業務委託で法律違反になるケースは?SES営業が避けたい5つの型と確認質問15
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
業務委託とは?SESで法律違反が起きやすい理由
業務委託とは、自社の仕事の一部を、雇用ではなく契約で外の会社や個人に任せることです。法律上の名前ではなく、請負契約と準委任契約をまとめた呼び方です。SES契約の多くは、このうち準委任契約にあたります。
準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決まった業務を行うこと自体を約束する契約のことです。準委任では、エンジニアへの指示は受託した会社(SES企業)が出します。客先は、エンジニアに直接指示を出せません。
SESで違反が起きやすいのは、客先に常駐して働くからです。毎日同じ場所で働くと、客先の社員が直接指示を出しやすくなります。さらに商流が深いと、誰がそのエンジニアを雇っているのかも見えにくくなります。
業務委託の法律違反5つの型|早見表
SES営業が押さえるべき違反の型は、次の5つです。まずは表で全体をつかみ、詳しい中身は型ごとの記事で確認しましょう。
| 型 | どんな状態か | 主な法律 | 主な罰則・処分 |
|---|---|---|---|
| ①偽装請負 | 準委任なのに、客先がエンジニアに直接指示している | 労働者派遣法・職業安定法 | 実態により無許可派遣・労働者供給の罰則。客先は直接雇用のみなし |
| ②無許可派遣 | 派遣の許可がない会社が、派遣の形で人を出している | 労働者派遣法 第5条・第59条 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。会社にも罰金 |
| ③二重派遣 | 自社で雇っていない人を、さらに別の会社へ出して指示させる | 職業安定法 第44条・第64条 | 出した側・受けた側とも1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| ④取適法違反 | BPへの発注で、注文書なし・60日超の支払い・一方的な減額などをする | 取適法(旧下請法) | 勧告・社名の公表。明示義務などの違反は50万円以下の罰金 |
| ⑤フリーランス法違反 | 個人のエンジニアへの発注で、条件を明示しない・支払いが遅いなど | フリーランス法 | 指導・勧告・公表。命令違反は50万円以下の罰金 |
※ 2025年6月1日から「懲役」は「拘禁刑」に変わりました。2026年9月30日時点の法令で整理しています。
①〜③はエンジニアの働かせ方の違反で、主に労働局(厚生労働省)が見ます。④と⑤は発注の仕方の違反で、主に公正取引委員会が見ます。1つの取引で複数の型に同時に当てはまることもあります。
型①偽装請負|客先がエンジニアに直接指示している
偽装請負とは、契約書は請負や準委任なのに、実際は客先がエンジニアに指示を出して働かせている状態のことです。中身が派遣と同じなので、派遣のルールを守っていない違法な状態になります。
SESでよくあるのは、次のような場面です。
客先の社員が、エンジニアに作業の順番や残業を直接指示する
客先がエンジニアの勤怠や休暇の承認をしている
SES企業の責任者が現場にも連絡の中にもおらず、客先とエンジニアだけで仕事が回っている
偽装請負と判断されると、SES企業は無許可派遣(型②)として罰せられることがあります。客先には、エンジニアを直接雇用したとみなされる労働契約申込みみなし制度のリスクがあります。
労働契約申込みみなし制度とは、違法な派遣を受けた会社が雇用を申し込んだとみなす制度のことです。根拠は労働者派遣法第40条の6です。
現場で何がNGかの具体例は、偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策で確認できます。
型②無許可派遣|派遣の許可がないのに派遣の形で出している
無許可派遣とは、厚生労働大臣の許可を受けずに労働者派遣事業を行うことです。労働者派遣法第5条が許可を求め、第59条で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定めています。会社にも罰金が科されます(第62条)。
SES企業が無許可派遣になるパターンは2つあります。
派遣の許可がないのに、「派遣契約でもいいですよ」と客先の求めに応じてしまう
準委任で受けたのに、現場の実態が派遣になっている(型①の偽装請負)
営業として大事なのは、自社とBPの派遣許可の有無を、案件ごとに確かめることです。許可番号は、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で検索できます。
禁止業務や罰則の詳細は、派遣業の違法とは?無許可派遣・禁止業務でSESが問われる罰則で解説しています。
型③二重派遣(多重派遣)|雇っていない人を別の会社に出している
二重派遣とは、派遣で受け入れた人を、さらに別の会社へ出して、その会社の指示で働かせることです。職業安定法第44条が禁止する労働者供給にあたります。罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、出した側も受け入れて指示した側も対象です(第64条)。
労働者供給とは、自社で雇っていない人を、契約にもとづいて他社の指示の下で働かせることです。
