派遣法改正の歴史と最新動向|SES企業に関わる改正点6つと、派遣から準委任へ移った理由

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

派遣法改正とは?

派遣法改正とは、労働者派遣法のルールを国会や厚生労働省が変えてきた流れのことです。1986年の施行から、何度も改正が行われています。

労働者派遣法とは、派遣会社・派遣先・派遣で働く人の3者のルールを決めた法律のことです。正式な名前は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」です。

改正には2つの種類があります。国会で法律そのものを変える法改正と、厚生労働省が細かいルール(省令・指針)を変える省令・指針の改正です。「改正労働者派遣法」と呼ばれるのは、主に法改正のほうです。

派遣法のルールそのものは、労働者派遣法とは?SES営業が知るべきルール8つと労基法で1つずつ解説しています。本記事では、いつ・なぜ変わったかと、SES企業の契約にどう効いたかに絞ります。

派遣法改正の歴史を年表で整理

派遣法の歴史は、2012年の改正を境に「規制をゆるめる時代」から「規制を強める時代」に変わったと整理できます。きっかけは2008年のリーマン・ショックです。主な改正を年表にしました。

施行主な改正内容方向
1986年7月派遣法が施行。専門的な業務に限って派遣を認める解禁
1996年認める業務を16業務から26業務に広げる緩和
1999年12月禁止業務以外は原則どの業務でも派遣できるようにする緩和
2004年3月製造業務への派遣を解禁。受入期間の上限を延ばす緩和
2012年10月日雇派遣の原則禁止、マージン率の公開など。法律の名前に「保護」が入る強化
2015年9月特定派遣を廃止し許可制に一本化。期間制限を3年に統一強化
2015年10月労働契約申込みみなし制度が始まる強化
2020年4月同一労働同一賃金(派遣先均等・均衡方式/労使協定方式)強化
2021年1月・4月雇入れ時の説明の拡大、契約書の電子化、マージン率のネット公開強化
2026年10月待遇の説明を求められる旨の明示、ガイドラインの追加強化

1986〜2004年:派遣を広げた時代

1986年の施行時は、通訳やソフトウェア開発など、専門的な知識が要る業務だけに派遣が認められました。認める業務を並べる方式を「ポジティブリスト」と呼びます。

1999年には、建設・港湾運送・警備・医療・製造などの禁止業務以外は原則OKになりました。禁止する業務だけを並べる「ネガティブリスト」方式です。

派遣労働の規制緩和のプロセスを簡単に

規制緩和のプロセスは、「専門業務だけOK」→「原則どの業務もOK」→「製造業もOK」の3段階です。

  1. 1986年:通訳やソフトウェア開発など、専門的な業務だけに派遣を認めた

  2. 1999年:建設・港湾運送・警備・医療・製造などの禁止業務以外は原則OKにした

  3. 2004年:それまで禁止されていた製造業務への派遣を解禁した

「派遣法改正 小泉」と検索される理由

2004年3月の製造業務への派遣解禁は、小泉純一郎内閣(2001〜2006年)の規制改革の時期に行われました。そのため「小泉改革で派遣が広がった」と語られることが多く、「派遣法 改正 小泉」という検索につながっています。

その後、2008年のリーマン・ショックで「派遣切り」が社会問題になりました。これを受けて、2012年からは規制を強める改正に向きが変わります。

SES企業に関わる派遣法の改正点6つ

SES企業に関わる改正点は、2012年・2015年・2020年の3回の法改正に含まれる6つです。準委任(SES)だけで動く会社にも、派遣と比べて説明するときに必要になります。

#改正点施行SES企業への影響
1日雇派遣の原則禁止2012年10月30日以内の短期派遣ができない
2マージン率などの公開2012年10月派遣の取り分が外から見える
3特定派遣の廃止2015年9月届出だけでエンジニアを派遣できない
4期間制限を3年に統一2015年9月ソフト開発の派遣にも3年の上限
5労働契約申込みみなし制度2015年10月違法派遣だと客先が直接雇う申込みをしたとみなされる
6同一労働同一賃金2020年4月派遣で働く人の賃金の決め方が決まる

