SPIN営業とは|SESの商談で使える4つの質問の型と例文20【トークスクリプト付き】

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SPIN営業とは?

SPIN営業とは、4種類の質問を順番に使い、お客様の課題とその解決の価値を引き出す営業手法のことです。 英国の研究者ニール・ラッカム氏が、1988年の著書『SPIN Selling』で広めました。

ラッカム氏のチームは、20か国以上で3万5,000件の商談を観察しました。そこから、大きな商談で成果を出す営業がどんな質問をしているかを整理したのが、SPINです。

SPINは、4つの質問の頭文字です。

頭文字質問の種類ねらいSESの商談での例
S状況質問(Situation)今の状況をつかむ今のチームは何名ですか
P問題質問(Problem)困りごとを見つける人が足りない工程はどこですか
I示唆質問(Implication)困りごとの影響の大きさに気づかせるこのままだとリリースはどうなりますか
N解決質問(Need-payoff)解決したときの価値を相手に言ってもらう設計がわかる人が入ると何が楽になりますか

ポイントは、営業が答えを言うのではなく、お客様に言ってもらうことです。自分の口で「困っている」「こうなれば助かる」と言うと、提案を受け入れやすくなります。

質問型営業との関係

質問型営業とは、説明よりも質問を中心に商談を進める営業スタイルのことです。 SPIN営業は、質問型営業の中でも「質問の順番と種類」が決まった型といえます。

「最強のフレーズ」を探すより、4つの型のどこで何を聞くかを決めるほうが再現しやすくなります。新人でも、型に沿って聞けば商談の中身が安定します。

SESの商談にSPIN営業が向いている理由

SESの商談は「人数と単価」だけの話になりやすいので、課題を深掘りするSPIN営業が効きます。 案件票に書いてあるのは、スキルと人数と単価だけのことが多いからです。

よくある商談の流れと、SPINを使った流れを比べます。

比べる点よくある商談SPINを使った商談
最初の質問何名ほしいですか今のチームの体制を教えてください
わかること人数・スキル・単価人が足りない理由と、困っている影響
提案の中身条件に合う人を1名ずつリーダー+メンバーなど体制ごと
比べられるもの他社の単価課題を解決できるかどうか

「何名ほしいか」だけで終わると、お客様は同じ条件を何社にも出します。結果として、一番安い会社か、一番早く出せる会社が選ばれます。

課題まで聞けていれば、「リーダーを1名入れて若手を2名」のような組み合わせを提案できます。単価の比べ合いから抜け出し、提案単価を上げる材料にもなります。

SPINの4つの質問の型と例文20

ここからは、エンド・元請けとの商談でそのまま使える例文を、型ごとに5つずつ紹介します。 言い回しは、相手との関係に合わせて変えてください。

S:状況質問(例文5)

状況質問とは、相手の今の体制や進め方など、事実を確認する質問のことです。 数が多いと相手が疲れるので、事前に調べられることは聞きません。

  1. 「今のプロジェクトは、社内の方と協力会社の方で何名の体制ですか」

  2. 「今は、どの工程まで進んでいますか。設計ですか、開発ですか」

  3. 「協力会社さんは、今何社くらいとお付き合いがありますか」

  4. 「今回の募集は、新しい体制づくりですか。それとも欠員の補充ですか」

  5. 「チームの進め方は、ウォーターフォールとアジャイルのどちらに近いですか」

会社の事業内容や公開済みのニュースは、商談前に調べておきます。聞くのは、外からはわからない体制と進め方だけに絞ります。

P:問題質問(例文5)

問題質問とは、相手が困っていることや不満を見つける質問のことです。 状況質問で聞いた事実から、困りごとの候補を1つずつ確かめます。

  1. 「今の体制で、手が足りていないと感じる工程はどこですか」

  2. 「協力会社さんから来たメンバーで、期待と違ったことはありますか」

  3. 「リーダーの方に、作業と管理の両方が集まっていませんか」

  4. 「募集をかけてから、決まるまでにどのくらいかかっていますか」

  5. 「スキルは合っていても、立ち上がりに時間がかかることはありますか」

問題質問は、責める言い方にならないよう気をつけます。「うまくいっていないことは?」ではなく、「手が足りない工程は?」のように場所を聞きます。

I:示唆質問(例文5)

示唆質問とは、困りごとが続くと何が起きるかを考えてもらう質問のことです。 SPINの中で一番大事で、一番難しい質問です。

  1. 「リーダーの方に作業が集まると、レビューや品質の確認はどうなりますか」

  2. 「このまま1か月決まらないと、次のリリース日への影響はありますか」

  3. 「立ち上がりに2か月かかると、その間の既存メンバーの残業は増えますか」

  4. 「メンバーの入れ替わりが続くと、引き継ぎにどのくらい時間を取られていますか」

  5. 「その遅れは、エンドのお客様や上の方への報告に影響しますか」

示唆質問の目的は、困りごとを「小さな不便」から「放っておけない問題」に変えることです。答えにくそうなときは、無理に深掘りせず次の質問に移ります。

N:解決質問(例文5)

