派遣業で違法になる行為と罰則一覧|無許可派遣・禁止業務とSES営業の注意点

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

派遣業の「違法」とは?まず押さえる3つの前提

派遣業の違法とは、労働者派遣法や職業安定法のルールを破って人を働かせることです。SES営業にとって大事なのは、契約書の名前ではなく働き方の中身で判断される点です。

労働者派遣事業とは、自社で雇っている人を、他社の指示のもとで働かせる事業のことです。この事業には、厚生労働大臣の許可が必要です(労働者派遣法5条)。

押さえておきたい前提は3つです。

  1. 派遣元(人を送り出す会社)と派遣先(人を受け入れて指示を出す会社)の両方にルールがある

  2. 契約書が「準委任」や「業務委託」でも、客先が直接指示していれば派遣と判断される

  3. 刑事罰は、違反した担当者だけでなく会社にも罰金が科される(両罰規定、労働者派遣法62条)

両罰規定とは、社員が仕事で違反したとき、その社員と会社の両方を罰するルールのことです。営業担当の判断ミスが、会社全体の問題になるということです。

SES契約と派遣契約の違いは、SESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目で詳しく解説しています。

派遣業で違法になる行為と罰則の一覧

派遣業の主な違反と罰則は、次の表のとおりです。2025年6月1日から、刑法の改正で「懲役」は「拘禁刑」に変わりました。

違法になる行為根拠の条文罰則・処分誰が問われるか
許可なしで派遣事業をする派遣法5条・59条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金派遣元(会社も罰金)
禁止業務に派遣する派遣法4条1項・59条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金派遣元(会社も罰金)
無許可の会社から派遣を受ける派遣法24条の2・49条の2勧告、従わなければ企業名の公表派遣先(客先)
二重派遣(労働者供給)職業安定法44条・64条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金供給した会社と受け入れた会社
マージン率などを公開しない派遣法23条5項指導・改善命令、許可の取消しや事業停止派遣元
改善命令に従わない派遣法49条・60条6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金派遣元
日雇い派遣(原則禁止)派遣法35条の4指導・改善命令、許可の取消しなど派遣元
離職後1年以内の元社員を受け入れる派遣法40条の9勧告、従わなければ企業名の公表派遣先(客先)

許可の取消しは、罰金より重い結果になることがあります。許可を取り消されると派遣事業そのものができなくなるからです(労働者派遣法14条)。

無許可の「実質派遣」がSESで起きるパターン

SESで一番起きやすい違法は、準委任契約なのに客先がエンジニアへ直接指示を出す状態です。この状態は偽装請負と呼ばれ、派遣の許可がない会社なら無許可派遣と判断されるおそれがあります。

偽装請負とは、契約書は請負や準委任なのに、実態は派遣と同じ働かせ方になっていることです。

営業が現場でよく聞くパターンは次のとおりです。違反の5つの型の全体像は、業務委託で法律違反になるケースは?SES営業が避けたい5つの型で整理しています。

  1. 客先の社員が、エンジニアに作業の順番や方法を直接指示している

  2. 客先がエンジニアの出退勤や残業を直接管理している

  3. 自社の責任者がいないまま、エンジニアが1人で客先に常駐している

  4. 面談で客先がエンジニア個人を選び、実質的に採用のように決めている

派遣の許可を持っていないSES会社で1〜3が続くと、無許可で派遣事業をしていると判断される可能性があります。その場合、罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

罰則の詳細は、偽装請負の罰則はどちらに?発注者・SES企業・個人別に整理にまとめています。

派遣の禁止業務とは?ITでも注意する場面

禁止業務とは、派遣の許可を持っていても派遣してはいけない業務のことです。労働者派遣法4条1項と政令で、次の業務が決められています。

禁止業務内容の例SES営業が注意する場面
港湾運送業務港での荷物の積み下ろしIT案件ではまず出ない
建設業務建物などの建設・改造・修理・解体と、その準備の作業通信工事や設備工事の現場作業
警備業務警備業法で定める警備施設の警備を含む常駐業務
医療関係の一部業務医師・看護師・薬剤師などの病院等での業務(例外あり)病院の業務を含む案件

