SES協業の進め方|IT企業と組む3つの型・5ステップと最初に決める条件チェックリスト

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SES協業とは?3つの型で整理する

SES協業とは、SES事業を行う会社どうしが組んで、案件や人材を融通し合うことです。「協業」という言葉は広いので、中身を3つの型に分けて考えると話が早くなります。

SESとは、システムエンジニアリングサービスの略で、エンジニアの技術力を契約で提供するサービスのことです。多くは準委任契約で結ばれます。準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた作業を行うこと自体を約束する契約のことです。

型どんな協業か向いている場面主な契約の形
1. 相互紹介案件と人材の情報を交換し、合えば提案する待機エンジニアを減らしたい案件ごとの個別契約
2. 共同提案2社でチームを組み、同じお客さんに提案する1社では人数やスキルが足りない2社それぞれがお客さんと契約、または一方がまとめて契約
3. 再委託受けた仕事の一部を、協業先にお願いする受けた案件を自社だけで埋めきれない元の契約で許された範囲での再委託契約

型1:案件・人材の相互紹介

相互紹介とは、お互いの「営業中の案件」と「営業中の人材」を知らせ合い、合うものがあれば提案する協業のことです。SES業界で一番多い形で、いわゆるBP(ビジネスパートナー)との取引の基本です。

始めやすい反面、情報を送り合うだけで終わりやすいのが弱点です。1件目が決まるまで、関係は深まりません。

型2:共同提案

共同提案とは、2社が1つのチームとして、同じお客さんに提案する協業のことです。たとえば「A社がPMとJava開発者を、B社がインフラ担当を出す」といった組み方です。

1社では出せない規模の案件に手が届きます。そのかわり、どちらがお客さんと契約するかと、現場の責任者は誰かを先に決めないと、指示の流れが混乱します。

型3:再委託

再委託とは、自社が受けた仕事の一部を、さらに協業先にお願いすることです。SESの商流が深くなるのは、この再委託が重なるためです。

商流とは、SESの仕事がエンド(発注元)から、いくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。再委託が1回増えるごとに、商流は1段深くなります。

商流の段数と単価の関係は、SESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法で解説しています。

SES協業のメリットとデメリット

SES協業の一番のメリットは、自社だけでは埋められない案件や人材の枠を、組んだ相手の力で埋められることです。一方で、条件を決めずに始めると、単価の低下や引き抜きなどのトラブルが起きやすくなります。

立場メリットデメリット防ぎ方
案件を持つ側自社にいないスキルの人を提案できる人の質を自社で見きれない面談前にスキルシートを確認する
人材を持つ側自社エンジニアの待機が減る商流が深い案件だと単価が下がる商流を最初に確認する
両方営業1人で扱える案件が増える引き抜きや商流飛ばしのリスク直接取引禁止の条項を入れる
両方大きな案件に共同で手を挙げられる責任の分担が曖昧になる契約者と現場責任者を先に決める

IT企業とSES協業を進める5ステップ

IT企業とのSES協業は、次の5ステップで進めます。順番を飛ばさないことが、揉めない一番のコツです。

  1. 協業の型を決める:相互紹介・共同提案・再委託のどれをやりたいかを、社内で先に決める。

  2. 組む相手を探す:募集ページ・交流会・紹介・チョータツブーストなどで候補を集め、3〜5社に絞る。

  3. 最初の打ち合わせで条件を決める:再委託・商流・精算・直接取引の禁止などをすり合わせる。

  4. 契約を結ぶ:秘密保持契約(NDA)と基本契約を結び、案件ごとに個別契約(注文書)を交わす。

  5. 1件目を決めて振り返る:1件目が決まったら、情報の早さや条件の守られ方を振り返り、続けるか判断する。

ステップ1のコツ:型によって探す相手が変わる

型が違えば、組むべき相手も変わります。相互紹介なら「自社と得意分野が違う会社」が向いています。共同提案なら「同じお客さんを狙える会社」、再委託なら「自社より人材が多い会社」です。

ステップ2のコツ:候補は商流の位置で分ける

候補の会社は、エンド直・元請け・一次請け・二次請けのどこにいるかで分けておきます。自社より上にいる会社からは案件が、同じ位置の会社からは人材が届きやすくなります。

