ソリューション営業とは?SESで課題解決型の体制提案に変える5手順と見積もり例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

ソリューション営業とは?

ソリューション営業とは、顧客が困っていること(課題)を聞き出し、その解決策をセットで提案する営業のことです。商品を先に見せるのではなく、課題を先に聞くのが特徴です。「課題解決型営業」「提案型営業」とも呼ばれます。

SES営業に当てはめると、売るものは「エンジニア1人」ではありません。「課題を解決するためのチーム・体制」が売りものになります。

ほかの営業スタイルとの違い

営業のやり方は、大きく3つに分けられます。

スタイル何から話すかSES営業での例
御用聞き営業顧客の注文を聞く「Javaの人、1名いませんか」に人を探して出す
プロダクト営業自社の商品を説明する待機中のエンジニアのスキルシートを送る
ソリューション営業顧客の課題を聞く「保守が1人に頼りきり」という課題に、引き継ぎ込みの3名体制を出す

御用聞き営業とは、顧客の注文をそのまま受けて応える営業のことです。SES営業の多くは、案件メールに人を当てるこの形になりがちです。悪いやり方ではありませんが、ほかの会社と同じ土俵で比べられます。

SES営業がソリューション営業に変えるべき理由

理由は3つあります。単価で比べられにくくなる、エンドに近づける、顧客の悩みが変わってきている、の3つです。

1. 単価だけで比べられにくくなる

1人ずつの提案だと、顧客は「スキルシートと単価」だけで比べます。条件が同じなら、安い会社が選ばれます。

体制で提案すると、比べる対象が「課題が解決するかどうか」に変わります。リーダーの役割や引き継ぎの進め方まで含めて提案するので、単価だけの勝負になりにくくなります。

2. エンドや元請けとの直接取引につながる

エンドとは、システムを実際に使う発注元の会社のことです。エンドの課題を理解している会社は、「相談できる会社」として覚えてもらえます。

人を出すだけの会社は、間にいる会社に置きかえられやすい立場です。課題から話せる会社は、次の相談も直接来やすくなります。エンドに直接出す提案書の構成は、エンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本で紹介しています。

3. 顧客の悩みが「人数」から「体制」に変わっている

IPA(情報処理推進機構)は2026年7月30日に「DX動向2026」を公表しました。DXを進める人材の「量」が不足している(やや・大幅の合計)と答えた日本企業は85.5%です(2025年度調査)。「質」が不足していると答えた企業は88.8%でした。

DXとは、デジタル技術を使って仕事や事業のやり方を変えることです。人も知識も足りない会社は、「人を1人ください」より「どう進めればいいか」を相談したがっています。

経済産業省の「DXレポート2 中間取りまとめ」(2020年12月)も、ベンダー企業の役割の変化にふれています。「ベンダー企業の役割は労働力供給から高スキル人材によるスポット的支援等にシフト」するという見方です。人を出すだけの営業は、これから選ばれにくくなると考えるべきです。

SESでよくある顧客の課題と、体制提案の型

SESで出会う課題は、ある程度パターンが決まっています。課題ごとに「出す体制の型」を持っておくと、提案が早くなります。

よくある課題背景にある原因提案する体制の型
開発の人数が足りない採用が追いつかないリーダー1名+メンバー2名のチーム
内製化したいが進まない社内に教える人がいない社員と組むリーダー+育成の計画
保守が1人に頼りきり仕様が属人化している引き継ぎ担当+手順書づくりの期間
PMが忙しすぎる進捗管理や資料作成に追われるPMO(プロジェクト管理の補佐)1名
古いシステムを直せない古い言語を読める人がいない経験者1名+若手1名の組み合わせ

属人化とは、特定の1人しか仕事のやり方を知らない状態のことです。この人が辞めると、システムを誰も直せなくなります。

内製化の提案は内製化支援をSES営業で提案する方法|エンドに刺さる提案の型と例で解説しています。

ソリューション営業の5手順(SES版)

