SESの並行営業のルール|5つの決まり事とBP・エンジニアへの伝え方の例文

公開日:2026年10月1日更新日:2026年10月1日

SESの並行営業とは?なぜルールが必要なのか

SESの並行営業とは、1人のエンジニアを、同じ時期に複数の案件へ提案することです。「並行提案」とも呼ばれます。1件ずつ結果を待つと、決まるまでに時間がかかるため、多くの会社が並行で進めています。

要員提案とは、案件にエンジニアを候補として紹介することです。BP(ビジネスパートナー)とは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。並行営業では、この要員提案を複数のBPや案件に同時に行います。

並行営業にはルールが必要です。理由は、関わる人が多いからです。1人のエンジニアに対して、自社の営業、所属元のBP、提案先のBP、その先のお客さんがいます。誰か1人でも状況を知らないと、次のようなトラブルが起きます。

トラブル起きること原因
内定後の辞退お客さんが準備した枠がむだになる並行していることを伝えていない
重複提案同じエンドに同じ人が2回届く提案先の記録がない
結果の待たせすぎ他の候補を止めさせてしまう辞退連絡の期限がない
信用の低下次から案件情報をもらえなくなる上の3つのくり返し

内定とは、面談のあと、お客さんから「この人にお願いしたい」と返事をもらった状態のことです。SESでは「決定」「通過」とも言います。内定後の辞退は、提案先のBPにとって一番困る出来事です。

並行営業のメリットとデメリット

並行営業の一番のメリットは、エンジニアの待機を短くできることです。一方で、管理が甘いと相手の信用を失うデメリットがあります。両方を知ったうえで、ルールを決めます。

待機とは、エンジニアが案件に入っておらず、売上が立っていない期間のことです。1件ずつ提案すると、1件の結果に1週間かかる場合、3件目で決まるまでに3週間かかります。並行で3件出せば、同じ1週間で3件分の結果がわかります。

項目メリットデメリット
自社待機が短くなり、売上が早く立つ管理の手間が増える
エンジニア案件を比べて選べる面談が重なり、準備が大変になる
提案先のBP候補が早く集まる内定後の辞退のおそれがある
お客さん早く面談できる決めた人が来ないおそれがある

表のデメリットは、ほとんどが「伝えていない」「記録がない」ことから起きます。並行をやめる必要はありません。ルールを決め、相手に伝え、記録を残せば防げます。

トラブルを防ぐ並行営業のルール5つ

並行営業で決めておくルールは、上限・申告・優先順位・辞退連絡・重複防止の5つです。社内で決め、BPとの間でも同じ考え方で話せるようにしておきます。

ルール1:並行の上限を決める

並行の上限とは、1人のエンジニアを同時に何件まで提案するかという決まりです。上限がないと、面談が重なって準備が追いつかず、どの面談でも力を出せません。

目安は、提案先の返事の早さと、本人の予定で決めます。公的な基準はないので、社内で数字を決めることが大切です。たとえば次のように段階で分けると、運用しやすくなります。

段階上限の例考え方
提案(書類)中5件まで書類で落ちる件もあるため多めにする
面談確定3件まで準備と日程が回る数にする
内定・回答待ち1件(ほかは保留)内定が出たら他の進め方を決める

数字は一例です。自社の書類通過率が低いなら提案数を増やし、面談の準備に時間がかかるなら面談数を減らします。

ルール2:並行していることを提案時に申告する

申告のタイミングは、提案メールを送るときが基本です。「並行あり」と最初に書いておけば、後で辞退しても「聞いていない」とはなりません。

申告するのは、次の3点です。提案先の社名や案件名は書きません。ほかの取引先の情報を渡すことになるからです。

  1. 並行の有無(「並行あり」「並行なし」)

  2. 進み具合(「面談予定1件」「回答待ち1件」など)

  3. 回答できる期限の目安(「内定から1営業日以内に回答」など)

