フリーランスと個人事業主の違い|個人BPと契約するときにSES営業が確認する7項目と例文
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
フリーランスと個人事業主の違いとは?
フリーランスと個人事業主の違いは、「働き方の呼び名」か「税金の上の立場」かです。同じ人が、両方に当てはまることがよくあります。
フリーランスとは、特定の会社に雇われず、仕事ごとに契約して働く人のことです。法律で決まった呼び名ではなく、働き方を表す言葉です。個人のまま働く人も、自分の会社をつくって働く人もいます。
個人事業主とは、会社(法人)をつくらずに、個人で事業をしている人のことです。税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を出し、確定申告で税金を納めます。
| 比べる点 | フリーランス | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 何を表す言葉か | 働き方(雇われない) | 税金の上の立場(個人の事業者) |
| 法人でもなれるか | なれる(一人社長など) | なれない(法人は別の扱い) |
| 開業届 | 働き方なので届出はない | 税務署に出す |
| SES営業から見た相手 | 個人のことも法人のこともある | 必ず「個人」との契約になる |
つまり、「個人事業主のフリーランス」と「法人のフリーランス」がいる、と考えるとわかりやすいです。SES営業は、目の前の相手がどちらなのかを最初に確かめます。
自営業・業務委託とフリーランスの違い
自営業は「自分で商売をしている人全体」、業務委託は「契約の形」を表す言葉です。どちらもフリーランスと重なりますが、同じ意味ではありません。
自営業とは、会社に雇われずに自分で事業を営んでいることです。お店を開く人や家業を継いだ人も含む、広い言葉です。フリーランスは、その中でも「一人で仕事を受けて働く人」を指すことが多いです。
業務委託とは、仕事の一部を外部の人や会社に任せる契約のことです。フリーランスは働き方、業務委託は契約の種類です。SESでは、個人BPと準委任契約(作業時間や作業そのものに報酬を払う契約)を結ぶのが一般的です。
| 言葉 | 何を表すか | SESでの使われ方 |
|---|---|---|
| フリーランス | 働き方 | 「フリーランスの方」「個人の方」と呼ぶ |
| 個人事業主 | 税金の上の立場 | 契約・請求の相手が個人になる |
| 自営業 | 事業のしかた全般 | SESの現場ではあまり使わない |
| 業務委託 | 契約の形 | 準委任・請負で個人BPと契約する |
契約の種類は「業務委託とは?意味と種類|SES営業が押さえる準委任と請負の違い」でくわしく解説しています。
SES営業が「個人か法人か」を気にする理由
SES営業が相手の立場を気にするのは、個人か法人かで、契約書・請求・税金・法律の扱いが変わるからです。呼び名がフリーランスでも、実際は一人社長の法人ということもあります。
法人成りとは、個人事業主が会社をつくり、法人として事業を続けることです。法人成りしたBPは、契約も請求も会社名で行います。個人との契約と比べると、確認することが少し変わります。
| 確認すること | 個人事業主のBP | 法人成りしたBP(一人社長) |
|---|---|---|
| 契約名義 | 本人の氏名(屋号を併記) | 会社名+代表者名 |
| 見分け方 | 法人番号がない | 国税庁の法人番号公表サイトで出てくる |
| 源泉徴収 | 仕事の内容によって必要 | 原則いらない |
| フリーランス法 | 従業員がいなければ対象 | 役員が本人だけで従業員がいなければ対象 |
見分け方は簡単です。国税庁の法人番号公表サイトで会社名を検索し、出てくれば法人です。出てこなければ、個人事業主として契約を組み立てます。
個人BPと契約する前に確認する7項目
個人BPとの契約前には、名義・インボイス・源泉徴収・フリーランス法を中心に7項目を確認します。この7つを先にそろえると、請求の段階で慌てずにすみます。
| # | 確認項目 | 確認のしかた | 抜けると起きること |
|---|---|---|---|
| 1 | 個人か法人か | 法人番号公表サイトで検索 | 契約書の相手を書き直す |
| 2 | 契約名義と屋号 | 本人の氏名・屋号・住所を聞く | 請求書と契約書の名前が合わない |
| 3 | 開業届を出しているか | 本人に口頭で確認 | 事業者か会社員の副業か、あいまいになる |
| 4 | インボイス登録の有無 | 登録番号を聞き、公表サイトで確認 | 消費税の扱いで後からもめる |
| 5 | 源泉徴収が必要な仕事か | 仕事の内容を確認 | 税金の天引き漏れ |
| 6 | 従業員がいるか | 本人に確認 | フリーランス法の対象か判断できない |
| 7 | 振込先の名義 | 口座名義を確認 | 名義違いで振込が止まる |
1〜3. 名義・屋号・開業届
屋号とは、個人事業主がつける「お店の名前」のようなものです。屋号は会社名ではないので、契約の当事者は本人です。契約書には「屋号 〇〇 氏名 △△」のように、本人の氏名を必ず入れます。
開業届を出しているかは、「事業として続けて仕事を受けている人か」を知る目安になります。会社員の副業の場合は、本業の会社の就業ルールや稼働時間にも気をつけます。ほかの案件との掛け持ちが後でわかったときの対応は「SESのBP要員の案件掛け持ちが発覚したら|契約違反の判断と対応」にまとめています。開業届の出し方や期限は、国税庁の案内で確認できます。
