人材紹介の契約書ひな形|SES企業が転籍・紹介で紹介料を受け取る時の条項例8つと、許可の要否・請求の手順
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
人材紹介の契約書とは?
人材紹介の契約書とは、人材紹介会社と求人企業のあいだで、紹介のルールと紹介料を決める契約書のことです。「人材紹介基本契約書」「職業紹介契約書」とも呼ばれます。
SES企業がこの契約書を使うのは、主に次の3つの場面です。
| 場面 | よくある例 | 許可の要否 |
|---|---|---|
| 要員の転籍 | 客先から「常駐中のAさんを正社員で採りたい」と言われ、紹介料を受け取る | 必要 |
| 人の紹介 | 登録者や知人のエンジニアを、取引先の正社員採用に紹介して報酬を受け取る | 必要 |
| 案件・BPの紹介 | 案件やBP企業を他社に紹介し、準委任契約の利益から謝礼を受け取る | 原則不要(雇用の仲立ちではないため) |
ポイントは、「雇用が決まるように仲立ちして、お金を受け取るかどうか」です。準委任でエンジニアを客先に出すふつうのSES取引は、職業紹介ではありません。
職業紹介の定義
職業紹介とは、求人と求職の申込みを受けて、雇用関係の成立をあっせんすることです(職業安定法第4条第1項)。
手数料や報酬を「いかなる名義でも」受け取らない紹介が、無料の職業紹介です(同条第2項)。つまり、「紹介料」「コンサル料」「謝礼」と名前を変えても、お金を受け取れば有料の職業紹介と扱われます。
紹介料を受け取る前に確認する「許可が要るか」の境界
結論から言うと、雇用の成立に関わって報酬を受け取るなら許可が必要です。許可なく有料の職業紹介を行うと、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります(職業安定法第64条第1号)。
営業の現場で迷いやすいケースを、表にまとめました。
| ケース | 職業紹介に当たるか | 考え方 |
|---|---|---|
| 自社社員を客先へ転籍させ、客先から紹介料を受け取る | 当たる | 客先と社員の雇用成立を仲立ちしている |
| 客先の直接雇用を認める代わりに「違約金」名目でお金を受け取る | 当たるおそれあり | 名目ではなく、雇用成立の仲立ちの対価かどうかの実態で判断される |
| フリーランスを業務委託(準委任)で客先につなぐ | 原則当たらない | 雇用ではない。ただし実態が雇用に近いと注意 |
| 案件やBP企業を紹介して謝礼を受け取る | 当たらない | 雇用の仲立ちではない |
| 紹介予定派遣で派遣先に直接雇用される | 当たる | 派遣の許可とは別に紹介の許可が必要 |
判断に迷ったら、SESに有料職業紹介の許可は必要?紹介料を取る前の確認5点も読んでおきましょう。
委託募集と職業紹介の違い
委託募集とは、人を雇いたい会社が、社外の人に報酬を払って社員の募集をしてもらうことです(職業安定法第36条)。
| 項目 | 職業紹介 | 委託募集 |
|---|---|---|
| 誰の依頼で動くか | 求人企業と求職者の両方 | 人を雇いたい会社だけ |
| やること | 求人と求職を結びつけ、雇用成立をあっせんする | 雇いたい会社の代わりに、応募を呼びかける |
| 必要な手続き | 厚生労働大臣の許可(第30条) | 報酬ありなら許可+報酬額の認可(第36条) |
| 無許可の罰則 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第64条第1号) | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第64条第7号) |
「採用を手伝うので業務委託で成功報酬を払う」という話は、職業紹介か委託募集のどちらかに当たることが多いです。「業務委託契約だから許可は要らない」とは言えません。
職業紹介の業務委託は許可なしでよい?