解決質問とは、課題が解決したときの良さを、相手に言ってもらう質問のことです。 営業が「こうなります」と言うより、相手が言うほうが納得感が出ます。

  1. 「設計から入れるリーダーが1名いたら、今のリーダーの方は何に時間を使えますか」

  2. 「立ち上がりが2週間短くなると、スケジュールにどのくらい余裕が出ますか」

  3. 「同じ会社からチームで入ると、窓口がまとまって楽になりますか」

  4. 「若手を育てられる人がいれば、次の増員はしやすくなりますか」

  5. 「その体制ができたら、次のフェーズでどんな動き方をしたいですか」

相手の答えは、そのまま提案書やメールの言葉に使います。「リーダーの負担が減る」と言ってもらえたら、提案の見出しにします。

初回商談のSPINトークスクリプト(元請けとの30分)

初回商談は、状況5分・問題10分・示唆10分・解決5分を目安に組み立てます。 時間配分を決めておくと、状況質問だけで終わる失敗を防げます。

  1. あいさつと目的の確認(1分):「本日は、今の体制とお困りごとを伺い、合う形をご提案したいと思っています」

  2. 状況質問(5分):体制・工程・協力会社の数を聞く。3つ以内に絞る

  3. 問題質問(10分):手が足りない工程、募集で困っていることを聞く

  4. 示唆質問(10分):その困りごとが、リリースや品質にどう響くかを聞く

  5. 解決質問(3分):解決したら何が楽になるかを、相手に言ってもらう

  6. まとめと次の約束(1分):聞いた課題を1文で言い直し、提案の日を決める

会話の例を1つ示します。

営業:今のチームで、手が足りない工程はどこですか。(問題)
お客様:詳細設計ですね。リーダーが1人で見ていて。
営業:リーダーの方が詳細設計にかかりきりだと、開発メンバーのレビューはどうなっていますか。(示唆)
お客様:正直、後回しです。手戻りが増えています。
営業:詳細設計を任せられる人が1名入ったら、リーダーの方はレビューに時間を使えそうですか。(解決)
お客様:それは助かります。PGを増やすより先かもしれません。

最後の一言で、募集は「PG2名」から「設計ができる人1名+PG」に変わります。人数ではなく課題から提案を作るとは、このような変化のことです。

商談後は、当日中にお礼と確認のメールを送ります。

件名:本日のお打ち合わせのお礼と、ご提案の方向性について

本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
詳細設計をリーダーの方がお一人で見ていて、開発のレビューが後回しになっていると伺いました。
そこで、詳細設計を担当できる方1名と、PG1名の体制でご提案を準備いたします。
10月5日(月)までに、スキルシートをお送りします。

増員提案でSPINを使う方法(既存顧客)

既存のお客様への増員提案では、状況質問をほぼ省き、問題質問から入ります。 現場の様子は、参画中のエンジニアから聞けるからです。

  1. 参画中のエンジニアに、現場で困っていることを聞いておく(例:テスト工程が遅れている)

  2. 「最近、テスト工程のご状況はいかがですか」と問題質問から入る

  3. 「テストが遅れると、次の本番リリースへの影響はありますか」と示唆質問をする

  4. 「テスト経験のある方があと1名いると、何が変わりそうですか」と解決質問をする

  5. 相手の言葉を使って、増員の提案を出す

増員を引き出す全体の手順は、SESの既存顧客営業|増員・横展開を引き出す6ステップと例文3つで解説しています。

エンジニアから聞いた話を、そのまま「〇〇さんから聞きました」と言わないよう注意します。エンジニアとお客様の関係を悪くするおそれがあるからです。

提案単価が上がる計算例

体制で提案すると、1名あたりの単価だけで比べられにくくなります。次の数字は、説明のための仮の例です。

提案の形中身月額の合計(例)
人数だけの提案PG 2名×70万円140万円
課題から考えた提案設計ができる人1名×85万円+PG 1名×70万円155万円

人数は同じ2名でも、月額の合計は15万円高くなります。お客様にとっても「リーダーの負担が減る」という理由があるので、値上げではなく課題の解決として受け止めてもらえます。

提案単価の決め方そのものは、SESの提案単価の決め方|仕入れ単価から逆算する計算式と5つの要素で詳しく解説しています。体制の組み方は、SESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方が参考になります。

SPIN営業でやってはいけないこと

やってはいけないのは、質問攻め・誘導・契約上NGな約束の3つです。 どれも、お客様の信頼を一気に失います。

NG例代わりにどうするか
状況質問が多すぎる会社概要から順に10問聞く事前に調べて3つ以内に絞る
答えを誘導する「困ってますよね?」「どの工程が大変ですか」と開いて聞く
すぐ売り込む問題を聞いた直後に人材を紹介示唆質問で影響を聞いてから提案する
指示の約束をする「うちの人に直接何でも指示してください」指示は自社側のリーダー(責任者)を通す形で話す