ITの開発やインフラ運用は、禁止業務には入っていません。ただし、ネットワークの配線や設備の設置など、建設業務にあたる作業が混ざる案件には注意が必要です。

禁止業務に派遣すると、派遣元は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。受け入れた客先も、労働契約申込みみなし制度の対象になります。

派遣のマージン率は違法?高さではなく「公開しないこと」が違反

派遣のマージン率は、率が高いこと自体を禁止する法律はありません。違法になるのは、派遣会社がマージン率を公開しないことです(労働者派遣法23条5項)。

マージン率とは、派遣料金のうち、派遣会社の取り分が何%かを表す割合のことです。計算式は次のとおりです(労働者派遣法施行規則18条の2)。

マージン率=(派遣料金の平均額-派遣労働者の賃金の平均額)÷ 派遣料金の平均額

たとえば、1人1日あたりの派遣料金の平均が30,000円、賃金の平均が21,000円なら、マージン率は30%です。

派遣会社は、事業所ごとに次の情報をインターネットなどで公開する必要があります。

  • 派遣労働者の数

  • 派遣先の数

  • マージン率

  • 派遣料金の平均額と賃金の平均額

  • 教育訓練の内容

  • 労使協定を結んでいるかどうか

公開しないことに、いきなり罰金が科されるわけではありません。まず指導や改善命令の対象になり、改善命令に従わないと6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。悪質な場合は許可の取消しもありえます。

SESの準委任契約には、この公開義務はありません。SES会社がマージンを客先やBPに開示するかは、会社の方針や契約で決まります。取引先の派遣会社のマージン率は、派遣会社のマージン率の調べ方|取引先を厚労省サイトで確認する7手順の手順で確認できます。

二重派遣はなぜ違法?SESの多重商流で起きやすい

二重派遣は、職業安定法44条が禁止する「労働者供給」にあたるため違法です。派遣先で受け入れた人を、さらに別の会社へ送って指示を受けさせる形です。

二重派遣とは、派遣されてきた人を、受け入れた会社がさらに別の会社へ派遣することです。

SESでは、商流が深い案件で起きやすくなります。たとえば、BPから準委任で受けたエンジニアを、自社がエンドの現場に出し、エンドの社員が直接指示する形です。この場合、実態が派遣なら二重派遣と判断されるおそれがあります。

罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。労働者を供給した会社だけでなく、供給を受けて指示した会社も対象になります。詳しくはSESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方をご覧ください。

労働契約申込みみなし制度とは?客先にも影響が出る

違法な派遣があると、客先がエンジニアに直接雇用を申し込んだとみなされることがあります。この仕組みが労働契約申込みみなし制度で、2015年10月1日から始まりました(労働者派遣法40条の6)。

労働契約申込みみなし制度とは、違法な派遣を受け入れた派遣先が、そのエンジニアに雇用を申し込んだと扱う制度のことです。労働条件は、その時点と同じです。エンジニアが承諾すれば、客先との雇用契約が成立します。

対象になる違反は次の5つです。

  1. 禁止業務に従事させた

  2. 無許可の会社から派遣を受けた

  3. 事業所単位の派遣期間の制限(原則3年)を超えた

  4. 個人単位の派遣期間の制限(原則3年)を超えた

  5. 派遣法の適用を免れる目的で、請負や準委任の名目で契約し、実態は派遣として受け入れた(偽装請負)