ステップ4のコツ:契約書の順番を守る

NDA(秘密保持契約)とは、取引で知った情報を外に漏らさないと約束する契約のことです。案件や人材の詳しい情報を渡す前に、NDAを先に結びます。

基本契約は、取引全体の共通ルールを決める契約です。条項の確認ポイントは、SES基本契約書のテンプレート|個別契約・注文書と条項チェック15にまとめています。

ステップ5のコツ:「1件目」を早く決める

協業は、1件決まるまでは名刺交換と同じです。最初は条件を少し広げてでも、1件目を決めることを優先します。決まったあとは、月1回の情報交換を続けると、優先的に情報が回ってくるようになります。

最初の打ち合わせで決める条件チェックリスト

最初の打ち合わせでは、少なくとも次の10項目を決めて、議事録に残します。特に再委託・商流・精算・直接取引の禁止の4つは、あとで一番揉めやすい項目です。

#決めること決め方の例決めないと起きること
1協業の型相互紹介のみ、再委託もあり、など期待していた取引と違う
2再委託してよいか「再委託は1社まで・事前の書面承諾が必要」など知らない会社にエンジニアが出される
3商流エンドから何次か、を案件ごとに書面で伝える深い商流で単価が下がる
4精算の方法精算幅140〜180時間、超過・控除の計算方法請求のたびに計算が合わない
5支払いサイト月末締め翌月末払い、など入金が遅れて資金繰りが苦しくなる
6直接取引の禁止契約終了後の一定期間、相手の取引先と直接契約しない商流飛ばし・引き抜き
7事前面談の扱い面談の同席者、人選の決め方違法とされるおそれのある人選
8現場の指示の流れ作業の指示は誰から誰へ出すか偽装請負になる
9情報の共有方法メールかツールか、更新の頻度古い情報で提案してしまう
10窓口と連絡の期限担当者名と、返信の目安(例:当日中)返事待ちで案件を逃す

精算幅とは、SES契約で決める1か月の稼働時間の上限と下限のことです。支払いサイトとは、締め日から入金日までの期間のことです。

7の事前面談は、進め方しだいで違法と見られるおそれがあります。注意点はSESの事前面談は違法?営業が守りたい適法な進め方7つとNG例にまとめています。

再委託:準委任契約では「許諾」が前提

準委任契約で仕事を受けた会社は、発注元の許諾がなければ、原則として再委託できません。根拠は民法第644条の2です。

同条は「委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき」でなければ、復受任者を選べないと定めています。この規定は、第656条で準委任にも準用されます。

営業として大事なのは、協業先に「再委託はできますか?」と聞くだけで終わらせないことです。誰の許諾が、どんな形で必要か(書面か口頭か、事前か事後か)まで確認します。

商流:「何次か」を案件ごとに書面で残す

商流は、口頭で「たぶん二次です」と聞くだけでは足りません。案件ごとに、エンドから何社目かを書面やメールで残してもらいます。

商流を隠す会社や、確認するたびに答えが変わる会社とは、取引を慎重に考えます。商流が深すぎる組み方は、単価が下がるだけでなく、二重派遣と見られるリスクも上がります。

二重派遣の考え方は、SESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方で詳しく解説しています。

精算:幅・計算単位・支払いサイトの3点をそろえる

精算は「精算幅」「超過・控除の計算方法」「支払いサイト」の3点を、協業先と自社のお客さんの両方で合わせます。上と下で条件がずれると、自社だけが損をすることがあります。

たとえば、お客さんとの契約が精算幅140〜180時間で、協業先との契約が150〜170時間だとします。このずれがあると、稼働が145時間の月に、上下の請求計算が合わなくなります。

控除の計算方法は、SESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いにまとめています。

直接取引の禁止:期間と範囲を決める

直接取引の禁止とは、協業で知り合ったお客さんやエンジニアと、協業先を飛ばして直接契約しないと約束する条項のことです。商流飛ばしや引き抜きを防ぐために入れます。

決めるときは、まずいつまでか(例:契約終了後1年)をはっきりさせます。あわせて誰が対象か(お客さん・エンジニア・その両方)も決めます。違反したときの扱い(紹介料の支払いなど)も書いておくと、話し合いがしやすくなります。

SESの商流飛ばしは違法?営業が知るべきリスクと防ぎ方5つ / SESの引き抜きに紹介料は取れる?相場と契約条項の書き方

SES協業で押さえたい法律のポイント3つ

SES協業で特に気をつけたい法律は、「偽装請負・二重派遣」「再委託のルール」「取適法(旧下請法)」の3つです。どれも、協業の組み方しだいで自社が当事者になります。