4. インボイス登録
インボイスとは、登録番号などが書かれた、消費税の計算に使える請求書のことです。個人BPが登録していないと、発注側は払った消費税の一部しか差し引けません。登録番号は「T+13けたの数字」で、国税庁のインボイス公表サイトで確かめられます。
登録していないBPからの仕入れは、経過措置(段階的に減らしていく特例)で一部を差し引けます。2026年9月30日までは80%です。令和8年度の税制改正で、次のように見直されました。
| 期間 | 差し引ける割合 |
|---|---|
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 0% |
1つの相手からの仕入れが年に税込1億円を超えた部分には、経過措置は使えません(2026年10月1日以後に始まる課税期間から)。くわしくは国税庁の令和8年度税制改正特集で確認できます。
登録していないことを理由に一方的に単価を下げるのは、法律上の問題になることがあります。進め方は「インボイスで免税事業者に値下げは違反?SESの取引と単価交渉」にまとめています。
5. 源泉徴収
源泉徴収とは、報酬を払う側が所得税を先に差し引いて、国に納める仕組みのことです。個人に払う報酬のうち、原稿料やデザイン料などは源泉徴収の対象です(所得税法第204条第1項第1号)。税率は100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です(国税庁 No.2795)。
プログラミングなどのシステム開発の報酬は、対象になる報酬の一覧(国税庁 No.2792)に直接は入っていません。ただし、同じ人にWebデザインも頼むと、その部分が対象になることがあります。判断に迷う仕事は、税理士に確認しましょう。
計算例:個人BPにバナーデザインを30万円で頼んだ場合
30万円 × 10.21% = 30,630円を差し引き、269,370円を振り込みます(消費税は別に扱います)。
2027年1月以後は内訳(所得税・復興特別所得税・防衛特別所得税)が変わりますが、合計の10.21%は変わりません。くわしい計算は「エンジニアへの業務委託と源泉徴収|不要な場合と消費税の計算例」で解説しています。
6〜7. 従業員の有無と振込先
従業員がいない個人は、フリーランス法の「特定受託事業者」にあたります。次の見出しで説明する義務がかかるので、必ず確認します。振込先は、屋号付きの口座か本人名義の口座かを確かめ、契約書の名義とそろえます。
フリーランス法で発注側に求められること
個人BPや一人社長の法人に仕事を出すSES企業は、フリーランス法の発注者の義務を守る必要があります。フリーランス法は2024年11月1日に施行されました。
取引条件の明示(第3条)は、すべての発注者の義務です。支払期日やハラスメント対策などは、従業員を使うか役員が2人以上いる発注者(特定業務委託事業者)の義務です。社員を雇っているSES企業は、ほぼすべて特定業務委託事業者に当たります。
特定受託事業者とは、仕事を受ける事業者のうち、従業員を使っていない人や会社のことです。一人社長で、ほかに役員も従業員もいない法人も含まれます。「フリーランス」と名乗るかどうかではなく、従業員の有無で決まります。
| 委託の期間 | 発注側の主な義務 | 根拠 |
|---|---|---|
| すべての委託 | 取引条件(仕事の内容・報酬・支払期日など)を書面かメールで直ちに明示する | 第3条 |
| すべての委託 | 報酬を、受け取った日から60日以内のできるだけ早い日に払う | 第4条 |
| すべての委託 | ハラスメント対策(相談窓口の設置など)をとる | 第14条 |
| 1か月以上 | 受領拒否・減額・買いたたきなど7つの禁止行為をしない | 第5条 |
| 6か月以上 | 中途解除・更新しないときは30日前までに予告する/育児・介護への配慮 | 第16条・第13条 |
支払期日の計算例:10月分の稼働を2026年10月31日に締めて受け取った場合
受け取った日から数えて60日目は、2026年12月29日です。翌月末(11月30日)払いなら確実に収まります。
翌々月末(12月31日)払いは62日目です。国のQ&A(問48)では、月単位の締切で61・62日目になる場合は「受領から2か月以内」として運用します。問題としない、という扱いです。ただ、締め日と受領日のずれで判断が変わるため、個人BPは翌月末払いを社内の標準にすると安全です。
元請けから受けた仕事を個人BPに出す「再委託」には例外があります。元委託の情報を明示すれば、元委託の支払期日から30日以内で定められます(第4条第3項)。義務の全体は「フリーランス法のSES対応|発注者の義務7つと実務チェック表」で確認できます。明示のメール文面は「フリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例」をそのまま使えます。
SES営業の現場での使い方
SES営業の現場では、「フリーランス」「個人事業主」という言葉は相手の契約形態を確かめる合図として使います。呼び名そのものより、「個人か法人か」「インボイス登録があるか」を聞くことが大切です。
よく使う場面
BPから人材の提案メールが届いたとき:「所属:個人」「フリーランス」とあれば、個人か法人成りかを確認します。
