システム開発の営業方法|SES会社が受託案件を獲得する7つの手段と、赤字・偽装請負を防ぐ受注前チェック

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

受託開発とは?SES会社が取りに行く理由

受託開発とは、顧客から頼まれたシステムを、自社の責任で作って納める仕事のことです。多くは請負契約で結びます。請負契約とは、仕事を完成させることを約束し、完成した結果に対して代金を受け取る契約のことです(民法第632条)。

SESは、エンジニアの作業時間を提供する準委任契約が中心です。準委任契約とは、完成ではなく、決められた業務を行うことを約束する契約のことです。

SES会社が受託案件を取りに行く理由は、主に3つあります。

理由中身
待機を減らす常駐先が決まらないエンジニアを、自社の持ち帰り案件に入れられる
利益の幅が広がる人月単価ではなく金額で売るため、早く作れれば利益が残る
商流が上がるエンドから直接受けると、多重の下請けを通らずに済む

一方で、完成の責任を負うため、見積もりを外すと赤字になります。受託開発の基本は、受託開発とは?SESとの違いと営業が請負案件を扱う注意点で詳しく解説しています。

SES営業と受託営業の違い

SES営業と受託営業の一番の違いは、売るものが「人」か「完成物」かです。売るものが変わると、提案の中身も、確認することも変わります。

比べる点SES営業(準委任)受託営業(請負)
売るものエンジニアの稼働時間完成したシステム
価格の出し方人月単価(例:月70万円)総額と納期(例:720万円・3か月)
提案で見られる点スキルシート・面談実績・見積もりの根拠・進め方
決まるまでの時間(目安)数日〜2週間ほど1〜3か月ほどかかることも多い

受託営業では、スキルシートより過去に作ったものの説明が効きます。「どの業界の、どんなシステムを、何人で何か月で作ったか」を1枚にまとめておきましょう。

人月とは、1人が1か月働く作業量の単位のことです。受託の見積もりも、中身は人月で計算することが多いです。ただし顧客に出すのは、人月ではなく総額と納期です。

受託案件を獲得する7つの手段

受託案件を取る手段は、次の7つです。上から順に、SES会社にとって決まりやすい順に並べています。

手段決まりやすさ向いている会社注意点
1. 常駐先への持ち帰り打診◎常駐先と長い付き合いがある常駐と請負の線引き
2. 既存BP・元請けSIerから受ける◎BPとの取引が多い商流が深くなりやすい
3. 紹介○既存顧客の満足度が高い件数は読めない
4. エンド企業への直接開拓△得意な業界がはっきりしている実績ページが必須
5. 受発注マッチングサービス△見積もりを早く出せる手数料と価格競争
6. 自社サイトからの問い合わせ△実績を公開できる成果が出るまで半年以上
7. 展示会・交流会△名刺を追いかける人手がある出展費と工数

1. 常駐先への持ち帰り打診

一番決まりやすいのは、今エンジニアが常駐している顧客に、持ち帰りの仕事を打診する方法です。持ち帰り案件とは、客先ではなく自社の事務所やリモートで作業する案件のことです。

顧客はすでに自社のエンジニアの腕を知っています。そのため、ゼロから信頼を作る必要がありません。常駐先の担当者に「社内で後回しになっている開発はありますか」と聞くのが始め方です。

打診のメール例文です。

件名:小規模な開発のご相談について(株式会社〇〇 営業 山田)

〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社〇〇の山田です。
現在ご支援している佐藤の稼働につきまして、ありがとうございます。

本日は別件のご相談です。
社内の管理画面の改修など、後回しになっている開発はございませんでしょうか。
弊社の事務所で作業し、完成品を納める形(請負)でもお受けしております。

2026年10月中に、30分ほどお話を伺えますと幸いです。
候補日:10月14日(水)・15日(木)・16日(金)の午後

株式会社〇〇 山田

注意したいのは、常駐しているエンジニアを、そのまま請負のメンバーにする場合です。客先に座ったまま、客先の担当者から直接指示を受けると、偽装請負と判断されるおそれがあります。

2. 既存BP・元請けSIerから受ける

2番目は、取引のあるBPや元請けSIerから、請負の一部を受ける方法です。BP(ビジネスパートナー)とは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。

大きな開発を請けたSIerは、画面ごと・機能ごとに作業を分けて外に出すことがあります。ふだんのSES案件のやりとりの中で、「請負の切り出しがあれば声をかけてください」と伝えておきましょう。

このルートは決まりやすい反面、商流が深くなりやすいです。自社の上に何社いるか、支払い条件は何日か、を必ず確認します。

元請けSIerから請負を直接受けたいなら、先に協力会社として登録してもらう必要があります。審査の項目はSIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目で解説しています。

3. 紹介

3番目は、既存顧客や取引先からの紹介です。紹介は、はじめから信頼がある状態で話が始まるため、決まる割合が高い方法です。

紹介をもらうコツは、納品や契約更新のタイミングで頼むことです。「同じようにお困りの会社があれば、ご紹介いただけませんか」と具体的に伝えます。頼み方の例文はSESで既存顧客から紹介をもらう方法|頼み方の例文とタイミングにまとめています。