さらに、状況が進んだらその都度、同じ内容を更新して伝えます。とくに「他で面談が確定した」「他で内定が出た」ときは、その日のうちに伝えます。

ルール3:優先順位の決め方をそろえる

優先順位とは、複数の案件で内定が出たときに、どれを選ぶかの決め方です。先に決めておかないと、内定が重なったときに営業の都合で決めてしまい、本人の不満につながります。

おすすめは、次の順で決める方法です。

  1. 本人の希望:技術・勤務地・リモートの可否など、面談前に聞いた希望に合う案件

  2. 条件:単価・開始日・期間が、提案時の条件どおりか

  3. 結果の順番:条件が同じなら、先に内定が出た案件

提案前に、本人と「内定が2つ出たらどちらを選ぶか」を話しておくと、当日に迷いません。また、本人が決める前に、営業が勝手に内定を受けないことも決めておきます。内定が重なったときの比べ方は、SESで複数の案件に同時合格したら|選ぶ基準と断り方の例文で解説しています。

ルール4:辞退連絡の期限を決める

辞退連絡の期限とは、他で決まったときに、残りの提案先へいつまでに断りを入れるかという決まりです。おすすめは「他で決まった当日中」です。

連絡が遅れると、提案先は面談の日程を押さえたまま待つことになります。お客さんが他の候補を断ってしまうこともあります。辞退の連絡は次の順で行います。

  1. 決まった案件の受諾を、本人と確認する

  2. 面談確定・内定の提案先に、電話かメールで先に連絡する

  3. 書類選考中の提案先に、メールでまとめて連絡する

  4. 提案履歴に「辞退済み」と日付を記録する

内定をもらった後に断る場合は、とくに早く、ていねいに伝えます。断りの文面は、SES面談の断り方|辞退・お見送りのメール例文8つと返し方も参考になります。参画決定後の辞退は、SESの参画決定後の辞退対応|24時間の動きと代替要員の例文の手順で動きます。

ルール5:重複提案を防ぐ

重複提案とは、同じエンジニアが、同じ案件やお客さんに、2つ以上のルートから提案されることです。たとえば自社から出した人を、所属元のBPも別の会社経由で同じ案件に出しているような場合です。

重複提案が起きると、お客さんは「どこと契約すればいいのか」がわからなくなります。候補から外されることもあります。防ぐために、次の3つを決めます。

  1. 提案前に本人に聞く:「この案件(またはこのお客さん)に、他から提案されていませんか?」

  2. 所属元のBPに確認する:BPの人材を出すときは、提案の許可と、他ルートでの提案の有無を確認する

  3. 提案履歴を見る:自社の中で、別の営業が同じ案件に同じ人を出していないか確認する

商流とは、案件がエンド(発注元)から、いくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。商流が長いと、同じ案件がいくつものBPから届きます。案件名や作業内容が同じなら、同じ案件と考えて確認します。重複が起きたときの判断と謝罪の例文は、SESの二重提案が発覚したら|どちらを残すかの判断と謝罪例文にまとめています。

並行営業を相手に伝える例文

並行営業の伝え方のコツは、事実だけを短く書き、回答の期限をセットで伝えることです。ここでは、場面ごとの例文を4つ紹介します。日付は2026年の暦に合わせています。

例文1:提案メールで並行を申告する

件名:【要員ご提案】Javaエンジニア(経験7年)

株式会社〇〇 田中様

いつもお世話になっております。株式会社△△の佐藤です。
10/5(月)にご紹介いただいた案件へ、下記の要員をご提案します。

■氏名:Y.K
■スキル:Java、Spring Boot、AWS
■稼働開始:11月1日から可能
■並行状況:並行あり(面談予定1件)
■回答期限:内定をいただいた場合、1営業日以内にお返事します

状況が変わりましたら、当日中にご連絡します。
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

例文2:他で面談が確定したことを伝える

件名:【状況共有】Y.Kの並行状況が変わりました

田中様

お世話になっております。株式会社△△の佐藤です。
10/6(火)にご提案したY.Kについて、状況をお知らせします。

本日、別件で10/8(木)の面談が確定しました。
貴社の案件は引き続き第一希望として進めたいと本人から聞いております。
面談日程のご調整をいただける場合は、10/9(金)以降でも対応可能です。