気をつけたいのは、多重下請け(商流が深いこと)そのものは違法ではない点です。違法になるのは、「指示を出す会社」と「その人を雇っている会社」がずれたときです。
SES営業がやりがちなのは、他社の派遣社員を、自社の準委任案件として客先に再提案することです。スキルシートだけ見て提案すると、所属と雇用形態を見落とします。
契約の組み方は、SESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方で解説しています。BPが無断で商流を増やしていたときは、SESでBPが無断で商流を増やしていたら|発覚時の対応と再発防止で対応を確認してください。
型④取適法違反|BPへの発注の仕方が違反になっている
取適法とは、発注する会社が、規模の小さい受注側に不利な取引をしないよう定めた法律です。正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といいます。2026年1月1日に、下請法から名前と中身が変わりました。
SES企業がBPに開発や運用を出す取引は、準委任でも対象になりえます。対象かどうかは、資本金と従業員数で決まります。プログラム作成や情報処理の仕事では、次の区分を使います。
| 基準 | 発注する側 | 受ける側(BP) |
|---|---|---|
| 資本金① | 3億円超 | 3億円以下(個人を含む) |
| 資本金② | 1,000万円超〜3億円以下 | 1,000万円以下(個人を含む) |
| 従業員 | 300人超 | 300人以下(個人を含む) |
SESで違反になりやすいのは、次の4つです。
注文書を出さずに稼働を始める(発注内容の明示義務)
稼働月の翌々月末払いなど、受け取りから60日を超える支払い
契約の途中で、協議なしに単価を下げる
振込手数料を代金から差し引く(合意があっても減額として禁止)
発注内容を明示しない、書類を保存しないといった違反は、50万円以下の罰金の対象です。減額や支払遅延には罰金はありません。ただし公正取引委員会の勧告を受け、社名が公表されます。
対象になるかの判定は、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで確認できます。
型⑤フリーランス法違反|個人のエンジニアへの発注で義務を守っていない
フリーランス法とは、従業員のいない個人・一人社長への発注ルールを定めた法律です。2024年11月1日に始まりました。従業員のいるSES企業が、個人事業主のエンジニアに準委任で仕事を出すと対象になります。
義務は7つです。①取引条件の明示、②60日以内の支払い、③禁止行為、④募集情報の的確な表示です。⑤育児・介護への配慮、⑥ハラスメント対策、⑦中途解除の30日前予告も含みます。禁止行為は1か月以上、育児・介護への配慮と中途解除の予告は6か月以上の業務委託にかかります。
違反すると、まず指導や勧告を受けます。勧告に従わないと命令、命令にも違反すると50万円以下の罰金です。公正取引委員会は、勧告の段階で社名と違反内容を公表しています。
注意したいのは、取適法とフリーランス法が同じ取引に両方かかることがある点です。相手が個人事業主のときは、両方の条件を確かめましょう。
両方かかる取引の整理は、取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で表にしています。
あわせて注意:個人エンジニアの「労働者性」
フリーランスとの契約でも、働き方の実態が社員と同じなら「労働者」と判断されることがあります。勤務時間を細かく決めて指示し、断る自由がない場合などです。この場合、フリーランス法ではなく労働基準法などの保護が及びます。
判断の8項目は、業務委託の労働者性の判断基準|偽装フリーランスを防ぐ8項目で確認できます。
案件を受ける前・BPに出す前に聞く確認質問15
違反を防ぐ一番の方法は、契約の前に決まった質問をすることです。型ごとに3つずつ、営業がそのまま使える質問にしました。
| 型 | 誰に聞くか | 確認質問 |
|---|---|---|
| ①偽装請負 | 客先・上位会社 | 作業の指示は誰から誰に出ますか? |
| ①偽装請負 | 客先・上位会社 | 勤怠や残業の承認は、どの会社が行いますか? |
| ①偽装請負 | 自社 | 現場への指示を受ける自社の責任者は誰ですか? |
| ②無許可派遣 | 客先・上位会社 | 契約形態は準委任・請負・派遣のどれですか? |
| ②無許可派遣 | 自社 | 派遣と言われたら、自社に派遣許可はありますか? |
| ②無許可派遣 | BP | 派遣で受ける場合、BPの許可番号は何番ですか? |
| ③二重派遣 | BP | この方は御社の正社員・契約社員・個人のどれですか? |
| ③二重派遣 | BP | 御社が派遣で受け入れている方ではありませんか? |
| ③二重派遣 | BP | さらに下の会社の所属なら、商流を教えてください |
| ④取適法 | 自社 | 自社とBPの資本金・従業員数は区分に当たりますか? |
| ④取適法 | 自社 | 稼働開始前に注文書を出せますか? |
| ④取適法 | 自社 | 支払日は受け取りから60日以内ですか? |
| ⑤フリーランス法 | 本人 | 従業員を雇っていない個人(一人社長)ですか? |
| ⑤フリーランス法 | 自社 | 業務内容・報酬・支払期日を書面やメールで伝えましたか? |