4. エンド企業への直接開拓

4番目は、システムを使う会社(エンド)に直接連絡する方法です。問い合わせフォーム、テレアポ、メールなどで接点を作ります。

受託の開拓では、「何でも作れます」は伝わりません。「物流会社の配車管理を作った実績があります」のように、業界と作ったものを絞って伝えます。

エンド開拓の進め方はSESのエンド開拓のやり方|元請け・直案件を取る7ステップで解説しています。エンドから相談が来たら、人月ではなく「課題→体制→費用→契約形態」で提案書を組みます。構成と見本はエンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本にあります。

5. 受発注マッチングサービス

5番目は、開発を頼みたい会社と、開発会社を引き合わせる受発注マッチングサービスを使う方法です。発注したい会社が案件を載せ、開発会社が手を挙げて見積もりを出す仕組みが一般的です。

マッチングサービスは、エンドから直接話が来るのが強みです。一方で、複数社の相見積もりになりやすく、価格で比べられます。成約時の手数料や月額費用がかかるサービスもあるため、利用前に料金体系を確認しましょう。

使うなら、2営業日以内に概算見積もりを返せる体制を先に作ります。見積もりが遅いと、ほかの会社で話が進んでしまいます。

6. 自社サイトからの問い合わせ

6番目は、自社サイトに開発実績と対応できる業務を載せ、問い合わせを待つ方法です。SES会社のサイトは「エンジニア募集」と「SES事業」だけのことが多く、受託の窓口がないと問い合わせは来ません。

実績は、社名を出せなくても「業界・規模・期間・使った技術」で書けます。成果が出るまで半年以上かかることが多いので、ほかの手段と並行して進めます。

7. 展示会・交流会

7番目は、展示会や交流会で名刺を集め、あとから提案する方法です。展示会は出展費がかかりますが、エンドの担当者と直接話せます。

交流会はBP同士の場が多いため、受託を切り出すSIerとの接点を作る場として使うと効率的です。名刺交換の後、1週間以内にお礼と「請負もお受けしています」の一文を送りましょう。

どの手段から始めるべきか

おすすめの順番は、「1. 常駐先への持ち帰り打診」→「2. 既存BP・元請け」→「3. 紹介」です。どれも、すでに信頼がある相手なので、実績が少なくても決まりやすいからです。

最初の1〜2件で小さな請負の実績を作ってから、4〜7のエンド開拓・マッチング・自社サイトに広げます。いきなりマッチングサービスで大きな案件を狙うと、実績不足で選ばれにくく、見積もりの失敗も起きやすくなります。

進め方の手順です。

  1. 自社で作れるものを決める:得意な業界・技術・規模(例:3人×3か月まで)を書き出す

  2. 実績を1枚にまとめる:業界・作ったもの・人数・期間・技術を、社名を伏せて書く

  3. 見積もりの型を作る:工数の出し方と、上乗せする予備の割合を社内で決める

  4. 常駐先と既存BPに打診する:まず10社に、持ち帰り・請負も受けられると伝える

  5. 小さな案件で1件納める:納品後に紹介を頼み、実績ページに追加する

  6. エンド開拓・マッチングに広げる:実績と見積もりの型ができてから件数を増やす

工数の出し方は、工数見積もりの手法7選|SES・受託の根拠の示し方とテンプレ付きが参考になります。

見積もりの計算例:工数が膨らむと赤字になる

受託案件で一番怖いのは、作業が見積もりより増えても、代金は増えないことです。SESなら精算幅を超えた稼働は精算で請求できることが多いですが、請負では原則として自社の負担になります。

数字で見てみます。エンジニア3人で3か月、1人あたりの原価(給与や外注費など)を月60万円とします。

項目金額
見積もり総額(人月80万円×9人月)720万円
予定どおりの原価(60万円×9人月)540万円
予定どおりの粗利180万円(25%)

作業が増えると、粗利は次のように減ります。

作業の増え方原価粗利
予定どおり(9人月)540万円180万円
30%増(11.7人月)702万円18万円
40%増(12.6人月)756万円▲36万円(赤字)

この例では、作業が約33%増えた時点で利益がゼロになります。仕様があいまいなまま受けると、作業は想定より大きく増えがちです。見積もりには予備の工数を入れ、仕様が変わったら追加の見積もりを出すと契約で決めておきます。

受託案件の受注前チェックリスト10項目

受託案件の赤字や法律上のトラブルは、受注前の確認不足から起きることが多いです。次の10項目を、見積もりを出す前に確認しましょう。

#確認すること確認できないとどうなるか
1作るものの範囲(画面・機能の一覧)「これも入っていると思った」で作業が増える
2完成の判断基準(検収の方法と期間)いつまでも検収されず、代金が入らない
3仕様変更のときの追加費用のルール変更分がタダ働きになる
4契約形態が請負か準委任か責任の範囲がずれ、揉める
5作業場所と、誰が指示を出すか偽装請負と判断されるおそれ
6納品後の不具合対応の期間と範囲無償の修正が長く続く
7支払いの時期と方法資金繰りが苦しくなる
8自社の上に何社いるか(商流)利益が薄く、情報も遅い
9作ったものの著作権の扱い自社で部品を再利用できなくなる
10要員を社内とBPでまかなえるか途中で人が足りず、納期に遅れる