よろしくお願いいたします。

例文3:他で決まったため辞退する

件名:【辞退のご連絡】Y.Kの件

田中様

お世話になっております。株式会社△△の佐藤です。
10/6(火)にご提案したY.Kにつきまして、ご連絡いたします。

本日10/13(火)、別の案件で参画が決まりました。
大変申し訳ございませんが、貴社の案件は辞退させてください。
ご検討のお時間をいただき、ありがとうございました。

近いスキルの要員が出ましたら、あらためてご提案します。
今後ともよろしくお願いいたします。

例文4:BPの人材を並行で提案する前に確認する

件名:【確認】Y.Kさんの提案について

株式会社□□ 鈴木様

お世話になっております。株式会社△△の佐藤です。
貴社のY.Kさんを、下記の案件にご提案したいと考えております。

■案件:〇〇システムの追加開発(Java)
■場所:東京都港区(週2日出社)
■開始:11月1日

提案してよいか、ご確認をお願いします。
また、同じ案件に他のルートでご提案済みでないかも教えてください。
現在の並行状況(面談予定など)もあわせて伺えると助かります。

提案メールの書き方そのものは、要員提案メールの例文とテンプレ|SES営業の通過率を上げる書き方で詳しく解説しています。

エンジニア本人と決めておくこと

並行営業のルールは、エンジニア本人と共有していないと守れません。本人が他社経由で動いていたり、希望が変わっていたりすると、営業がいくら管理しても重複や辞退が起きます。

提案を始める前に、本人と次の5点を確認します。

  1. 並行の件数:自社から何件まで提案するか

  2. 他社経由の動き:他の会社からも案件を紹介されているか、どの案件か

  3. 優先順位:技術・勤務地・単価のうち、何を一番大事にするか

  4. 回答の期限:内定が出たら、何時間以内に返事をするか

  5. 連絡の方法:面談の予定や結果を、どの手段で共有するか

2は言いにくいことなので、「重複提案を防ぐため」と目的を伝えてから聞くと答えてもらいやすくなります。スキルシートを他社に出すときは、本人の同意も必要です。

スキルシートとは、エンジニアの経歴やスキルをまとめた書類のことです。個人情報保護法第27条では、原則として本人の同意なしに個人データを第三者に渡してはいけないとされています。同意の取り方は、スキルシートの個人情報と第三者提供の同意|SES提案で守る手順と文例で解説しています。

重複提案を防ぐ提案履歴の管理方法

重複提案と連絡漏れは、提案ごとに1行の記録を残すだけで大きく減らせます。記録がないと、「誰がどこに出したか」を営業の記憶に頼ることになります。

提案履歴に残す項目

提案履歴には、最低でも次の項目を残します。Excelやスプレッドシートでも始められます。

項目記入例使う場面
提案日・担当2026/10/6・佐藤誰がいつ出したかを確認する
人材・所属Y.K・自社同じ人の並行件数を数える
提案先・案件・エンド㈱〇〇・Java追加開発・A社重複提案を見つける
状況・期限面談10/8・回答1営業日辞退連絡の漏れを防ぐ

状況は「提案中」「面談確定」「内定」「決定」「辞退」「見送り」の6つに絞ると、集計しやすくなります。

運用のルール

  1. 提案したら、その日のうちに1行追加する

  2. 状況が変わったら、同じ行を更新する(新しい行を作らない)