特に注意したいのが、最後の指示の約束です。SESで多い準委任契約とは、法律行為ではない事務(作業)の処理を引き受ける契約のことです(民法第656条)。準委任契約なのに、お客様がエンジニアに直接指示(指揮命令)を出すと、偽装請負と判断されるおそれがあります。

体制提案で「リーダーを入れる」と話すときは、指示の流れを自社側のリーダー経由にすると伝えます。お客様にも安心してもらえます。詳しくは偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策を確認してください。

SPIN営業を身につける練習方法

練習は、自分の商談を「S・P・I・N」に分けて数えることから始めます。 感覚ではなく数で見ると、どこが足りないかがすぐわかります。

  1. 商談で聞いた質問を、終わったらすぐメモに書き出す

  2. それぞれの質問に、S・P・I・Nの印を付ける

  3. 型ごとの数を数える(例:S 8問・P 2問・I 0問・N 1問)

  4. 一番少ない型の質問を、次の商談用に3つ用意する

  5. 週に1回、チームで質問メモを見せ合う

数え方は、次の記録表を使うと続けやすくなります。

商談S・P・I・Nの数一番少ない型次回用に用意する質問
10/6 A社S8・P2・I0・N1I(示唆)「その遅れはリリースに響きますか」
10/8 B社S4・P3・I1・N1I(示唆)「残業が続くと、離職は心配ですか」
10/13 C社S3・P3・I2・N2N(解決)「1名入ると、何が楽になりますか」

社内で練習の場を作るなら、SES営業のロープレのやり方|場面別シナリオ6つと評価シートの進め方が使えます。

最初は、ほとんどの人が状況質問ばかりになります。示唆質問が1つ聞けたら上出来と考え、少しずつ増やしていきます。

聞くべき項目を押さえたいときは、SESの営業ヒアリング項目30|初回商談のヒアリングシート付きをあわせて使ってください。ヒアリングシートで条件を埋め、SPINで課題を深掘りする、という使い分けがおすすめです。

チョータツで商談の内容を提案につなげる

商談で聞いた課題と条件は、案件ごとに1か所へ残すと、次の提案と増員の相談が早くなります。 自分でやるなら、Excelやスプレッドシートに案件ごとの行を作り、「課題」の列を1つ足すだけでも効果があります。

ただ、営業が複数いると、メモが個人のノートやメールに散らばりがちです。チョータツを使うと、次のことが楽になります。

  • 案件・人材の情報を管理・共有できる:商談で聞いた条件を案件として登録し、チームで同じ情報を見られます

  • 他社の営業中人材もまとめて探せる:他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。体制提案で自社だけでは足りないときに役立ちます

  • パートナーへのメール配信ができる:体制に足りない人材を、パートナー企業にまとめて依頼できます

  • AIが入力を手伝う:案件の登録にかかる手間を減らせます

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。Excelでの管理方法は、SESの案件・人材管理をExcelで無料で行う方法|テンプレ付きで紹介しています。

よくある質問

Q. SPIN営業とは何の略ですか?
Situation(状況)・Problem(問題)・Implication(示唆)・Need-payoff(解決)の頭文字です。この順に質問して、課題と解決の価値を引き出します。
Q. SPIN営業は、SESのような短い商談でも使えますか?
使えます。30分の商談なら、状況質問を事前調査で減らし、問題と示唆に20分使うのが目安です。すべてを1回で聞けなくても、次の商談で続きを聞けば大丈夫です。
Q. 質問型営業の「最強のフレーズ」はありますか?
どんな相手にも効く1文はありません。SESの商談で効きやすいのは、「それが続くと、何が困りますか」という示唆質問の形です。人数の話を課題の話に変えられます。
Q. 示唆質問がうまく出てきません。どうすればいいですか?
「時間」「品質」「お金」「人」の4つに当てはめて考えます。たとえば「リリースが遅れる」「手戻りが増える」「残業が増える」「人が辞める」です。商談前に3つ書き出しておくと、その場で聞きやすくなります。
Q. SPIN営業のトークスクリプトは、BP(パートナー企業)との商談でも使えますか?
使えます。BPには「今、待機しそうな人はいますか」(状況)から入り、「決まりにくい理由は何ですか」(問題)と続けます。人材を出してもらう理由がわかると、提案しやすい案件を渡せます。
Q. ソリューション営業とは何が違いますか?
ソリューション営業は「課題を解決する提案をする」という考え方です。SPIN営業は、その課題を引き出すための質問の型です。一緒に使うと効果が上がります。

まとめ

  • SPIN営業は、状況→問題→示唆→解決の順に質問する営業手法です。

  • SESの商談で「何名ほしいか」だけを聞くと、単価と人数の比べ合いになります。

  • 示唆質問で「困りごとが続くと何が起きるか」を聞くと、体制ごとの提案ができます。

  • 相手が言った解決の言葉は、そのまま提案書やメールの見出しに使います。

  • 指示の流れなど、契約上NGな約束はしないよう注意します。

  • 聞いた課題と条件は、案件ごとに1か所へ残して次の提案に使います。

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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