下請事業者とは?親事業者との違いと取適法での呼び方|SESの2次請け・3次請けの立場を判定
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
下請事業者とは?法律上の意味をわかりやすく
下請事業者とは、下請法の対象になる取引で、仕事を受ける側の事業者のことです。発注側より資本金などの規模が小さく、法律で守られる立場にあります。
ポイントは、「下請けの仕事をしている会社」すべてが下請事業者ではないことです。法律が決めた取引の種類と、規模の基準の両方に当てはまった場合だけ、法律上の下請事業者になります。
親事業者とは
親事業者とは、下請法の対象になる取引で、仕事を出す側の事業者のことです。親事業者には、注文内容をすぐに伝える、60日以内に払うなどの義務と、減額や買いたたきなどの禁止行為がかかります。
| 項目 | 親事業者(現:委託事業者) | 下請事業者(現:中小受託事業者) |
|---|---|---|
| 役割 | 仕事を出す側 | 仕事を受ける側 |
| 規模 | 大きい側 | 小さい側(個人を含む) |
| 法律上の扱い | 義務と禁止行為を守る | 法律で守られる |
| SESでの例 | BPへ案件を出す自社 | 自社から案件を受けるBP |
下請取引とは
下請取引とは、下請法(取適法)の対象になる取引のことです。取引の種類と、発注側・受注側の規模の差という2つの条件で決まります。契約の名前が準委任か請負かは関係ありません。
法律の全体像は、下請法をわかりやすく|取適法への改正点とSES企業の義務4つで整理しています。
取適法で呼び方が「委託事業者」「中小受託事業者」に変わった
2026年1月1日から、法律上の呼び方は委託事業者と中小受託事業者に変わりました。下請法が改正され、取適法(中小受託取引適正化法)として施行されたためです。
取適法とは、改正後の下請法の略称のことです。正式な名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。
| 改正前(下請法) | 改正後(取適法) | SESでの例 |
|---|---|---|
| 親事業者 | 委託事業者 | BPへ仕事を出す自社 |
| 下請事業者 | 中小受託事業者 | 自社から仕事を受けるBP |
| 下請代金 | 製造委託等代金 | BPへ払う月額単価 |
公正取引委員会は、用語を見直した理由を「共存共栄を目指す対等なパートナーとして取引適正化を推進」するためと説明しています。「下請」「親」という上下関係のある言葉をやめ、発注側と受注側を対等な取引相手として扱う考え方です。
営業の現場では両方の言葉が使われる
2026年9月時点でも、現場では「下請法」「下請け」という言葉がよく使われます。契約書や社内マニュアルは新しい呼び方にそろえ、会話では両方わかるようにしておくと混乱しません。
契約書を直すときは、次の順番で進めると漏れが出ません。
基本契約書・注文書・注文請書のひな形で「親事業者」「下請事業者」「下請代金」を検索する
「委託事業者」「中小受託事業者」「製造委託等代金」に置きかえる
支払方法の欄から手形を消す(取適法で手形払は禁止)
社内マニュアルとメールのテンプレートも同じ言葉にそろえる
改正の中身は、下請法改正のポイント|2026年施行の取適法でSES営業が変える6点で比較表にしています。
「下請け業者」「下請け企業」と法律上の下請事業者の違い
普段の「下請け」は、上の会社から仕事を受けている会社全体を指す言葉です。法律上の下請事業者(中小受託事業者)は、その中で条件を満たした一部だけです。
下請けとは、ほかの会社が受けた仕事の全部または一部を、さらに引き受けることです。下請け業者、下請け企業、下請け会社は、ほぼ同じ意味で使われます。
| 言葉 | 意味 | 法律の保護 |
|---|---|---|
| 下請け(業者・企業・会社) | 上の会社から仕事を受ける会社(普段の言葉) | 条件しだい |
| 元請け | 発注元から直接仕事を受ける会社 | 発注元との取引では対象外のことが多い |
| 外注 | 社外に仕事を出すこと・出す先 | 条件しだい |
| 中小受託事業者 | 取適法の条件を満たした受注側 | 守られる |
普段の言葉としての意味は、用語集の下請けとは?意味と元請けとの違い、取適法での新しい呼び名でも解説しています。
たとえば、2次請けのSES企業は普段の言葉では「下請け」です。しかし、発注元の1次請けと規模の差が基準に届かなければ、法律上の中小受託事業者にはなりません。
下請契約とは
下請契約とは、元請けなどが受けた仕事を、さらに別の会社に任せる契約のことです。SESでは、BPとの基本契約と、案件ごとの注文書・注文請書がこれに当たります。
下請契約を結んだからといって、自動的に取適法の対象になるわけではありません。取適法の対象かは、次の2つの基準で決まります。
下請事業者になる2つの条件
中小受託事業者(旧:下請事業者)になるのは、取引の種類と規模の差の両方がそろったときです。どちらか一方だけでは対象になりません。
条件1:取引の種類
取適法の対象は5つの取引です。SESに関係するのは主に次の2つです。
情報成果物作成委託とは、プログラムや設計書などの作成を、ほかの会社に任せることです。法律は契約の名前ではなく「作成の行為を任せているか」で決めているため、準委任で客先に常駐してもらう場合でも、プログラムを作る仕事ならこれに当たる可能性があります。
