ニアショア開発の単価相場|地方と東京の賃金差、地方SESの提案単価と都内案件を取る6ステップ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
ニアショア開発とは?
ニアショア開発とは、システム開発の仕事を、国内の地方にある会社や拠点に任せることです。「ニア(近い)」と「ショア(岸)」を合わせた言葉で、海外に任せるオフショア開発と対になっています。
SES営業の現場では、次の2つの意味で使われることが多いです。
地方にいるエンジニアが、都内の案件にリモートで参画すること(常駐型)
地方の会社が、都内の客先から開発を持ち帰って自社で進めること(持ち帰り型)
| 比べる点 | ニアショア(国内の地方) | オフショア(海外) |
|---|---|---|
| 言葉・時差 | 日本語、時差なし | 通訳やブリッジ役が必要なことが多い |
| 移動 | 必要なら国内出張で対応できる | 渡航が必要 |
| 人件費の差 | 東京より低いが、差は小さめ | 国によって大きい |
| 向いている仕事 | 細かいやりとりが多い開発・運用 | 仕様が固まった大量の開発 |
海外との比較は、オフショア開発と国内SESを比較|単価・品質の違いと営業の提案方法で詳しく解説しています。
地方と東京の単価差は公的データで示す
地方と東京の単価差を客先に説明するときは、厚生労働省の都道府県別の賃金データを使うのが確実です。ニアショアの単価を集めた公的な統計はないため、原価の差から説明します。
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」は、2025年の都道府県別の賃金を公表しています。一般労働者・男女計・全産業の数字です。全国より高いのは東京都・神奈川県・愛知県・大阪府の4都府県だけです。
| 都道府県 | 賃金(月額、千円) | 東京=100 | 最低賃金(2026年度、円) |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 418.3 | 100 | 1,280 |
| 大阪府 | 348.9 | 83 | 1,231 |
| 愛知県 | 341.6 | 82 | 1,195 |
| 広島県 | 320.2 | 77 | 1,141 |
| 福岡県 | 314.3 | 75 | 1,114 |
| 宮城県 | 313.7 | 75 | 1,098 |
| 石川県 | 305.6 | 73 | 1,113 |
| 北海道 | 297.1 | 71 | 1,131 |
| 沖縄県 | 277.4 | 66 | 1,086 |
| 全国 | 340.6 | 81 | 1,177(加重平均) |
最低賃金は、厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金全国一覧」の改定額です。発効日は都道府県ごとに違い、東京都は2026年10月1日です。
データを使うときの3つの注意
この表を営業資料に使うときは、次の3点を必ず添えましょう。
全産業の平均で、IT職だけの数字ではありません。東京は給与の高い業種が多いため、差が大きく出やすいです。
賃金の差が、そのまま単価の差になるわけではありません。客先が払う単価は、スキル・工程・商流で決まります。
最低賃金の差は、賃金より小さいです。東京1,280円に対し、最も低い宮崎県は1,085円で、約85%です。
つまり、「地方は東京の7割の単価で出せる」と言い切るのは正しくありません。「地方は人件費が東京の7〜8割程度なので、その分を一部お客さまに還元できる」という伝え方が、データに沿った説明です。
地方SESの提案単価の決め方
地方SESの提案単価は、自社の原価に粗利を乗せた額を下限、東京の同じスキルの相場を上限にして、その間で決めます。安さだけで選ばれると、利益も人材も残りません。
当研究所がおすすめする手順は次の4つです。
自社の原価を出す:給与・社会保険料・通信費・出張費など、1人1か月にかかる費用
下限を出す:原価÷(1−目標の粗利率)で、赤字にならない最低の単価を出す
上限を調べる:同じスキル・工程の都内案件の単価を集め、東京の相場をつかむ
間で決める:客先が「東京より安い」と感じ、自社も粗利を取れる位置に置く
東京の相場の調べ方は、SESの単価相場|職種別の月額目安と公的データの使い方で解説しています。
計算例:福岡の開発エンジニアを都内案件に出す
福岡の自社エンジニア(Java 5年)を、都内のフルリモート案件に出す例です。数字は計算のしかたを示すための例です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 原価(給与・社会保険料など) | 1か月あたり | 40万円 |
| 下限の単価 | 40万円÷(1−0.25)※粗利率25% | 約53万円 |
