、スキルや担当範囲の変化とセットで説明する
公的データは古いので、今動いている案件・人材の単価と並べて使う
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
厚生労働省「労働者派遣事業の事業報告の集計結果について」
厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)(PDF)」(2026年3月31日公表、表6・表7)
厚生労働省「令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報、一部訂正)(PDF)」(令和元年度の数字を含む)
厚生労働省「令和8年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況を公表します」(2026年7月31日公表。資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業428社の集計)
経済産業省「IT人材需給に関する調査 報告書(PDF)」(2019年3月。2030年の不足は約16万〜79万人、中位で約45万人)
内閣官房・公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(2023年11月29日公表、2026年1月1日改正)