  3. 新しく提案する前に、人材名とエンド名で検索する

  4. 週に1回、並行中の人材を一覧で見直し、止まっている提案に連絡する

エンド名がわからない案件は、作業内容と場所で近いものがないかを見ます。

並行営業でやってはいけないこと

並行営業で信用を落とす行為は、「隠す」「決めつける」「放置する」の3種類に分けられます。次の6つは、社内ルールで禁止しておくことをおすすめします。

  • 並行を隠して「並行なし」と書く:辞退したときに、うそが明らかになる

  • 本人に確認せずに提案する:本人が知らない案件の面談依頼が来てしまう

  • BPの許可なく、BPの人材を別のBPへ出す:所属元との信頼関係を壊す

  • 内定を本人に確認せずに受ける:本人が断ると、二重に迷惑をかける

  • 辞退の連絡を先送りする:お客さんが他の候補を断ってしまうことがある

  • 面談で他社の案件の話をさせる:提案先に他社の情報が伝わってしまう

とくに内定後の辞退は、提案先のBPが次に案件をくれなくなる原因になります。

また、SESでは発注側がエンジニアを選ぶ行為が偽装請負とみなされるおそれがあります。根拠は厚生労働省の37号告示と疑義応答集(第3集)です。面談は「顔合わせ・スキル確認」として行うのが基本です。進め方の注意は、SESの事前面談は違法?営業が守りたい適法な進め方7つとNG例をご覧ください。

チョータツで案件・人材の情報をチームで共有する

並行営業の管理は、Excelの提案履歴でも始められます。ただし営業が複数人になると、ファイルの更新漏れや、別々のファイルでの管理が起きやすくなります。そこで、案件と人材の情報を1か所で管理する方法があります。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。並行営業では、次の場面で手間を減らせます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
人材の情報をそろえる営業ごとのExcelで管理人材情報を1か所で管理し、社内で共有
案件の情報を確認するメールを探して読み直す登録した案件情報で確認
候補を増やすBPに1社ずつ問い合わせる連携した他社の営業中人材から探す
BPへ知らせる1社ずつメールを書くメール配信機能で送る

チョータツは他社と連携すると、相手の営業中案件・営業中人材をデータベースとして見られます。並行の上限を守りながら候補を増やせるので、1人を無理に多くの案件へ出す必要が減ります。AIが入力を手伝うので、登録の手間も小さくできます。

使い始める流れ

  1. チョータツに無料で登録する

  2. 自社の人材と、手元の案件を登録する

  3. 営業チームで、人材と案件の情報を共有する

  4. 取引のあるBPと連携し、お互いの営業中の案件・人材を見られるようにする

  5. 提案の前に、同じ人材・同じ案件の情報を確認してから出す

よくある質問

Q. SESで並行営業をするのはマナー違反ですか?
マナー違反ではありません。多くの会社が並行で提案しています。問題になるのは、並行していることを伝えないことと、辞退の連絡が遅いことです。
Q. 並行していることは、いつ伝えればいいですか?
提案メールを送るときに「並行あり・面談予定○件」と書くのが基本です。面談確定や内定など状況が変わったら、その日のうちに伝えます。
Q. 並行の件数は何件までが一般的ですか?
公的な基準はありません。書類の段階は多め、面談確定は準備が回る数、内定が出たら1件に絞るなど、段階ごとに社内で数字を決めるのがおすすめです。
Q. 面談後に他で決まったとき、どう辞退すればいいですか?
決まった当日中に、面談確定・内定の提案先から先に連絡します。お詫びとお礼を短く伝え、次に近い人材が出たら提案すると添えます。
Q. 重複提案をしてしまったら、どうすればいいですか?
気づいた時点で提案先に連絡し、どのルートで進めるかを所属元のBPと決めます。提案を取り下げる側は、理由を正直に伝えてお詫びします。
Q. BPから「並行なしでお願いします」と言われたら?
本人と相談し、並行をやめられるかを確認します。やめられない場合は、そのまま正直に伝え、回答期限を短く約束するなどの代わりの条件を相談します。

まとめ

  • 並行営業はふつうの営業方法。揉める原因は、並行を伝えないことと記録がないこと

  • 決めるルールは5つ。上限・申告のタイミング・優先順位・辞退連絡の期限・重複防止

  • 提案時に「並行あり・面談予定○件・回答期限」を書き、状況が変わったら当日中に連絡する

  • 優先順位は、本人の希望→条件→結果の順番。営業が勝手に内定を受けない

  • 重複提案は、提案前の本人・BPへの確認と、提案履歴の検索で防ぐ

  • 営業が増えたら、チョータツで案件・人材を1か所で管理し、チームで共有する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年10月1日|更新日:2026年10月1日

参考資料(2026年9月30日確認)

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