法律・ルール何が問題になるか営業が確認すること
偽装請負(37号告示)契約は準委任なのに、お客さんがエンジニアに直接指示する現場の指示が自社の責任者を通っているか
二重派遣(職業安定法第44条)派遣で受けた人を、さらに別の会社の指示の下で働かせる協業先から来た人が、どの契約で働いているか
再委託(民法第644条の2)許諾のない再委託元の契約で再委託が許されているか
取適法(旧下請法)発注内容を明示しない、支払いを遅らせるなど発注の条件を書面で出しているか、支払期日

偽装請負と二重派遣

偽装請負とは、契約は請負や準委任なのに、発注側がエンジニアに直接指示を出し、実態が派遣になっていることです。判断の基準は、厚生労働省の「37号告示」です(解説:偽装請負の37号告示をやさしく解説)。

二重派遣とは、派遣で受け入れた人を、さらに別の会社に派遣し、その会社の指示の下で働かせることです。二重派遣は、職業安定法第44条が禁じる「労働者供給」にあたるとされます。違反すると、同法第64条で「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」の対象です。

判断のしかたは偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選で解説しています。

取適法(旧下請法)

取適法とは、2026年1月1日に下請法が改正されて生まれた法律の通称です。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。

発注する会社と受ける会社の資本金や従業員数が条件にあてはまると、発注側に義務が生まれます。たとえば、発注内容の明示や、給付を受け取った日(役務なら提供を受けた日)から60日以内の支払期日の設定です。SESの再委託でも対象になることがあるので、発注側になるときは自社の規模とあわせて確認します。

協業相手に選ばれるための準備

協業相手に選ばれるには、自社の強みを1枚の会社紹介にまとめ、最初の連絡で渡せるようにしておくことです。相手も「この会社と組んで決まるか」を短い時間で判断したいからです。

書く項目書き方の例相手が知りたいこと
得意な業界・スキル金融系のJava開発、AWSのインフラ構築自社と補い合えるか
人数と地域自社エンジニア〇名、東京・一部リモート人を出してもらえる余裕があるか
商流の位置エンド直・一次請けの案件が中心案件の単価や安定性
取引の実績取引中のパートナー〇社、直近の成約件数取引して大丈夫な会社か
契約・精算の条件精算幅、支払いサイト、再委託の方針条件が合うか

反対に、相手を選ぶときも同じ5項目で見ます。特に「人数に余裕があるか」は、共同提案や再委託で組むときに大事です。

SES協業の相手を自分で探す方法

協業の相手は、「募集ページ」「交流会」「今の取引先からの紹介」「SNS」の4つから自分で探せます。まずは、今日から動ける募集ページがおすすめです。

  • パートナー募集ページ:「SES パートナー募集」などで検索する。求めるスキルが近い会社に連絡する。

  • SES交流会:その場で「今どんな案件・人材を探しているか」を聞き、その週のうちに連絡する。

  • 今の取引先からの紹介:信頼できる会社を紹介してもらう。数は少ないが、最初から信頼がある。

  • SNS(X・LinkedIn):案件・人材を発信している営業担当者に連絡する。担当者個人とつながれる。

取引を始める前には、国税庁 法人番号公表サイトで会社が実在するかを確認します。派遣もしている会社なら、労働者派遣の許可番号を検索する方法の手順で許可も確認できます。

募集企業の一覧と探し方7つは、SESパートナー募集企業の一覧と探し方7選|BP開拓のコツにまとめています。交流会の使い方はSES交流会の選び方と活用法|名刺を取引に変える7つのコツをどうぞ。

チョータツブーストと連携DBで協業相手を探す

自分で探す方法は、どれも「探す→連絡する→返事を待つ」を1社ずつくり返します。協業が始まったあとも、相手から届く案件・人材の情報をメールで追いかけることになります。DrivenXのツールを使うと、協業相手探しから情報の共有まで、まとめて進められます。

場面自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
協業相手を探す検索・交流会・紹介で1社ずつチョータツブーストで新しいパートナー企業を開拓
相手の案件・人材を知る届いたメールを読んでExcelに転記チョータツで連携すると、相手の営業中案件・営業中人材がデータベースになる
自社の情報を届けるBCCでメールを一斉送信チョータツのメール配信機能でパートナーに配信
自社の案件・人材を整理するExcelを手作業で更新チョータツで管理・共有(AIが入力を手伝う)

チョータツブーストとは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できる機能のことです。チョータツは3,000社以上が使っているので、その中から新しい協業相手と出会えます。