1. 日雇派遣の原則禁止(2012年10月)

日雇派遣とは、日々または30日以内の期間を決めて雇う人を派遣することです。2012年10月から、一部の業務と条件を除いて原則禁止になりました。

SESでは、「2週間だけ手伝ってほしい」というスポットの依頼が来ることがあります。これを派遣で受けるなら、雇用期間が31日以上になるように組む必要があります。

2. マージン率などの公開(2012年10月)

マージン率とは、派遣料金のうち、派遣会社の取り分が何%かを示す数字です。2012年10月から、派遣会社はマージン率などを公開する義務を負いました。2021年4月からは、インターネットでの公開が必要です。

準委任(SES)には、この公開義務はありません。ただし客先から「派遣会社は公開しているのに」と聞かれることがあります。SESのマージン率の考え方はSESのマージン率の平均と相場|計算式・適正ライン・説明例文付きにまとめています。

3. 特定派遣の廃止(2015年9月)

特定労働者派遣事業(特定派遣)とは、自社で常に雇っている社員だけを派遣する事業で、届出だけで始められたものです。2015年9月30日の改正で廃止され、すべての派遣が許可制になりました。

IT業界では、正社員のエンジニアを客先に出す会社の多くが、この特定派遣の届出で動いていました。経過措置は2018年9月29日までです。それ以降は、許可を取るか、派遣をやめるかを選ぶ必要がありました。

許可を取るには、資産や事業所などの要件を満たす必要があります。小さなSES企業にとってはハードルが高く、準委任契約に切り替える会社が増えた大きな理由になりました。許可の基準は労働者派遣事業の許可要件|資産2,000万円など基準と申請の流れで解説しています。廃止後に営業が守る点は特定派遣の廃止によるSESへの影響|派遣法改正後に営業が守る4点にまとめています。

4. 期間制限を3年に統一(2015年9月)

期間制限とは、同じ派遣先に派遣できる期間の上限のことです。2015年の改正で、次の2つの3年ルールに整理されました。

ルール中身
事業所単位同じ事業所で派遣を受け入れられるのは原則3年
個人単位同じ人が同じ課などの組織で働けるのは3年まで

それまでは、ソフトウェア開発などの「26業務」には期間の上限がありませんでした。改正で26業務の区別がなくなり、IT系の派遣にも3年の上限がかかるようになりました。例外として、派遣会社で無期雇用されている人や、60歳以上の人などは対象外です。

3年に達する日の翌日を抵触日と呼びます。くわしくは派遣の抵触日とは?事業所・個人の3年ルールをSES営業向けに解説で解説しています。

5. 労働契約申込みみなし制度(2015年10月)

労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が違法な派遣を受け入れたとき、その人に直接雇う申込みをしたとみなす制度です。2015年10月1日から始まりました。

対象には、偽装請負も含まれます。偽装請負とは、準委任や請負の形なのに、客先が実際にはエンジニアへ直接指示を出している状態のことです。準委任で動くSES企業に一番関係する改正と言えます。

どこからが偽装請負になるかは、偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策で確認できます。

6. 同一労働同一賃金(2020年4月)

同一労働同一賃金とは、派遣で働く人と派遣先の社員との間で、不合理な待遇の差をなくすルールです。2020年4月1日から、派遣会社は次の2つのどちらかで待遇を決める義務を負いました。

方式決め方
派遣先均等・均衡方式派遣先の社員の待遇に合わせる
労使協定方式派遣会社と社員の代表が協定を結び、国が示す平均賃金以上にする

SES企業が派遣で出す場合、多くは労使協定方式を選びます。派遣先の社員の給料を毎回調べる手間がかからないためです。この改正で、派遣は賃金の決め方の手続きも必要になりました。準委任を選ぶ会社が増えた理由の1つです。