| 東京の相場(同じスキル) | 都内のリモート可案件の単価を集計 | 65万円 |
| 提案単価 | 下限と上限の間 | 58万円 |
58万円なら、客先は東京の相場より月7万円(約11%)安く頼めます。自社の粗利は18万円で、粗利率は約31%です。
もし相場いっぱいの65万円で出せば、粗利率は約38%になります。反対に下限の53万円まで下げると、交渉の余地がなくなります。原価の差の半分くらいを客先に還元するのが、続けやすい落としどころです。
粗利率とは、売上から原価を引いた利益が、売上に占める割合のことです。
都内案件の提案の型3つと単価の考え方
地方から都内案件を取るときは、フルリモート常駐・一部出社・持ち帰りの3つの型のどれで提案するかを先に決めます。型によって、契約の形と単価の考え方が変わります。
| 型 | 契約の形 | 単価の考え方 |
|---|---|---|
| フルリモート常駐 | 準委任(人月) | 東京の相場より少し下げて出す |
| 一部出社(月数回) | 準委任(人月) | 出張の交通費・宿泊費を単価か実費で乗せる |
| 持ち帰り(自社で開発) | 請負または準委任 | 人月の積み上げ+管理費。完成責任の分を乗せる |
持ち帰り案件とは、客先の仕事を自社の事務所に持ち帰って進める案件のことです。受託開発とも呼ばれ、SESの常駐とは責任の範囲が違います。
フルリモート常駐で気をつけること
フルリモートでも、準委任である以上、客先が要員に直接指示しない形を守る必要があります。チャットで客先の担当者が細かく作業を指示すると、偽装請負を疑われることがあります。
報告の窓口を自社のリーダーにする、作業の範囲を契約書に書く、などの工夫が必要です。OKとNGの基準は、SESのテレワークは偽装請負になる?在宅常駐のOK・NG基準で確認できます。
一部出社の交通費は先に決める
月に数回の出社がある案件では、地方からの交通費・宿泊費を誰が払うかを契約前に決めます。単価に含めるか、実費で別に請求するかで、実際の利益が大きく変わります。
たとえば月2回の出張で1回4万円かかるなら、月8万円です。単価58万円の案件なら、粗利18万円の半分近くが消えます。交通費の決め方は、SESの交通費の請求ルール|精算の記載例と契約で決める4項目で解説しています。
持ち帰り案件は請負か準委任かを確認する
持ち帰り案件で「完成させて納品してほしい」と言われたら、請負契約になることが多いです。請負契約とは、仕事の完成を約束し、完成した成果に対して報酬を受け取る契約のことです。
請負は完成の責任を負うため、見積もりにはやり直しや遅れのリスク分を乗せます。準委任との見分け方は、準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シートを参考にしてください。
地方SESが都内案件を取る6ステップ
地方SESが都内案件を取る近道は、リモートで出せる人材をまとめ、東京のBPとつながることです。そのうえで、リモート可の案件に絞って提案します。当研究所がおすすめする順番は次の6ステップです。
リモートで出せる人材をリストにする:スキル・経験年数に加え、在宅の通信環境、出張できる頻度も書く
リモートの実績を言葉にする:「フルリモートで2年、報告は日報と週1回の定例」など具体的に書く
東京のBPとつながる:オンラインの交流会や、パートナー募集ページから連絡する(新規開拓はチョータツブーストも使える)
リモート可の案件を集める:案件メールの「勤務地」「リモート可否」を見て、フルリモート・一部出社の案件に絞る
提案メールで地方の強みを伝える:単価の目安、出社できる頻度、移動の段取りを先に書く
最初の1件で実績をつくる:最初は条件を少し広げても1件決め、客先の評価をもとに次の提案につなげる
東京の交流会や、オンラインで参加できる場の探し方は、SES交流会 東京・大阪・名古屋ほかエリア別の探し方|参加前チェック付きにまとめています。
やってはいけないこと
地方であることを隠して提案する:面談の後で「出社できない」とわかると、信頼を失います
単価だけで勝負する:安さで選ばれた案件は、次の単価交渉でさらに下げられやすいです
出社の頻度をあいまいにする:「必要なら行けます」ではなく、「月2回まで」と数字で伝えます
リモート案件が途中で出社必須に変わったときの交渉は、SESのリモート案件が出社必須に変わったら|条件交渉と退場の判断で解説しています。
都内案件への提案メール例文
地方から都内案件に提案するときは、単価の目安と、出社・移動の条件を最初に書くと返事が早くなります。客先が一番気にするのは「本当にリモートで回るか」です。