商流を確認するとき:元請けによっては「個人との直接契約は不可」「個人は2社先まで」などのルールがあります。提案前に確かめます。
契約書を作るとき:屋号と本人の氏名、住所、インボイス登録番号をそろえます。
請求・支払いのとき:源泉徴収の有無と、60日以内の支払期日を確認します。
確認メールの例文
件名:【ご確認】11月からのご契約に向けた確認事項
〇〇様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
2026年11月1日開始の案件について、ご契約の準備を進めております。
お手数ですが、次の点をご返信いただけますでしょうか。
契約の名義(個人の場合は屋号と氏名、法人の場合は会社名)
インボイス登録番号(T+13けた。未登録の場合はその旨)
従業員の方の有無
振込先の口座名義
2026年10月15日(木)までにいただけますと助かります。
どうぞよろしくお願いいたします。
社内での言い方の例
「〇〇さんはフリーランスですが、法人成りしているので、契約は会社名でお願いします」
「この方は個人事業主でインボイス未登録です。単価の話は、値下げにならない形で進めます」
「一人社長の法人なので、フリーランス法の対象です。条件明示のメールを送っておきます」
やってはいけないこと
「フリーランス」と書いてあるだけで、個人だと決めつける
インボイス未登録を理由に、話し合いなく単価を下げる
取引条件を口頭だけで決め、書面やメールに残さない
客先で個人BPに直接指示を出させる(偽装請負につながる)
指揮命令の線引きは「準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20」で確認できます。
個人BPの情報管理とフリーランス探しを楽にする方法
自分で管理するなら、個人BPごとに「個人か法人か」「屋号」「インボイス登録番号」「従業員の有無」を表にまとめます。更新日も入れておくと、登録状況の変化に気づけます。管理項目の決め方は「業務委託の管理方法|フリーランス・BP要員を契約・稼働・支払で管理」が参考になります。
もっと楽にするなら、DrivenXの2つのサービスが使えます。
チョータツは、SES営業の案件・人材の管理・共有ツールです。案件・人材の情報をまとめて管理でき、パートナーへのメール配信機能もあります。3,000社以上が利用していて、無料で始められます。
xhours(エックスアワーズ)は、企業がITフリーランスに直接スカウトできるサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから、条件に合う人を探せます。BP経由で見つからないときに、個人のエンジニアへ直接声をかける手段になります。
よくある質問
- Q. フリーランスと個人事業主は、どっちと名乗るのが正しいですか?
- どちらも間違いではありません。フリーランスは働き方、個人事業主は税金の上の立場を表します。SES営業は呼び名より、契約の相手が個人か法人かを確認しましょう。
- Q. 業務委託とフリーランスの違いは何ですか?
- 業務委託は契約の形、フリーランスは働き方です。SESでは、フリーランスのエンジニアと業務委託(主に準委任)の契約を結びます。
- Q. 自営業とフリーランスの違いは何ですか?
- 自営業は自分で事業を営む人全体を指す広い言葉です。フリーランスは、その中で仕事ごとに契約して働く人を指すことが多いです。
- Q. 開業届を出していない個人と契約してもいいですか?
- 契約自体はできます。ただし、事業として続けているのか、会社員の副業なのかを確認しましょう。副業の場合は、稼働時間や本業の会社のルールにも気をつけます。
- Q. 法人成りしたBPにもフリーランス法はかかりますか?
- 代表者1人だけで、ほかに役員も従業員もいない法人なら対象です。従業員を雇っている会社や、役員が2人以上いる会社は対象外です。
- Q. インボイス未登録の個人BPとは取引しないほうがいいですか?
- 一律に避ける必要はありません。経過措置で消費税の一部は差し引けます。単価を変えたいときは、話し合って合意し、書面に残しましょう。
まとめ
フリーランスは「働き方」、個人事業主は「税金の上の立場」。多くの人は両方に当てはまる
SES営業が確認すべきなのは、契約相手が個人か法人か
法人成りしたBPは、法人番号公表サイトで見分けられる
個人BPとの契約前に、名義・屋号・開業届・インボイス・源泉徴収・従業員・振込先の7項目を確認する
従業員のいない個人や一人社長の法人には、フリーランス法の発注者義務がかかる。取引条件の明示と60日以内の支払いを守る
個人BPの情報管理はチョータツ、フリーランスへの直接スカウトはxhoursで楽にできる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第2条・第3条・第4条・第5条・第13条・第14条・第16条)
厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法に関するQ&A」(問48)
公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」
e-Gov法令検索「所得税法」(第204条第1項)
国税庁「法人番号公表サイト」
国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」
国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス制度)」