偽装請負にならないための線引き

偽装請負とは、契約は請負なのに、実際には発注者が作業者に直接指示を出している状態のことです。本来は労働者派遣として許可を取るべき働き方を、請負の形でごまかしていると判断されます。

厚生労働省の基準は、いわゆる37号告示と呼ばれます。請負では、業務の指示や労働時間の管理を、請け負った会社が自分で行う必要があります。受託案件では、次の形にしておくと安全です。

  • 顧客との窓口は、自社の責任者が受ける

  • 顧客は、作業者に直接ではなく、責任者を通して要望を伝える

  • 作業の進め方・順番・勤務時間は、自社の責任者が決める

判断のくわしい基準は、偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選で確認できます。

契約不適合責任と支払いルール

請負では、納めたものが約束と違うとき、契約不適合責任を負います。契約不適合責任とは、完成品が契約の内容に合っていないとき、修正や代金の減額などに応じる責任のことです。民法では、顧客が不具合を知ってから1年以内に通知すれば請求できるのが原則です(民法第637条)。契約書で期間を決めることが多いので、必ず確認します。

また、2026年1月1日から、下請法は改正され、名前も取適法(中小受託取引適正化法)に変わりました。プログラムの作成を委託する取引は、資本金や従業員数の条件にあてはまると対象になります(第2条第8項)。

発注する側受ける側対象になるか
資本金3億円超資本金3億円以下(個人を含む)対象
資本金1,000万円超3億円以下資本金1,000万円以下(個人を含む)対象
従業員300人超(資本金で当たらない場合)従業員300人以下対象

対象の取引では、代金は成果物を受け取った日から60日以内に支払う必要があります(第3条)。手形での支払いも禁止されました(第5条第1項第2号)。

自社が受ける側のときは、支払いが60日を超える条件になっていないかを確認しましょう。請負と準委任の契約書の見分け方は、準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シートにまとめています。

チョータツで受託案件の要員集めと取引先探しを楽にする

受託案件を取ると、要員の確保と一緒に請ける取引先探しの2つが必要になります。自分でやる場合は、BPに一斉メールを送り、返ってきたスキルシートを1件ずつ見比べることになります。

もっと楽にするなら、DrivenXのプロダクトが使えます。

プロダクト受託営業で楽になること
チョータツ案件・人材の情報を管理・共有できる。他社と連携すると、他社の営業中人材をデータベースとして探せる
チョータツブーストチョータツの中で、新しいパートナー企業を開拓できる。請負を切り出す元請けや、一緒に請ける会社との接点を増やせる

たとえば、3人×3か月の請負を受けたのに社内で2人しか空いていない場合を考えます。チョータツで連携しているBPの営業中人材から、足りない1人を探せます。案件の情報に「請負・持ち帰り」などの条件を書いておくと、BPに声をかける前に条件を確認できます。

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。受託の取引先を増やしたいときは、チョータツブーストで新しいパートナー企業を開拓しましょう。

よくある質問

Q. SES会社でも受託開発の案件は取れますか?
取れます。最初は、今エンジニアが常駐している顧客や、取引のあるBPに「持ち帰り・請負も受けられる」と伝えるのが近道です。
Q. 受託案件はどこで探せばいいですか?
常駐先・既存BP・紹介の3つが決まりやすいです。件数を増やしたいときは、エンド開拓、受発注マッチングサービス、自社サイトを追加します。
Q. 受託開発のマッチングサービスは使うべきですか?
実績の説明と見積もりの型ができてから使うのがおすすめです。相見積もりになりやすいので、2営業日以内に概算を返せる体制が必要です。
Q. システム開発の受注で赤字になる一番の原因は何ですか?
作るものの範囲と、仕様変更のルールがあいまいなまま受けることです。本記事の例では、作業が約33%増えると利益がゼロになります。
Q. 常駐しているエンジニアを、そのまま請負のメンバーにしてもいいですか?
契約上は可能ですが、顧客が作業者に直接指示を出すと偽装請負と判断されるおそれがあります。自社の責任者を窓口にし、指示は責任者から出す形にします。
Q. 受託と請負は同じ意味ですか?
受託は「仕事を引き受けること」全般を指し、請負は契約の種類の1つです。受託でも、準委任で結ぶ場合があります。

まとめ

  • 受託開発は、完成したシステムを納める仕事で、多くは請負契約で結ぶ

  • SES営業は「人と単価」、受託営業は「完成物と総額・納期」を売る

  • 獲得手段は7つ。まずは常駐先への持ち帰り打診、既存BP・元請け、紹介から始める

  • 実績を1枚にまとめ、見積もりの型を作ってから、エンド開拓・マッチング・自社サイトに広げる

  • 請負は作業が増えても代金が増えない。例では約33%の増加で利益がゼロになる

  • 受注前に10項目を確認し、指示は自社の責任者から出して偽装請負を防ぐ

  • 要員探しはチョータツの連携、取引先探しはチョータツブーストで楽にできる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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