客先が違反を知らず、知らなかったことに過失もない場合は対象外です。また、客先は違反が終わった日から1年間、この申し込みを取り消せません。

SES営業にとっての影響は大きく、次のことが起こりえます。

  • 客先からの信頼を失い、取引が止まる

  • 自社のエンジニアが客先に直接雇用される可能性がある

  • 客先が労働局の調査を受け、商流全体に確認が入る

違法な取引を避けるための確認チェックリスト8項目

違法派遣を防ぐには、契約前と稼働中の2回、同じ項目を確認することが一番確実です。営業がそのまま使えるチェックリストをまとめました。

#確認すること確認する方法
1派遣契約なら、相手に派遣の許可があるか許可番号を聞き、厚生労働省のサイトで検索
2準委任なら、指示を出すのは自社の責任者か面談時に客先へ体制を確認
3業務内容に建設・警備などの禁止業務がないか案件票の作業内容を読む
4商流の途中で派遣契約が混ざっていないか上位会社との契約形態を書面で確認
5客先がエンジニアの勤怠を直接管理していないか勤怠の報告ルートを確認
6派遣の場合、期間制限(3年)に近づいていないか受け入れ開始日を管理表で確認
7派遣の場合、客先を1年以内に辞めた人ではないか経歴書と本人に確認
8契約書が稼働開始前にそろっているか基本契約・個別契約の締結日を確認

許可番号の調べ方は、労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つで解説しています。契約書がそろう前の稼働については業務委託で契約書なしは有効?注文書前に稼働する時の対策で解説しています。

違反に気づいたときの対応手順

違反の疑いに気づいたら、営業だけで判断せず、すぐ社内で共有することが大切です。

  1. 事実を記録する(誰が、いつ、どんな指示を出したか)

  2. 上司と法務担当に報告する

  3. 客先の窓口に、指示の出し方の見直しを相談する

  4. 必要なら契約形態の変更(派遣契約への切り替えなど)を検討する

  5. 判断に迷う場合は、弁護士や社会保険労務士に相談する

社内への報告は、次のような例文が使えます。

件名:【確認依頼】A社案件の指揮命令について
〇〇部長
A社案件(準委任、〇月〇日開始)について、客先担当者がエンジニアに直接作業指示を出している状況を確認しました。
〇月〇日の定例で、客先担当者が作業の順番を直接決めていました。偽装請負にあたる可能性があるため、対応方針のご相談をさせてください。

チョータツで案件の契約条件を管理しやすくする

確認チェックリストは、案件ごとに契約形態や商流の情報を残しておくことで回しやすくなります。Excelや個人のメールで管理していると、担当が変わったときに確認が抜けがちです。

チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。案件情報をチームで共有しておけば、提案前に契約条件を見直す流れを作りやすくなります。

  • 案件・人材の情報を1か所で管理・共有できる

  • パートナーへのメール配信機能がある

  • AIが入力を手伝う

  • 3,000社以上が利用し、無料で始められる

違法派遣の判断そのものは、ツールでは代わりにできません。ただ、確認に必要な情報を担当者の手元だけに置かないことが、トラブルの予防につながります。

よくある質問

Q. 派遣の許可がないSES会社は違法ですか?
準委任契約で、自社の責任者がエンジニアに指示を出していれば違法ではありません。客先が直接指示している場合は、無許可派遣と判断されるおそれがあります。
Q. 派遣会社のマージン率が高いと違法ですか?
率の高さを制限する法律はないため、高いだけでは違法になりません。違法になるのは、派遣会社がマージン率をインターネットなどで公開しないことです。
Q. 無許可派遣の罰則はどのくらいですか?
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。両罰規定により、会社にも罰金が科されます。
Q. 違法派遣を受けた客先には罰則がありますか?
無許可の会社から派遣を受けた客先は、勧告や企業名の公表の対象です。さらに、労働契約申込みみなし制度で、エンジニアに雇用を申し込んだとみなされる場合があります。
Q. SESで二重派遣になるのはどんなときですか?
自社が受け入れたBPのエンジニアを別の現場に出し、その現場の会社が直接指示する形です。実態が派遣なら、職業安定法44条違反になるおそれがあります。

まとめ

  • 派遣業の違法で一番重いのは、許可なしの派遣と禁止業務への派遣で、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

  • SESでは、客先の直接指示による「実質派遣」が一番の落とし穴です。

  • マージン率は高さではなく、公開しないことが違反です。SESの準委任には公開義務はありません。

  • 違法な派遣は、労働契約申込みみなし制度で客先にも影響します。

  • 契約前と稼働中に、チェックリスト8項目で確認する習慣をつけましょう。

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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