SESのソリューション営業は、次の5手順で進めます。1〜2は商談の中で、3〜5は商談のあと2〜3営業日で行います。

  1. 課題を聞く:人数ではなく「困っていること」を聞く

  2. 原因を仮説にする:なぜ困っているのかを、自分の言葉でまとめる

  3. 体制を組む:役割ごとに必要な人を決め、候補を当てる

  4. 見積もる:人ごとではなく、体制の合計で金額を出す

  5. 効果を約束する:3か月後にどうなっているかを言葉にする

手順1:課題を聞く

最初の商談では、「何名必要ですか」から聞かないことが大事です。先に、困っていることと、その理由を聞きます。

使いやすい質問は次のとおりです。

  • 「今、一番困っているのはどの工程ですか」

  • 「その状態が続くと、いつ・何に影響が出ますか」

  • 「社内の方は、今どんな役割を担っていますか」

  • 「過去に外部の会社を入れて、うまくいかなかったことはありますか」

  • 「半年後に、どうなっていれば成功ですか」

質問の型はSPIN営業とは|SESの商談で使える4つの質問の型と例文20が参考になります。

手順2:原因を仮説にする

仮説とは、「たぶんこうだろう」という仮の答えのことです。聞いた話を、「課題」「原因」「解決の方向」の3行にまとめます。

例:「保守の改修が遅い(課題)。仕様を知る社員が1人しかいない(原因)。引き継ぎと手順書づくりを先にやる(方向)」

この3行を次の打ち合わせで顧客に見せ、「合っていますか」と確認します。ずれていれば、ここで直せます。

手順3:体制を組む

体制提案とは、役割・人数・期間をセットにして提案することです。まず役割を決め、そのあとで人を当てます。

人から先に決めると、「今空いている人」に合わせた提案になってしまいます。役割から決めれば、自社に人がいない役割はパートナーの人材で埋める、と判断できます。

体制の組み方と単価の出し方は、SESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方で解説しています。

手順4:見積もる

見積もりは、1人ずつではなく体制の合計で出します。あわせて、役割ごとの内訳も書きます。

人月単価とは、エンジニア1人が1か月働いたときの料金のことです。単価の決め方はSESの提案単価の決め方|仕入れ単価から逆算する計算式と5つの要素で解説しています。

手順5:効果を約束する

最後に、「この体制で3か月後にどうなるか」を言葉にします。数字で言える目標があれば、より伝わります。

例:「3か月で手順書を20本作り、社員の方だけで月次の改修ができる状態にします」

ただし、SESの準委任契約は、仕事の完成を約束する契約ではありません。準委任契約とは、決まった業務を行うこと自体を約束する契約のことです。成果物の完成を保証するような書き方は避け、「目指す状態」として伝えましょう。

具体例:ヒアリング→体制提案→見積もり

ここでは、ある会社の保守案件を例に、流れを1本通して見てみます(会社名・金額は説明のための例です)。

最初の依頼

2026年10月1日(木)、取引先の元請けから次の依頼が届きました。

「社内システムの保守で、PHPができる人を1名、11月から。単価は70万円まで」

御用聞き営業なら、PHPができる人を探して1名出して終わりです。

ヒアリングでわかったこと

10月7日(水)に、元請けの担当者とエンドの情報システム部を交えて話を聞きました。

  • 保守をしている社員が1人だけで、その人が来年3月に異動する

  • 手順書がほとんどなく、仕様はその社員の頭の中にある

  • エンドは、いずれ社内で保守を回したいと考えている

本当の課題は「PHPの人が足りない」ではありません。「3月までに属人化を解消し、社内で回せる状態にしたい」ことでした。

提案した体制

役割人数期間主な仕事
保守リーダー1名11月〜3月引き継ぎの主担当、改修の判断
保守メンバー1名11月〜3月改修作業、手順書づくり
保守メンバー(延長)1名4月以降社内の方と保守を継続

見積もりの計算例

  • 11月〜3月:リーダー80万円+メンバー65万円=月145万円

  • 5か月の合計:145万円×5か月=725万円

  • 4月以降:メンバー1名 65万円/月(社内の方と2名体制)

元請けの予算は「1名70万円」でした。それでも、3月の異動で保守が止まる損失と比べてもらうことで、2名体制の検討が始まりました。1名で出していれば、70万円の枠の中で他社と比べられるだけでした。

体制案は、提案書の形にまとめて出します。元請けの担当者に送るメールは、次のように書きます。

例文・テンプレート
件名:〇〇システム保守のご提案(体制案と概算)

株式会社〇〇
〇〇様

先日はエンド様とのお打ち合わせにお時間をいただき、
ありがとうございました。株式会社△△の□□です。

伺ったお話を、次のように整理しました。
・課題:3月の担当者の異動までに、保守を社内で回せる状態にしたい
・原因:仕様を知る方が1名のみで、手順書がない

この課題に対し、11月〜3月の2名体制をご提案します。
・保守リーダー1名(引き継ぎの主担当)
・保守メンバー1名(改修と手順書づくり)
・概算:月145万円(5か月で725万円)