チョータツの連携と特に相性がよいのは、協業の型1「相互紹介」です。連携した会社の営業中案件・営業中人材が自社のデータベースとして見られるので、「送り合うだけで終わる」状態を防げます。

使い始める流れ

  1. チョータツに無料で登録する

  2. 自社の案件・人材の情報を登録する(AIが入力を手伝う)

  3. チョータツブーストで、新しいパートナー企業を開拓する

  4. 最初の打ち合わせで、この記事のチェックリストの条件を決める

  5. つながった相手と連携し、お互いの営業中案件・人材を共有する

SES協業がうまくいかない5つのパターン

SES協業がうまくいかない原因は、ほとんどが「最初に決めなかったこと」です。よくある失敗は次の5つです。

  1. 情報を送り合うだけで1件も決まらない:型と目標(例:3か月で1件)を決めていない。

  2. 知らないうちに商流が深くなっている:再委託のルールを決めていない。

  3. 精算の計算が合わない:上と下の契約で精算幅や計算方法がずれている。

  4. エンジニアやお客さんを直接取られる:直接取引の禁止を契約に入れていない。

  5. 返事が遅くて案件を逃す:窓口と返信の期限を決めていない。

どれも、上の「最初の打ち合わせで決める条件チェックリスト」で防げます。打ち合わせの議事録を相手にも送り、合意したことを残しておきましょう。

協業先から人材を探すコツは、SESのBPマッチングが難しい理由5つと成約率を上げるコツで解説しています。

協業を打診するメール例文

協業の打診メールには、自社の強み・協業の型・求める案件と人材の3点を短く書きます。

例文・テンプレート
件名:SES事業での協業のご相談(株式会社△△)

株式会社〇〇
ご担当者様

はじめまして。株式会社△△の□□と申します。
貴社のパートナー募集ページを拝見し、ご連絡いたしました。

弊社は東京を中心に、Java・AWSの開発案件でSES事業を行っております。
・自社エンジニア:〇名(Java、インフラ中心)
・保有案件:金融・流通系の開発案件(エンド直・一次請けが中心)

まずは、案件・人材の情報交換(相互紹介)からご一緒できればと考えております。
あわせて、再委託の可否や精算条件などを一度すり合わせたく、
30分ほどオンラインでお時間をいただけないでしょうか。

よろしくお願いいたします。

よくある質問

Q. SES協業とBP取引は同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われます。BP取引は「案件・人材の相互紹介」を指すことが多く、協業はそれに共同提案や再委託も含めた広い言い方です。
Q. IT企業とSES協業を始めるのに、契約書は必要ですか?
必要です。NDA(秘密保持契約)→基本契約→案件ごとの個別契約(注文書)の順に交わすのが一般的です。
Q. 協業先への再委託は自由にできますか?
準委任契約では、民法第644条の2により、発注元の許諾がなければ原則として再委託できません。元の契約書の再委託の条項を必ず確認しましょう。
Q. SES企業のパートナー募集には、どうやって応募すればいいですか?
募集ページの問い合わせフォームから、自社の強みと求める案件・人材を短く書いて連絡します。チョータツブーストを使えば、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できます。
Q. 協業先にエンジニアを引き抜かれないためには?
基本契約に直接取引の禁止の条項を入れ、期間と対象を決めておきます。違反したときの扱い(紹介料など)も書いておくと、話し合いがしやすくなります。
Q. 協業先から来たエンジニアに、自社から作業の指示を出してもいいですか?
準委任契約で受けた人に発注側が直接指示を出すと、偽装請負とみなされるおそれがあります。指示は、エンジニアが所属する会社の責任者を通すのが基本です(参考:準委任契約の指揮命令はどこまで?)。

まとめ

  • SES協業は「相互紹介」「共同提案」「再委託」の3つの型に分けて考える

  • 進め方は「型を決める→相手を探す→条件を決める→契約する→1件目を決めて振り返る」の5ステップ

  • 最初の打ち合わせで、再委託・商流・精算・直接取引の禁止の4点は必ず決め、議事録に残す

  • 選ばれるために、得意分野・人数・商流・実績・条件を1枚の会社紹介にまとめておく

  • 準委任の再委託は発注元の許諾が前提。二重派遣や偽装請負になる組み方は避ける

  • 協業相手探しはチョータツブースト、つながったあとの情報共有はチョータツの連携で手間を減らせる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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