許可のない会社が、紹介の仲立ちそのものを業務委託で引き受けることはできません。 契約書の名前が「業務委託契約書」でも、雇用成立のあっせんをして報酬を受ければ、職業紹介と判断されるおそれがあります。
許可のある紹介会社と組む場合も、誰が求人・求職の申込みを受け、誰が紹介料を受け取るのかを契約書で明確にしましょう。
人材紹介の契約書に入れる条項例8つ
人材紹介の契約書には、紹介料の計算と、あとで揉めやすい返金・支払いのルールを必ず書きます。SES企業が要員の転籍で使うことを想定した条項例を8つ紹介します。
いずれも一般的な例です。自社の手数料表や、届け出た返戻金制度の内容と合わせて調整してください。
第1条 目的
第1条(目的)
本契約は、乙(有料職業紹介事業者)が甲(求人者)に対して行う職業紹介に関し、紹介手数料その他の条件を定めることを目的とする。
第2条 紹介の成立(紹介料の発生時点)
第2条(紹介の成立)
乙が紹介した求職者と甲との間で雇用契約が成立し、当該求職者が入社した時点をもって、紹介が成立したものとする。
甲は、乙の紹介日から1年以内に、乙を通さずに当該求職者を雇用した場合も、紹介が成立したものとみなす。
発生時点は「内定承諾」か「入社日」のどちらかで決めます。入社日にしておくと、入社前の辞退で揉めにくくなります。
第3条 紹介手数料(料率)
第3条(紹介手数料)
甲は、紹介が成立したときは、乙が届け出た手数料表に基づき、当該求職者の理論年収の〇%に相当する額に消費税を加えた額を、紹介手数料として乙に支払う。
理論年収とは、入社時に約束した年間の賃金の見込み額のことです。月給×12か月に、賞与や手当のどれを含めるかも条文か別紙で決めておきます。
第4条 支払時期
第4条(支払時期)
甲は、乙が入社日以降に発行する請求書に基づき、請求書の発行日の属する月の翌月末日までに、乙の指定する口座に振り込む方法で支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第5条 返金規定(返戻金)
第5条(返戻金)
当該求職者が、甲の責によらない事由により入社日から次の期間内に退職したときは、乙は受領済みの紹介手数料に次の割合を乗じた額を甲に返金する。
(1) 入社日から1か月以内:〇%
(2) 1か月超3か月以内:〇%
期間と割合は会社ごとに決めます。返戻金制度に関する事項は、求人企業にあらかじめ明示する必要があります。根拠は職業安定法第32条の13と、同法施行規則第24条の5です。
第6条 求職者の情報の取扱い
第6条(個人情報の取扱い)
甲は、乙から提供を受けた求職者の個人情報を、採用選考の目的以外に使用してはならない。
第7条 直接の接触の禁止
第7条(直接接触の禁止)
甲は、乙が紹介した求職者に対し、乙を通さずに採用の交渉を行ってはならない。
第8条 有効期間
第8条(有効期間)
本契約の有効期間は締結日から1年間とし、期間満了の1か月前までにいずれからも申出がないときは、同一条件で1年間更新する。
紹介料の決め方(上限制と届出制)
紹介料は、上限制手数料か届出制手数料のどちらかで決めます。 それ以外の方法で、自由に金額を決めることはできません(職業安定法第32条の3)。
| 方式 | 決め方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 上限制手数料 | 省令の上限の範囲で受け取る。6か月間に支払われた賃金の11%(免税事業者は10.3%)まで。無期雇用で6か月を超えて働く場合は、賞与などを除いた賃金の14.8%(免税事業者は13.9%)の方が大きければそちらまで | 紹介の件数が少なく、手数料表を作らない |
| 届出制手数料 | 事前に届け出た手数料表どおりに受け取る | 年収の一定割合で受け取りたい |
同じ転籍でも、方式によって受け取れる金額が大きく変わります。許可を取る段階で、どちらの方式にするかを決めておきましょう。料率の相場や年収別の早見表・計算例は人材紹介の手数料相場と平均|IT職は約150万円・返金規定と採算表で、手数料表の作り方は人材紹介の免許の取り方と費用|SES企業が紹介事業を始める手順で確認できます。
客先への説明例
Aさんの正社員登用の件、ありがとうございます。弊社は有料職業紹介の許可を受けており、届け出た手数料表に基づき、理論年収の〇%を紹介手数料として頂戴しております。早期退職時の返金規定を記した書面を、本日メールでお送りします。
要員を転籍させるときの手順5ステップ
転籍の話が出たら、「許可の確認→本人の意思確認→契約書→請求」の順で進めます。 順番を飛ばすと、社員の退職トラブルや紹介料の不払いにつながります。
自社の許可を確認する:有料職業紹介の許可番号があるか確かめます。許可がなければ、紹介料は受け取らない前提で進め方を考えます。
本人の意思を確認する:転籍は、社員が自社を退職して客先に入社することです。本人の同意なしには進められません。
準委任契約の終わり方を決める:現在のSES契約の終了日と、入社日のずれがないように調整します。
人材紹介契約書を結ぶ:条項例8つを参考に、手数料・返金・支払時期を書面で合意します。返戻金制度も書面で明示します。
入社を確認して請求書を出す:入社日を客先に確認し、請求書を発行します。
許可がない会社が客先に返す文例
Aさんを評価いただき、ありがとうございます。弊社は有料職業紹介の許可を持っていないため、紹介料はいただけません。Aさんご本人の意思を確認したうえで、現在の契約の終了日と入社日の調整をご相談させてください。後任の要員も、あわせてご提案します。
SES契約書に引き抜き禁止条項がある場合の考え方は、引き抜き禁止条項の有効性と期間|SES契約で守られる書き方と例文で解説しています。紹介料の相場と条項はSESの引き抜きに紹介料は取れる?相場と契約条項の書き方・例文付きを見てください。
転籍の紹介料を請求するときの記載項目