1名体制との違いを、添付の提案書で比べています。
10月14日(水)に、15分ほどご説明の時間をいただけますか。

提案書の書き方は要員提案書のサンプルと書き方|SES営業が押さえる項目7つを参考にしてください。

ソリューション営業で失敗しやすい4つのパターン

失敗の多くは、課題を聞く前に提案を決めてしまうことから起きます。次の4つに注意しましょう。

  • 空いている人ありきの提案:待機中の人を出したい気持ちが先に立ち、課題と合わない

  • 提案が大きすぎる:顧客の予算や決裁の範囲を超えた体制を出してしまう

  • 指示の出し方を決めていない:体制で入っても、顧客が各メンバーに直接指示するとトラブルになる

  • 効果を言い過ぎる:準委任なのに「必ず完成させます」と約束してしまう

「指示の出し方を決めていない」失敗は、法律上の問題につながるため特に注意が必要です。準委任や請負の契約で、顧客がメンバーに直接指示を出すと偽装請負にあたるおそれがあります。偽装請負とは、契約は請負や準委任なのに、実態は派遣のように顧客が直接指示している状態のことです。体制で提案するときは、指示を受ける窓口をリーダーにそろえておきましょう。判断の目安は偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策にまとめています。

体制提案を速く回す仕組みづくり

ソリューション営業は、提案までの速さで差がつきます。課題を聞いても、体制を組むのに1週間かかっていては、別の会社に決まってしまいます。

自分でやる方法

まずは、ツールがなくても始められる準備です。

  1. 体制の型を5つ作る:よくある課題ごとに、役割・人数・期間の組み合わせを決めておく

  2. 営業中人材の一覧を持つ:自社とパートナーの人材を、役割(リーダー・メンバー・PMO)ごとに並べる

  3. パートナーに役割で聞く:「PHPの人」ではなく「保守リーダーができる人」と依頼する

  4. 提案書のひな形を用意する:課題・原因・体制・見積もり・目指す状態の5項目を埋める形にする

依頼の例文はSESの人材提案依頼の方法|BPから要員を早く集める依頼メール例文にあります。

チョータツで楽にする方法

営業中人材の一覧を手作業で更新するのは大変です。パートナーから毎日届く人材メールを読み、Excelに写す作業が続くからです。

チョータツを使うと、この手間を減らせます。

  • 自社の案件・人材の情報を、チームで管理・共有できる

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベースとしてまとめられる

  • AIが入力を手伝うので、登録の手間が少ない

  • パートナーへのメール配信機能で、役割ごとの人材依頼を一斉に送れる

「保守リーダーができる人がパートナーにいないか」を、メールを探さずに確認できます。体制案を組むまでの時間が短くなり、課題を聞いたその週に提案を返しやすくなります。

よくある質問

Q. ソリューション営業とは簡単にいうと何ですか?
顧客の困りごとを先に聞き、それを解決する方法を提案する営業です。SES営業なら、人ではなく「課題を解決する体制」を提案します。
Q. SESの小さな会社でもソリューション営業はできますか?
できます。自社に人が少なくても、足りない役割をパートナーの人材で埋めれば体制を組めます。大事なのは人数より、課題を聞く力と体制を早く組む仕組みです。
Q. ソリューション営業と提案営業の違いは何ですか?
ほぼ同じ意味で使われます。どちらも、顧客の課題に合わせて解決策を提案する営業を指します。
Q. ソリューション営業は時間がかかりませんか?
1件あたりの商談は長くなります。ただし体制で決まるので、1件で2〜3名が決まることもあります。すべての案件ではなく、エンドに近い案件や長く続きそうな案件から始めるのがおすすめです。
Q. 元請けから「人だけ出して」と言われたらどうしますか?
まずは依頼どおりに人を提案し、そのうえで「背景の課題」を1つだけ聞いてみましょう。課題がわかれば、次の増員や体制の相談につながります。
Q. 体制で提案すると単価は上がりますか?
必ず上がるわけではありません。ただ、1人ずつ単価で比べられる状態からは抜け出しやすくなります。リーダーの役割に見合った単価を提案しやすくなるのも利点です。

まとめ

  • ソリューション営業とは、顧客の課題を先に聞き、解決策をセットで提案する営業のこと

  • SESでは、「人」ではなく「課題を解決する体制」を提案する

  • 5手順は、課題を聞く→原因を仮説にする→体制を組む→見積もる→効果を約束する

  • 体制で提案すると、単価だけで比べられにくくなり、エンドとの直接取引にもつながりやすい

  • 準委任では完成を保証しない書き方にし、指示の窓口をリーダーにそろえる

  • 体制を速く組むには、自社とパートナーの営業中人材をすぐ探せる状態が必要。チョータツの連携で、他社の営業中人材もまとめて探せる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

  • IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX動向2026」(2026年7月30日公表。図表4-1・4-3:DXを推進する人材の「量」「質」の確保状況)

  • 経済産業省「DXレポート2 中間取りまとめ」(2020年12月28日。ベンダー企業の役割の変化)

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