役務提供委託とは、自社が受けたサービスの提供を、ほかの会社に任せることです。システムの運用などが当たります。
条件2:規模の差(資本金か従業員数)
プログラムの作成や情報処理(運用など)を任せる場合は、次のどれかに当てはまると対象です。
| 基準 | 発注側(委託事業者) | 受注側(中小受託事業者) |
|---|---|---|
| 資本金① | 3億円超 | 3億円以下(個人を含む) |
| 資本金② | 1,000万円超〜3億円以下 | 1,000万円以下(個人を含む) |
| 従業員 | 300人超 | 300人以下(個人を含む) |
従業員基準とは、資本金に加えて、常時使用する従業員の数でも対象を決める基準のことです。2026年1月の改正で加わりました。資本金が小さくても社員が300人を超えるSES企業は、発注側として対象になりえます。
注意したいのは、「超」と「以下」の境目です。資本金がちょうど1,000万円の会社は「1,000万円超」に当たりません。そのため、資本金②では発注側になりません。
基準の細かい読み方は、下請法の対象かどうか判定|資本金と従業員数の基準をSES向けにで解説しています。
SESの2次請け・3次請けで自社はどの立場?商流図で判定
SES企業の立場は、会社ごとではなく取引ごとに決まります。同じ案件の中で、上の会社との取引では守られる側、BPとの取引では守る側になることがあります。
商流とは、SESの仕事がエンド(発注元)から、いくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。次の架空の商流で、取引ごとに判定してみます。
エンド(自社で使うシステムを発注) ↓ 元請けSIer(資本金5億円・社員2,000人) ↓ 1次請けSES(資本金5,000万円・社員120人) ↓ 自社=2次請けSES(資本金1,000万円・社員30人) ↓ 3次請けBP(資本金300万円・社員5人)
| 取引 | 当てはまる基準 | 判定 | 自社の立場 |
|---|---|---|---|
| 元請け → 1次請け | 資本金①(5億円→5,000万円) | 対象 | ―(自社は関係なし) |
| 1次請け → 自社 | 資本金②(5,000万円→1,000万円) | 対象 | 中小受託事業者(守られる側) |
| 自社 → 3次請けBP | どれにも当たらない | 対象外 | ―(契約書と民法で守る) |
| エンド → 元請け | 自社で使うシステムの外注 | 対象外のことが多い | ― |
この例で、自社と3次請けBPの取引が対象外になる理由は2つです。自社の資本金は「1,000万円ちょうど」で「超」ではありません。社員も30人で、300人を超えていません。
自社の資本金が2,000万円だったら
同じ商流で、自社の資本金だけが2,000万円だったとします。この場合、自社から3次請けBPへの取引は資本金②に当たり、対象になります。自社は委託事業者(守る側)です。
つまり、自社は1つの案件の中で、上とは守られる側、下とは守る側の両方になります。「うちは下請けだから関係ない」と考えると、BPへの発注で知らないうちに違反することがあります。
個人のエンジニアへ出す場合
個人のエンジニア(フリーランス)へ仕事を出す場合、受注側は「個人を含む」ので、取適法の対象になりえます。さらに、フリーランス法の義務もかかります。両方の違いは取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で確認できます。
商流の段数と単価の関係は、SESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法で解説しています。
立場ごとに営業がやること
自社が委託事業者なら義務を守り、中小受託事業者なら権利を知って交渉に使います。立場がわかれば、営業の動き方が決まります。
| 自社の立場 | 営業がやること | 注意点 |
|---|---|---|
| 委託事業者(BPへ出す) | 注文書を稼働前に送る/60日以内に払う | 減額・手形払・一方的な単価決定は禁止 |
| 中小受託事業者(上から受ける) | 単価協議を求める/記録を残す | 不当な減額や手形は断れる |
| 対象外 | 契約書で条件を決める | 法律の保護がないぶん、条項が大事 |
委託事業者になったときの義務4つ
委託事業者には、次の4つの義務があります。
発注内容の明示:仕事の内容・金額・支払期日などを、すぐにメールや書面で伝える
支払期日:受け取った日から60日以内のできるだけ早い日に払う
遅延利息:遅れたら年14.6%の利息を払う(不当な減額をしたときも同じ)
取引記録の保存:記録を作り、2年間保存する
禁止行為の一覧とSESの場面ごとの判定は、下請法の禁止事項11個|SESの減額・買いたたき・発注取消の例で紹介しています。
中小受託事業者のときに使える言い方(例文)
元請けや1次請けから単価の据え置きを求められたときは、協議を文書で求めます。取適法では、協議に応じない一方的な代金の決定が禁止されました。
件名:2027年1月以降の単価のご相談(〇〇案件)
株式会社〇〇 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社〇〇の〇〇です。
〇〇案件の2027年1月以降の単価について、ご相談させてください。
担当エンジニアの人件費が上がっているため、月額〇〇万円への見直しをお願いできればと存じます。