人材紹介契約にもとづく紹介料の請求書には、誰を・いつ・いくらの年収で紹介し、何%を請求するかを書きます。 計算の元が書いてあると、客先の経理担当者も確認しやすくなります。案件やBPを紹介したお礼の紹介料は、雇用のあっせんではないので別物です。その請求書の書き方は紹介手数料の相場と決め方|SESで案件・BPを紹介した時の計算例で解説しています。
請求書に書く項目
| 項目 | 記載例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 件名 | 人材紹介手数料 | 「SES利用料」と混ぜない |
| 紹介した人・入社日 | 〇〇 〇〇 様/2026年11月2日入社 | 個人名はイニシャルでもよいか客先に確認 |
| 計算の元 | 理論年収 6,000,000円×30% | 契約書と同じ定義の年収を書く |
| 金額・税率 | 1,800,000円+消費税(10%)180,000円 | 税率ごとに税額を書く |
請求書の記載例
請求書
株式会社〇〇 御中
請求日:2026年11月4日(水)
登録番号:T0000000000000件名:人材紹介手数料
内容:〇〇 〇〇 様(2026年11月2日入社)
理論年収 6,000,000円 × 30% = 1,800,000円
消費税(10%):180,000円
ご請求金額:1,980,000円
お支払期限:2026年12月31日(木)
有料職業紹介事業 許可番号:00-ユ-000000
請求書を適格請求書(インボイス)にする場合は、登録番号・取引年月日・税率ごとの金額と消費税額などの記載事項をそろえます。SESの利用料の請求書と同じ考え方です。精算の請求書との違いは、SESの請求書の書き方とテンプレート|精算の記載例と送付前チェック10と見比べてください。
送付前のチェックリスト
入社日が確定している(内定の段階で出していない)
年収と料率が、契約書・手数料表と一致している
消費税の計算と端数処理が正しい
支払期限が、契約書の支払時期と一致している
返戻金の条件を書いた書面を、事前に渡している
チョータツで転籍・紹介の前後を楽にする
紹介料の手続きは自分で進められますが、要員ごとの契約条件を探す手間は減らせます。 チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。
| 困りごと | チョータツでできること |
|---|---|
| 転籍の相談が来た要員の契約条件がすぐ見つからない | 案件・人材の情報を管理・共有し、提案前に条件を確認できる |
| 転籍で空いた枠の後任が見つからない | 他社と連携すると、他社の営業中人材をデータベース化できる |
| 後任の提案メールを一件ずつ送っている | パートナーへのメール配信機能がある |
3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
後任をフリーランスから探すなら、DrivenXのxhoursも使えます。ITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスです。転籍で空いた枠の埋め方は、SESで参画決定後にエンジニアが辞退したら|客先への連絡と代替要員の代替要員の探し方も参考になります。
よくある質問
- Q. 人材紹介の契約書に印紙は要りますか?
- 紹介のルールと手数料だけを定めた契約書は、印紙税の第2号(請負)にも第7号(売買・請負などの継続取引)にも当たらないため、原則として不要です。請負の内容を含めた場合は扱いが変わるので、税務署で確認しましょう。
- Q. 許可がなくても、転籍の紹介料を1回だけなら受け取れますか?
- 受け取らないのが安全です。回数ではなく、事業として行っているかで判断されます。無許可の場合は罰則の対象になるおそれがあります。
- Q. 人材紹介を業務委託で手伝えば許可は要りませんか?
- 契約書の名前では決まりません。雇用成立のあっせんをして報酬を受ければ、職業紹介に当たるおそれがあります。
- Q. 委託募集と職業紹介は何が違いますか?
- 委託募集は、雇いたい会社のために募集だけを行うことです。職業紹介は、求人と求職を結びつけて雇用成立をあっせんすることです。
- Q. 紹介料の請求書はいつ出しますか?
- 契約書で決めた発生時点の後に出します。入社日を発生時点にしたなら、入社を確認してから発行します。
- Q. 返金規定は必ず作る必要がありますか?
- 返戻金制度に関する事項は、求人企業にあらかじめ明示する事項です。制度の有無と内容を書面で伝えましょう。
まとめ
雇用が決まるよう仲立ちして紹介料を受け取るなら、有料職業紹介の許可が必要
「違約金」「業務委託」など名目を変えても、実態で職業紹介と判断されるおそれがある
委託募集は、雇いたい会社のために募集をすること。報酬ありなら許可と報酬額の認可が必要
人材紹介の契約書には、紹介料率・発生時点・支払時期・返金規定を必ず書く
紹介料は、上限制手数料か届け出た手数料表の範囲でしか受け取れない
請求書には、紹介した人・入社日・理論年収・料率を書き、インボイスの記載事項もそろえる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「職業安定法」(第4条 定義、第30条 有料職業紹介事業の許可、第32条の3 手数料、第32条の13 取扱職種の範囲等の明示等、第36条 委託募集、第64条 罰則)
e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」(第20条・別表 上限制手数料の最高額と徴収時期、第24条の5 返戻金制度に関する事項の明示)
厚生労働省「職業紹介事業業務運営要領・様式・各種報告書」(許可基準、手数料)
厚生労働省「人材サービス総合サイト」(職業紹介事業の許可事業所の検索)
国税庁「適格請求書等保存方式の概要」(適格請求書の記載事項)