| ⑤フリーランス法 | 自社 | 6か月以上続く場合、解除の30日前予告を守れますか? |
「作業の指示は誰から出るか」は、客先には聞きにくい質問です。「弊社の責任者経由で指示をいただく体制で進めたいのですが、よろしいでしょうか」と、確認の形で伝えると角が立ちません。
違反に気づいたときの対応5ステップ
すでに違反の疑いがある案件を見つけたら、1人で判断せず、事実を記録して社内で共有するのが先です。次の順番で進めましょう。
事実を書き出す:誰が誰に何を指示しているか、契約書と注文書の中身、支払日をメモする
上長と管理部に共有する:営業1人で客先と交渉しない
型を特定する:この記事の早見表で、5つの型のどれに当たるかを見る
是正の案を作る:指示の窓口を自社の責任者に移す、派遣契約に切り替える、注文書を出し直すなど
専門家に相談する:判断に迷うときは、弁護士・社会保険労務士、労働局や公正取引委員会の相談窓口を使う
相談先の選び方は、業務委託契約の相談先は?SES取引トラブルの窓口と選び方で整理しています。
自分で管理する方法と、チョータツで楽にする方法
5つの型を防ぐには、案件ごとに「契約形態・指示の窓口・人材の所属・支払条件」を記録しておくことが基本です。自分で管理するなら、Excelの案件管理表に次の列を足しましょう。
| 列の名前 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 契約形態 | 準委任/請負/派遣 |
| 指示の窓口 | 自社責任者の氏名 |
| 人材の所属・雇用形態 | BP名・正社員/個人事業主 |
| 注文書・支払期日 | 送付日・支払予定日 |
ただ、案件メールは1日に何十通も届きます。メールとExcelを行き来していると、確認の抜けが起きがちです。
もっと楽にするなら、チョータツで案件・人材の情報をまとめて管理・共有する方法があります。チョータツでできることは、次のとおりです。
案件・人材の情報を1か所で管理し、社内で共有できる
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる
AIが入力を手伝うので、登録の手間を減らせる
パートナーへのメール配信機能もある
3,000社以上が利用していて、無料で始められます。提案前に「この案件の契約形態は?」「この人の所属は?」を同じ画面で確かめる土台として使えます。
よくある質問
- Q. 業務委託で法律違反になるのは、どんなケースですか?
- SESでは、偽装請負・無許可派遣・二重派遣・取適法違反・フリーランス法違反の5つが代表的です。前の3つは指示と雇用の問題、後ろの2つは発注の仕方の問題です。
- Q. 業務委託なのに客先から直接指示されるのは違法ですか?
- 準委任や請負で、客先がエンジニアに直接指示を出すのは偽装請負にあたるおそれがあります。指示は、受託したSES企業の責任者を通すのが原則です。
- Q. 多重下請けのSES案件は違法ですか?
- 商流が深いこと自体は違法ではありません。違法になるのは、雇っていない人を別の会社の指示で働かせる二重派遣や、偽装請負の状態になったときです。
- Q. 業務委託の違反で罰せられるのは会社ですか、担当者ですか?
- 無許可派遣や二重派遣などは、行為をした担当者と会社の両方が罰せられる規定があります。営業個人も無関係ではないので、疑いがあれば社内で共有しましょう。
- Q. 個人事業主のエンジニアへの発注で気をつけることは?
- フリーランス法の取引条件の明示と、60日以内の支払いが基本です。取適法の対象になる場合もあるので、両方の条件を確かめましょう。
- Q. 違反かどうか自分で判断できないときは?
- 事実を記録して上長・管理部に共有し、弁護士や社会保険労務士に相談しましょう。労働局や公正取引委員会にも相談窓口があります。
まとめ
SESの業務委託の違反は、偽装請負・無許可派遣・二重派遣・取適法・フリーランス法の5つの型に分けられる
①〜③は「誰が指示し、誰が雇っているか」、④⑤は「発注の仕方」の問題
無許可派遣と二重派遣は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。取適法とフリーランス法は勧告と社名の公表が重い
案件を受ける前・BPに出す前に、確認質問15で型ごとに点検する
違反に気づいたら、記録して社内共有し、専門家に相談する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(5条・40条の6・59条・62条)
e-Gov法令検索「職業安定法」(4条・44条・64条・67条)
e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」
厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」
厚生労働省「労働契約申込みみなし制度の概要」
厚生労働省「人材サービス総合サイト 労働者派遣事業所検索」
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
公正取引委員会「取適法 運用基準」(振込手数料を中小受託事業者に負担させることは、合意があっても代金の減額に当たる)
公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」