10月16日(金)までに、30分ほど打ち合わせのお時間をいただけますでしょうか。
送ったメールと打ち合わせの記録(日付・相手・理由・結論)は、必ず残しておきます。協議を断られたときの対処は、取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法で解説しています。
自社の立場を判定する手順
自社の立場は、取引先ごとに5つの手順で判定できます。一度作れば、新しいBPを追加するたびに1行足すだけです。
取引先台帳を開く:エンド・元請け・BP・個人をすべて一覧にする
資本金と従業員数を記入する:相手と自社の両方を記入する。BPにはメールで聞き、返事を保存する
取引の種類を確認する:開発・運用など、情報成果物作成委託か役務提供委託に当たるかを見る
基準に当てはめる:資本金①・資本金②・従業員のどれかに当たるかを判定する
立場を欄に書く:「委託事業者」「中小受託事業者」「対象外」のどれかを書き、年1回見直す
判定前のチェックリスト
自社の資本金と、常時使用する従業員数を最新にした
BPの資本金と従業員数を、メールなど記録が残る形で確認した
資本金が「ちょうど1,000万円」「ちょうど3億円」の会社に注意した
個人のエンジニアとの取引は、フリーランス法も確認した
注文書のひな形の呼び方を、新しい言葉にそろえた
迷ったときは、公正取引委員会の「取適法簡易診断」も使えます。
BPに規模を聞くときは、次の一文を取引開始の案内メールに入れておくと、返事がそのまま記録になります。
取適法(2026年1月施行)に沿って発注するため、御社の資本金と、常時使用する従業員数(おおよそで構いません)をお知らせください。いただいた情報は発注条件の確認にのみ使います。
チョータツで案件の条件と取引先情報を管理する
取引先台帳を自分で作るなら、Excelやスプレッドシートで十分始められます。ただ、案件が増えると、どの案件がどのBPとの取引かを追うのが大変になります。
チョータツとは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールのことです。取適法の判定をするツールではありませんが、次のことで確認作業を楽にできます。
案件・人材の情報を管理・共有できる:案件ごとの条件をまとめておき、提案や発注の前に確認できる
チームで同じ情報を見られる:担当者が変わっても、取引の条件を引き継ぎやすい
パートナーへのメール配信機能がある:BPへの案件共有をまとめて送れる
AIが入力を手伝う:案件情報の入力の手間を減らせる
3,000社以上が利用していて、無料で始められます。
よくある質問
- Q. 下請事業者とは、簡単に言うと何ですか?
- 下請法で守られる、仕事を受ける側の事業者のことです。2026年1月からは「中小受託事業者」と呼びます。
- Q. 親事業者と下請事業者の違いは何ですか?
- 親事業者は仕事を出す側で、義務と禁止行為を守ります。下請事業者は受ける側で、法律で守られます。今の呼び方は委託事業者と中小受託事業者です。
- Q. 下請け業者なら、必ず下請法で守られますか?
- いいえ。取引の種類と、資本金・従業員数の差が基準に当てはまったときだけ守られます。普段の「下請け」と法律上の立場は別物です。
- Q. 「下請事業者」という言葉は、もう使えませんか?
- 法律上は「中小受託事業者」に変わりました。会話で使っても問題はありませんが、契約書やひな形は新しい呼び方にそろえるのがおすすめです。
- Q. SESの2次請けは、親事業者と下請事業者のどちらですか?
- 取引ごとに変わります。上の会社との取引では下請事業者(中小受託事業者)、BPとの取引では親事業者(委託事業者)になることがあります。
- Q. 資本金1,000万円のSES企業がBPに出すと、対象になりますか?
- 資本金の基準では対象になりません。「1,000万円超」に当たらないためです。ただし、自社の社員が300人を超え、BPの社員が300人以下なら、従業員基準で対象になりえます。
まとめ
下請事業者は、下請法で守られる受注側のこと。親事業者は義務を負う発注側のこと
2026年1月1日の取適法で、呼び方が委託事業者・中小受託事業者に変わった
普段の「下請け」と法律上の立場は別物。取引の種類と規模の差で決まる
SES企業の立場は取引ごとに決まる。上とは守られる側、BPとは守る側になりうる
取引先台帳に資本金・従業員数を入れ、立場の欄を作って年1回見直す
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(施行日、用語の変更:親事業者→委託事業者、下請事業者→中小受託事業者、下請代金→製造委託等代金)
e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」(第2条 定義、第3条 支払期日、第4条 明示、第6条 遅延利息、第7条 書類の保存)
公正取引委員会「取適法 よくある質問(Q&A)」(取適法の対象や用語に関する質問と回答)
公正取引委員会「取適法簡易診断」
公正取引委員会「取適法の概要について」(国土交通省サイト掲載資料。用語の見直しの理由、従業員300人・100人の区分、手形払の禁止、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、遅延利息14.6%、書類の保存2年)
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」