件名:【要員提案】Javaエンジニア(福岡在住・フルリモート可) 株式会社〇〇 □□様 いつもお世話になっております。株式会社△△の◇◇です。 貴社の〇〇案件に、下記の要員をご提案いたします。 ・要員:Bさん(Java 5年、Spring Boot、AWS) ・居住地:福岡県(フルリモートで2年の参画実績あり) ・単価:月額58万円(税抜) ・出社:初週の立ち上げと、月1回までは対応可能 ・出張費:初週分は弊社負担、以降は実費精算でご相談 ・開始:2026年11月2日(月)から可能 報告は弊社リーダー経由で、日報と週1回の定例で行います。 ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
「地方だから安く」と値下げを求められたら
「地方の会社なのだから、もっと安くできるはず」と言われることがあります。そのときは、原価の内訳ではなく、提供する価値と相場で説明するのが基本です。原価を開示すると、そこを基準に値切られやすくなります。
伝えるポイントは次の3つです。
同じスキルの東京の相場より、すでに下げていること
リモートでも報告・品質の体制を自社で整えていること
出社や出張の費用を自社でも負担していること
取引の相手方が大きな会社の場合、法律で守られることもあります。取適法(中小受託取引適正化法)は、2026年1月1日に施行されました。対象の取引では、協議に応じず一方的に代金を決めることが禁止されています。詳しくは取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法で解説しています。
チョータツで地方から都内の案件・BPとつながる
自分で都内案件を探す場合は、東京のBPから届く案件メールを読み、リモート可のものを選んでExcelにまとめます。ただ、地方にいると東京のBPとのつながりが少なく、そもそも届く案件の数が限られます。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 都内の案件を集める | 東京のBPからのメールを待つ | 連携した他社の営業中案件をデータベースで見られる |
| リモートで出せる人材を知らせる | BCCで一斉送信 | メール配信機能でパートナーに配信できる |
| 人材の情報をまとめる | Excelとスキルシートが別々 | 人材の情報として管理・共有できる |
| 情報を入れる | 1件ずつ手で書き写す | AIが入力を手伝う |
チョータツの連携は、場所に関係なく使えます。東京のBPと一度つながれば、その会社の営業中案件を地方からでも見られるので、出張しなくても案件探しの母数を増やせます。
まだ東京にBPが少ない場合は、チョータツブーストで新しいパートナー企業を開拓できます。チョータツの中で使える、新規パートナーの開拓機能です。
よくある質問
- Q. ニアショア開発の単価相場はいくらですか?
- ニアショアだけの公的な統計はありません。厚生労働省の2025年の賃金では、東京418.3千円に対し福岡314.3千円で、約75%です。単価はこの原価の差と東京の相場をもとに決めます。
- Q. 地方と東京で、SESの単価はどれくらい違いますか?
- 決まった差はありません。人件費は東京の7〜8割程度ですが、単価はスキル・工程・商流で決まります。都内案件にリモートで入るなら、東京の相場から少し下げた単価が目安です。
- Q. ニアショアのリモート案件は、単価が下がりますか?
- 東京の相場より少し下げて出すことが多いです。ただし原価の差を全部値引きに使う必要はありません。出社の頻度や報告の体制を示し、価値で説明しましょう。
- Q. 地方のエンジニアを都内案件に提案するコツは?
- 居住地、出社できる頻度、移動費の扱いを最初に書くことです。リモートでの参画実績と、報告のしかたも具体的に伝えると、客先の不安が減ります。
- Q. 持ち帰りの開発案件は準委任で受けられますか?
- 受けられますが、完成を約束するなら請負契約になります。契約書で成果物の完成を求められていないか、作業の範囲と報告のしかたを確認しましょう。
まとめ
ニアショア開発の単価だけの公的な統計はない。地方との差は厚生労働省の都道府県別の賃金で示す
2025年の賃金は東京418.3千円、福岡314.3千円、北海道297.1千円。東京を100とすると福岡75、北海道71
全産業の平均なので、「地方は東京の7割の単価」と言い切らない
提案単価は、原価+粗利を下限、東京の相場を上限にして間で決める。差の半分くらいを還元するのが目安
都内案件は、フルリモート常駐・一部出社・持ち帰りの3つの型で提案する
リモートでも客先が直接指示しない形を守り、出張費は契約前に決める
東京のBPとつながり、リモート可の案件を集めるのが都内案件への近道
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 (11) 都道府県別にみた賃金」(第8図 都道府県別賃金(男女計))
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