派遣法の最新動向:2026年10月1日施行の改正

派遣法の最新の改正は、2026年10月1日施行の省令・指針の改正です。2026年4月28日に公布されました。国会での法改正ではなく、厚生労働省のルールの改正です。

主な変更点・注意点は、次の4つです。厚生労働省の案内では、下の2つめ・3つめは「留意してください」という形で示されています。

対象変わること・注意点
派遣会社雇い入れ時・派遣時に「待遇の違いの説明を求められる」ことを明示する
派遣会社労使協定を守らない場合などは、労使協定方式ではなく派遣先均等・均衡方式が適用されることが示される
派遣先派遣会社が待遇を確保できるよう派遣料金に配慮する義務について、交渉に一切応じない場合などは法の趣旨に沿わないと示される
共通同一労働同一賃金ガイドラインに賞与・退職手当・家族手当・住宅手当などの考え方が加わる

派遣で人を出しているSES企業は、雇用契約書や就業条件の明示書の書式を見直す必要があります。厚生労働省は、改正に対応した様式やQ&Aを公開しています。

派遣先への「料金の配慮」は、派遣会社にとって単価交渉の材料になります。「待遇を守るために必要な料金です」と、派遣先の配慮義務を根拠に説明できるからです。

派遣料金の見直しを相談するメール例文(派遣元の営業向け)

件名:【ご相談】2027年1月更新分の派遣料金について

○○株式会社 △△様

いつもお世話になっております。株式会社□□の山田です。
2026年10月1日から、派遣労働者の同一労働同一賃金に関する指針が改正されました。
派遣先の皆さまには、派遣元が待遇を確保できるよう派遣料金に配慮いただくことが求められています。
弊社でも2027年度の労使協定の賃金水準に合わせ、1月更新分の料金をご相談させてください。
算定の根拠資料をお持ちし、11月中にご説明の時間をいただけますと幸いです。

「労働者派遣法 改正案」を調べるときの注意

「改正案」は、まだ決まっていない案のことです。本記事は、2026年9月30日時点で施行が決まった改正だけを扱っています。国会に出された改正案は、厚生労働省の「国会提出法案」のページで確かめられます。

なお、派遣法の条文も、2026年4月1日施行の法改正(令和7年法律第63号)で一部が改められています。条文を引用するときは、e-Gov法令検索の現行版で確かめてください。

派遣法改正がSES企業の契約形態の選び方に与えた影響

派遣法改正の結果、SES企業の多くは「派遣」ではなく「準委任」で契約するようになりました。派遣の手続きと費用が増える一方、準委任には派遣法の手続きがかからないためです。

準委任契約とは、決まった作業をきちんと行うことを約束する契約のことです。民法で決められており、派遣法の許可は要りません。

比べる点派遣準委任(SES)
国の許可必要(2015年から全件)不要
期間の上限原則3年法律上の上限なし
指示を出す会社客先自社
賃金の決め方2方式のどちらかで決める自社の規程による

ただし、準委任を選べば安心というわけではありません。客先がエンジニアに直接指示を出すなら、派遣として扱う必要があります。準委任のまま直接指示が続くと偽装請負になり、みなし制度の対象になります。

営業の現場で判断するときは、次の考え方がおすすめです。

  • 客先が作業の指示を直接出したいなら、派遣(許可がある会社で)

  • 自社や自社のリーダーが指示を出せる体制なら、準委任

  • どちらか決めきれないなら、提案前に客先と指示の出し方を話し合う

3つの契約形態の比べ方は、SESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目でくわしく解説しています。

改正に合わせて営業が案件ごとに確かめる5つの手順

営業が派遣法改正に対応するには、提案前に5つの手順で案件を確かめるのが確実です。そのまま社内のチェックリストに使えます。

  1. 契約形態を確かめる:案件票の「派遣」「準委任」「請負」を見る。書いていなければ、提案前に元請けに聞く

  2. 派遣なら許可を確かめる:自社か、間に入るBPが派遣の許可を持っているかを調べる

  3. 抵触日を確かめる:派遣なら、客先の事業所の抵触日を派遣先から教えてもらう

  4. 指示の出し方を確かめる:準委任なら、誰がエンジニアに指示を出すかを客先と決める

  5. 記録を残す:確かめた結果を案件管理表に書き、チームで共有する

取引先の許可の調べ方は、労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つで手順を解説しています。

客先に聞くときのメール例文

契約形態がはっきりしない案件は、次のように確かめます。

件名:【確認】Javaバックエンド案件(2026年11月開始)の契約形態について

○○株式会社 △△様

いつもお世話になっております。株式会社□□の山田です。
ご紹介いただいた案件について、提案前に2点確認させてください。

  1. 契約形態は、準委任・派遣のどちらでしょうか。

  2. 準委任の場合、現場での作業指示はどなたから出る想定でしょうか。

弊社で体制を整えたうえで、11月2日(月)までに要員をご提案いたします。
よろしくお願いいたします。

案件の契約形態をチョータツで管理する

自分でやるなら、案件管理表に「契約形態」「許可の有無」「抵触日」「指示を出す人」の4列を足すのがおすすめです。提案前に、必ずこの4列を見る決まりにします。

案件が増えると、情報がメールやExcelに散らばり、確かめ漏れが出やすくなります。チョータツを使うと、この管理を1か所にまとめられます。

  • 案件・人材の情報を管理・共有できる:案件ごとの条件を、チーム全員が同じ画面で確かめられます

  • AIが入力を手伝う:案件の登録にかかる手間を減らせます

  • パートナーへのメール配信機能がある:条件を確かめた案件だけを、パートナーに配信できます

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる:BPの案件も同じ場所で見比べられます

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。派遣か準委任かの判断そのものは、本記事の手順に沿って人が行ってください。

よくある質問

Q. 派遣法改正の歴史を簡単に教えてください。
1986年に専門業務に限って始まり、1999年に原則自由化、2004年に製造業も解禁されました。2012年からは派遣で働く人を守る方向に変わり、2015年・2020年・2026年と改正が続いています。
Q. 2015年の改正派遣法で何が変わりましたか?
大きく2つです。特定派遣が廃止され、すべての派遣が許可制になりました。また期間制限が、事業所単位と個人単位の「3年ルール」に整理されました。
Q. 2020年4月の改正労働者派遣法のポイントは何ですか?
同一労働同一賃金です。派遣会社は「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のどちらかで、派遣で働く人の待遇を決める必要があります。
Q. 派遣法改正は、準委任(SES)契約にも関係しますか?
直接の対象は派遣です。ただし、準委任でも客先が直接指示を出すと偽装請負になり、2015年に始まった労働契約申込みみなし制度の対象になります。
Q. 最新の派遣法改正はいつですか?
2026年10月1日施行の省令・指針の改正です。待遇の違いの説明を求められることを明示する義務や、同一労働同一賃金ガイドラインの追加などが含まれます。
Q. 特定派遣の届出で動いていた会社は、今どうしていますか?
経過措置が2018年9月29日で終わったため、派遣の許可を取るか、準委任など派遣以外の契約に切り替えています。取引先が許可を持っているかは、厚生労働省のサイトで調べられます。

まとめ

  • 派遣法は1986年施行。2012年を境に「広げる改正」から「守る改正」へ向きが変わった

  • SES企業に関わる改正点は、日雇派遣の禁止・マージン率の公開・特定派遣の廃止・3年の期間制限・みなし制度・同一労働同一賃金の6つ

  • 2015年の特定派遣の廃止で、許可を取らずに準委任へ切り替えるSES企業が増えた

  • 最新の改正は2026年10月1日施行。待遇の説明の義務が強まり、派遣料金への配慮なども明確になる

  • 準委任でも客先が直接指示を出せば偽装請負になり、みなし制度の対象になる

  • 提案前に「契約形態・許可・抵触日・指示を出す人」を確かめ、案件管理表に残す

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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